追放された悪役令嬢は、氷の辺境伯に何故か過保護に娶られました ~今更ですが、この温もりは手放せません!?~

放浪人

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第四幕:長い夜の後の夜明け

第24話:静かな祝宴/共に築く未来

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私の名誉回復を祝う宴の後、グレイロック城には穏やかで満ち足りた日々が続いていた。カシアン様との絆はますます深まり、私たちは互いをかけがえのない存在として慈しみ合っていた。

ある晴れた日、私たちは二人きりで、城の近くの湖畔を散策していた。雪解け水を集めた湖は、鏡のように空の色を映し出し、周囲の山々の緑とのコントラストが息をのむほど美しかった。

「……本当に、ここは美しい場所ですわね」

私は、カシアン様の腕にそっと寄り添いながら呟いた。

「ああ。だが、お前と共に見る景色は、格別だ」

彼は、私の髪に優しく口づけをした。その温かい愛情に、私の心は満たされていく。

私たちは、湖畔の大きな岩に腰を下ろし、しばらく黙って景色を眺めていた。小鳥のさえずりと、風が木々の葉を揺らす音だけが、静かに響いている。

「セラフィナ」

やがて、カシアン様が私の名前を呼んだ。

「はい」

「……俺は、お前に出会うまで、本当の幸せというものを知らなかったのかもしれない。このグレイウォールを守ることが、俺の全てだった。だが、お前が来てくれてから、俺の世界は色鮮やかになった。お前が笑うだけで、俺の心は温かくなるのだ」

彼の真摯な言葉に、私の目には涙が滲んだ。

「私もですわ、カシアン様。あなたと出会うまで、私はずっと孤独でした。でも、あなたが私を信じ、愛してくださったおかげで、私は本当の自分を取り戻すことができました。あなたがいてくださるだけで、私はどんな困難も乗り越えられる気がするのです」

私たちは、お互いの目を見つめ合い、そして、自然に唇を重ねた。それは、優しくて、温かくて、そしてどこまでも深い、愛の口づけだった。

「……これから、共に未来を築いていこう、セラフィナ。このグレイウォールで、俺たちの子供たちを育て、そして、穏やかに年を重ねていこう」

「はい、カシアン様。喜んで」

私たちは、未来への夢を語り合った。この土地で、どのような家庭を築き、どのような生活を送りたいか。それは、ささやかだけれど、確かな幸せに満ちた未来図だった。

私は、このグレイウォールで、新しい役割を見つけたいと思っていた。薬草の知識を活かして、領民たちのために薬を作ったり、城の子供たちに教育を施したり。カシアン様も、そんな私の思いを理解し、応援してくれると言ってくれた。

太陽が西の山に傾き始め、空が茜色に染まっていく。私たちは、いつまでもその美しい景色を眺めていた。

過去の傷が完全に消えることはないかもしれない。しかし、それもまた、今の私を形作る一部なのだ。そして、その傷を乗り越えたからこそ、今の幸せがある。

カシアン様と共に歩む未来。それは、きっと、たくさんの愛と喜びに満ち溢れているだろう。私は、その未来を信じて、一歩一歩、大切に歩んでいきたい。

この静かな湖畔でのひとときは、私たちにとって、新たな門出を祝う、ささやかで、そして何よりも心温まる祝宴となったのだった。
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