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第9話:清浄なる光、砕け散る野望
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「行くぞ、アリア!」
カイ様の号令と共に、私たちは、暴走する魔法陣に向かって駆け出した。
彼の前には、渦巻く瘴気を切り裂くように、巨大な氷の壁が出現し、安全な道を切り拓いていく。
「邪魔はさせん!」
「聖女様のために、死ね!」
残っていた闇魔術師たちが、私たちを止めようと、最後の力を振り絞って攻撃を仕掛けてくる。
しかし、それらはすべて、カイ様が展開する氷の障壁によって、完璧に防がれた。
「カイ様……!」
「喋るな! 集中しろ!」
彼の背中が、とても大きく、頼もしく見えた。
私は、ただ、彼の言葉を信じて、前へ、前へと走る。
魔法陣に近づくにつれて、頭が割れるように痛む。
邪悪な紫黒の魔力が、私の精神を直接、汚染しようと、不気味な囁き声を送ってくる。
『憎いだろう? お前を裏切った者たちが』
『その力で、復讐しろ。世界を、壊してしまえ』
(うるさい……!)
私は歯を食いしばり、その甘い誘惑を、全力で振り払う。
私の瞳は、もう、他の何ものも映してはいなかった。
ただ一点、魔法陣の中心で、心臓のように禍々しく脈動する、力の結節点――***『核』***だけを見据えていた。
あと、もう少し……!
ついに、魔法陣の中心にたどり着いた。
足元で、紫の光が、まるで底なし沼のように渦を巻いている。
「はぁ……っ、はぁ……っ」
立っているだけで、全身の力が吸い取られていくようだ。
でも、やらなければ。
カイが、私を信じて、道を作ってくれたのだから。
私は、母が遺してくれた、たった一つの形見である、首元のペンダントを、強く、強く握りしめた。
そして、ありったけの自分の魔力を、そのペンダントの先端に集中させる。
私の魔力は、量こそ少ない。
けれど、カイ様が言ってくれた。
『質が極めて高い』と。
『磨き上げられた水晶のようだ』と。
水晶のように澄んだ、清浄な私の魔力が、ペンダントに集まり、淡い、けれど、何よりも強い、白銀の光を放ち始める。
「これ以上、森を、カイの領地を、あなたの好きにはさせませんわ……!」
私は叫び、その光り輝くペンダントを、力任せに、魔法陣の核へと突き立てた!
――キィィィィィンッ!!!
甲高い、ガラスが砕け散るような音が、遺跡全体に響き渡る。
ペンダントが突き刺さった場所から、蜘蛛の巣のように、光の亀裂が走った。
そして、次の瞬間。
パァァァァァァンッ!!!
魔法陣が、まばゆい光と共に、完全に弾け飛んだ。
「ぎゃあああああああっ!?」
闇魔術師たちの、断末魔の悲鳴が上がる。
邪悪な紫黒の魔力は、聖なる光によって霧散し、森に、本来の穏やかで優しい、緑の光が、ゆっくりと戻り始める。
汚染されていた森の空気が、浄化されていくのが、肌で分かった。
「……やった……」
安堵したのも束の間、全身から、ぷつり、と糸が切れるように力が抜け、私は、その場に崩れ落ちた。
魔力を、一滴残らず使い果たし、精神も、もう限界だった。
意識が遠のいていく中、私を抱きとめてくれる、力強く、そして温かい腕を感じた。
「アリア! しっかりしろ、アリア!」
心配そうな、カイの声。
彼の、焦ったような声を聞くのは、これが初めてかもしれない。
「……よく、やったな……アリア……。お前のおかげで、森は……俺は、救われた……」
その、心からの感謝の言葉を聞いて、私は、安心して、意識を手放した――。
次に私が目を覚ました時、そこは見慣れた城の自室の、ふかふかのベッドの上だった。
「……ん……」
「お目覚めですか、アリア様」
そばには、心配そうな顔をしたゼバスさんが、控えていた。
「ゼバスさん……私……」
「ご安心ください。無事、城まで戻られました。公爵様が、ずっと、ずっとあなた様を抱きかかえて、運んでくださったのですよ」
「カイは……? それに、闇魔術師たちは……」
私が尋ねると、ゼバスさんは穏やかに微笑んだ。
「魔法陣が破壊されたことで、闇魔術師たちの力も完全に失われました。公爵様と騎士の方々で、全員捕縛いたしました。……そして、彼らの口から、やはり黒幕は、王都にいらっしゃる、リナ様であることが」
「やはり……」
「それだけではございません。リナ様の目的は、ただあなた様を陥れることだけでなく、あなた様の、その特別な『瞳』の力を、何らかの方法で、奪い取ることにある、と」
「私の、力を……?」
その言葉に、私は、ぞくりと背筋が凍るのを感じた。
リナの陰謀は、私が想像していたよりも、遥かに深く、邪悪なものだったのだ。
私が、ただ事ではないと顔を青くしていると、部屋の扉が、勢いよく開かれた。
「アリア!」
駆け込んできたのは、カイだった。
その髪は少し乱れ、いつも完璧に着こなしている服には、まだ戦闘の跡が残っている。
彼はベッドのそばまで来ると、私の顔を覗き込み、安堵の息を深く、深く吐いた。
「……よかった。目が、覚めたか」
「カイ……ご心配を、おかけしました」
「馬鹿者。……どれだけ、心配したと、思っている……」
彼はそう言うと、私の手を、ぎゅっと握りしめた。
その手は、少しだけ、震えていた。
氷のように冷静な彼が、取り乱している。
その事実が、私の胸を、きゅんと締め付けた。
この日、私たちの間には、確かな絆が生まれた。
それは、主と従者という関係を超えた、もっと深く、温かい繋がり。
そして、私たちはまだ知らない。
この事件が、王都を、そして国全体を揺るがす、大きな嵐の、ほんの序章に過ぎないということを。
リナの、本当の恐ろしい計画が、静かに動き始めていることを――。
カイ様の号令と共に、私たちは、暴走する魔法陣に向かって駆け出した。
彼の前には、渦巻く瘴気を切り裂くように、巨大な氷の壁が出現し、安全な道を切り拓いていく。
「邪魔はさせん!」
「聖女様のために、死ね!」
残っていた闇魔術師たちが、私たちを止めようと、最後の力を振り絞って攻撃を仕掛けてくる。
しかし、それらはすべて、カイ様が展開する氷の障壁によって、完璧に防がれた。
「カイ様……!」
「喋るな! 集中しろ!」
彼の背中が、とても大きく、頼もしく見えた。
私は、ただ、彼の言葉を信じて、前へ、前へと走る。
魔法陣に近づくにつれて、頭が割れるように痛む。
邪悪な紫黒の魔力が、私の精神を直接、汚染しようと、不気味な囁き声を送ってくる。
『憎いだろう? お前を裏切った者たちが』
『その力で、復讐しろ。世界を、壊してしまえ』
(うるさい……!)
私は歯を食いしばり、その甘い誘惑を、全力で振り払う。
私の瞳は、もう、他の何ものも映してはいなかった。
ただ一点、魔法陣の中心で、心臓のように禍々しく脈動する、力の結節点――***『核』***だけを見据えていた。
あと、もう少し……!
ついに、魔法陣の中心にたどり着いた。
足元で、紫の光が、まるで底なし沼のように渦を巻いている。
「はぁ……っ、はぁ……っ」
立っているだけで、全身の力が吸い取られていくようだ。
でも、やらなければ。
カイが、私を信じて、道を作ってくれたのだから。
私は、母が遺してくれた、たった一つの形見である、首元のペンダントを、強く、強く握りしめた。
そして、ありったけの自分の魔力を、そのペンダントの先端に集中させる。
私の魔力は、量こそ少ない。
けれど、カイ様が言ってくれた。
『質が極めて高い』と。
『磨き上げられた水晶のようだ』と。
水晶のように澄んだ、清浄な私の魔力が、ペンダントに集まり、淡い、けれど、何よりも強い、白銀の光を放ち始める。
「これ以上、森を、カイの領地を、あなたの好きにはさせませんわ……!」
私は叫び、その光り輝くペンダントを、力任せに、魔法陣の核へと突き立てた!
――キィィィィィンッ!!!
甲高い、ガラスが砕け散るような音が、遺跡全体に響き渡る。
ペンダントが突き刺さった場所から、蜘蛛の巣のように、光の亀裂が走った。
そして、次の瞬間。
パァァァァァァンッ!!!
魔法陣が、まばゆい光と共に、完全に弾け飛んだ。
「ぎゃあああああああっ!?」
闇魔術師たちの、断末魔の悲鳴が上がる。
邪悪な紫黒の魔力は、聖なる光によって霧散し、森に、本来の穏やかで優しい、緑の光が、ゆっくりと戻り始める。
汚染されていた森の空気が、浄化されていくのが、肌で分かった。
「……やった……」
安堵したのも束の間、全身から、ぷつり、と糸が切れるように力が抜け、私は、その場に崩れ落ちた。
魔力を、一滴残らず使い果たし、精神も、もう限界だった。
意識が遠のいていく中、私を抱きとめてくれる、力強く、そして温かい腕を感じた。
「アリア! しっかりしろ、アリア!」
心配そうな、カイの声。
彼の、焦ったような声を聞くのは、これが初めてかもしれない。
「……よく、やったな……アリア……。お前のおかげで、森は……俺は、救われた……」
その、心からの感謝の言葉を聞いて、私は、安心して、意識を手放した――。
次に私が目を覚ました時、そこは見慣れた城の自室の、ふかふかのベッドの上だった。
「……ん……」
「お目覚めですか、アリア様」
そばには、心配そうな顔をしたゼバスさんが、控えていた。
「ゼバスさん……私……」
「ご安心ください。無事、城まで戻られました。公爵様が、ずっと、ずっとあなた様を抱きかかえて、運んでくださったのですよ」
「カイは……? それに、闇魔術師たちは……」
私が尋ねると、ゼバスさんは穏やかに微笑んだ。
「魔法陣が破壊されたことで、闇魔術師たちの力も完全に失われました。公爵様と騎士の方々で、全員捕縛いたしました。……そして、彼らの口から、やはり黒幕は、王都にいらっしゃる、リナ様であることが」
「やはり……」
「それだけではございません。リナ様の目的は、ただあなた様を陥れることだけでなく、あなた様の、その特別な『瞳』の力を、何らかの方法で、奪い取ることにある、と」
「私の、力を……?」
その言葉に、私は、ぞくりと背筋が凍るのを感じた。
リナの陰謀は、私が想像していたよりも、遥かに深く、邪悪なものだったのだ。
私が、ただ事ではないと顔を青くしていると、部屋の扉が、勢いよく開かれた。
「アリア!」
駆け込んできたのは、カイだった。
その髪は少し乱れ、いつも完璧に着こなしている服には、まだ戦闘の跡が残っている。
彼はベッドのそばまで来ると、私の顔を覗き込み、安堵の息を深く、深く吐いた。
「……よかった。目が、覚めたか」
「カイ……ご心配を、おかけしました」
「馬鹿者。……どれだけ、心配したと、思っている……」
彼はそう言うと、私の手を、ぎゅっと握りしめた。
その手は、少しだけ、震えていた。
氷のように冷静な彼が、取り乱している。
その事実が、私の胸を、きゅんと締め付けた。
この日、私たちの間には、確かな絆が生まれた。
それは、主と従者という関係を超えた、もっと深く、温かい繋がり。
そして、私たちはまだ知らない。
この事件が、王都を、そして国全体を揺るがす、大きな嵐の、ほんの序章に過ぎないということを。
リナの、本当の恐ろしい計画が、静かに動き始めていることを――。
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