追放された悪役令嬢は、氷の辺境伯に何故か過保護に娶られました ~今更ですが、この温もりは手放せません!?~

放浪人

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第三幕:過去の影、新たな運命の鍛造

第17話:仕掛けられた罠とカシアンの決意

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アラリック王子とイゾルデがグレイロック城に滞在して数日が過ぎた。その間、彼らは執拗に私やカシアン様の周辺を探り、何か弱みを見つけ出そうとしているようだった。イゾルデは特に、城の侍女たちに近づき、私の悪評を流したり、カシアン様との仲を裂こうとするような噂を広めたりしていた。

「奥様、お気をつけください。イゾルデ様は、奥様を陥れるために、様々な罠を仕掛けているようですわ」

侍女頭のエルザが、心配そうに私に忠告してくれた。彼女も、イゾルデの悪意に気づいているのだろう。

「ありがとう、エルザ。私も十分に気をつけるわ」

しかし、イゾルデの策略は、私の想像以上に巧妙だった。ある日、城の重要な書類が保管されている書庫から、機密文書が盗まれるという事件が起きたのだ。そして、その犯人として、私が疑われることになった。私の部屋から、その文書の一部が見つかったというのだ。

「セラフィナ! 貴様、やはり反省していなかったのだな! カシアン卿を裏切り、王国の機密を盗み出そうとは、何という卑劣な行為だ!」

アラリック王子は、鬼の首でも取ったかのように私を罵倒した。イゾルデは、その隣で悲しそうな顔を作り、私を憐れむような視線を向けている。

「お待ちください、アラリック殿下! 私は何もしておりません! これは罠ですわ!」

私は必死に無実を訴えたが、状況は圧倒的に不利だった。私の部屋から証拠が見つかった以上、言い逃れは難しい。

「ふん、言い訳は見苦しいぞ、セラフィナ。カシアン卿、このような裏切り者を、どう処分なさるおつもりかな?」

アラリック王子は、勝ち誇ったようにカシアン様に問いかけた。カシアン様は、厳しい表情で私を見つめている。その瞳の奥の感情は読み取れない。

(まさか、カシアン様まで私を疑うの……?)

絶望的な気持ちが、私の胸を締め付ける。もし彼にまで見捨てられたら、私はもう……。

しかし、カシアン様は、ゆっくりと口を開いた。

「……セラフィナがそのようなことをするはずがない。これは、何者かが彼女を陥れるために仕組んだ罠だ」

彼の言葉は、力強く、そして揺るぎなかった。その場にいた誰もが、息を飲んだ。

「なっ……カシアン卿、本気でそう仰せか!? 証拠は挙がっているのだぞ!」

アラリック王子は狼狽したように叫んだ。

「証拠など、いくらでも捏造できる。俺は、セラフィナを信じる」

カシアン様は、私の方を向き、穏やかな、しかし確固たる意志を込めた眼差しで言った。その瞬間、私の目から涙が溢れ出た。彼は、私を信じてくれたのだ。

「カシアン様……!」

「セラフィナ、お前は何も心配することはない。俺が、必ず真犯人を見つけ出し、お前の無実を証明してみせる」

彼の言葉は、何よりも心強かった。私は、この人の妻であることを、心の底から誇りに思った。

イゾルデは、悔しそうに唇を噛み締めている。彼女の計画は、カシアン様の揺るぎない信頼の前に、脆くも崩れ去ろうとしていた。

「……よろしいでしょう、カシアン卿。そこまで仰るのなら、我々も静観いたしましょう。しかし、もし真犯人が見つからなければ、その時は……」

アラリック王子は捨て台詞のように言うと、イゾルデと共にその場を立ち去った。

後に残されたのは、私とカシアン様、そして数名の家臣たちだけだった。

「セラフィナ、辛かっただろう。だが、もう大丈夫だ」

カシアン様は、私の肩を優しく抱き寄せた。その温もりに、私は心の底から安堵した。

「ありがとうございます、カシアン様……。私、あなたを信じておりましたわ」

「ああ。俺も、お前を信じている」

私たちは、固く見つめ合った。この危機を乗り越えれば、私たちの絆はさらに深まるだろう。そして、必ずやイゾルデの悪事を暴き、正義を証明してみせる。カシアン様の決意は、私の心にも強く伝わってきた。

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