貧乏令嬢ですが、前世の知識で成り上がって呪われ王子の呪いを解こうと思います!

放浪人

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第7話:王城での再会と不器用な優しさ

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「失礼いたします! アシュリー商会と申します! 本日は、侍女の皆様にぜひお試しいただきたい品がございまして……!」

数日後。
私はギルさんと共に、王城の裏手にある侍女たちの詰所を訪れていた。
ギルさんがどこからか手に入れたコネ(昔の商売仲間らしい)を使って、なんとか売り込みの許可を取り付けたのだ。

「まあ、アシュリー商会? 聞いたことないわね」
「石鹸ですって? 私たちは御用達のがありますから」

侍女たちの反応は、思ったよりも冷ややかだった。
王城で働くというプライドがあるのだろう。新参者の、それも聞いたこともないような商会の品物など、興味がないという顔だ。

「まあまあ、そうおっしゃらずに。こちらも、ただでお配りしている試供品でございますので」
ギルさんが、愛想の良い笑顔でサンプルを差し出す。

その時だった。
ふと、侍女たちの会話が耳に入った。

「そういえば、アレクシス様の肌荒れ、最近ひどいわよね……」
「ええ。お医者様が薬を処方しても、全く良くならないとか」
「呪いのせいかしら……本当にお可哀想に」

――アレクシス様?

その名前に、私の心臓がドキンと跳ねた。
そうか、彼はこの城に住んでいるのだ。
当たり前のことなのに、すっかり忘れていた。

彼の肌荒れ……。
夜会で見た時、確かに彼の顔の痣だけでなく、その周りの肌も少し赤くなっているように見えた。
もしかしたら、この石鹸が役に立つかもしれない。

そう思った瞬間、私はいてもたってもいられなくなった。

「あの! そのアレクシス様というのは、どちらにいらっしゃるのでしょうか!?」
思わず、大きな声が出てしまった。

侍女たちは、きょとんとした顔で私を見る。
「え? 第二王子殿下のことよ。それが何か……?」
「その方の肌荒れ、もしかしたらこの石鹸で治るかもしれません! どうか、試させていただけませんか!」

私の必死の剣幕に、侍女たちは顔を見合わせ、困惑している。
「な、何を言っているの……? 王子殿下に、こんな得体の知れないものを……」

「リナお嬢、落ち着いてくだせぇ!」
ギルさんが慌てて私を止めようとする。

その時だった。

「……外が騒がしいな。何事だ?」

凛とした、しかしどこか不機嫌そうな声が、廊下の奥から響いた。
その声に、私はハッとして振り返る。

そこに立っていたのは、紛れもない。
漆黒の髪に、赤い瞳を持つ、呪われ王子――アレクシス様、その人だった。

「……お前は、夜会の時の……」
アレクシス様は、私の顔を見て、わずかに目を見開いた。

「あ、アレクシス様……!」

侍女たちが、慌てて膝をつく。
私もギルさんも、それに倣って深く頭を下げた。

「こんなところで何をしている」
冷たい声が、頭上から降ってくる。

どうしよう。
何か言わなければ。

私は、勇気を振り絞って顔を上げた。
そして、手に持っていた一番上等な、カモミールの石鹸を、彼に差し出した。

「これ、を……! どうか、お使いください!」

「……は?」
アレクシス様は、眉をひそめる。

「あなたの肌荒れが、良くなるかもしれません! 刺激の少ない成分で作りましたから……!」

何を言っているんだろう、私は。
王族に対して、あまりにも無礼すぎる。
処罰されても、文句は言えない。

しかし、アレクシス様の反応は、意外なものだった。

彼は何も言わずに、私の手から石鹸を受け取った。
その指先が、ほんの少しだけ私の手に触れて、心臓が大きく跳ねた。

「……くだらん」

彼はそう一言だけ呟くと、私に背を向けて、廊下の奥へと去っていってしまった。

後に残されたのは、呆然とする私とギルさん、そして、唖然とした顔の侍女たちだけ。

「……リナお嬢。あんた、とんでもねぇことしでかしたな……」
ギルさんが、呆れたようにため息をつく。

「でもよ……もしかしたら、これが一番の宣伝になるかもしれねぇぜ?」

その言葉の意味を、私はまだ理解できずにいた。
ただ、アレクシス様が受け取ってくれたという事実だけで、胸がいっぱいだった。
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