異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔

文字の大きさ
4 / 110

2-2

しおりを挟む
 強奪スキルの検証を始めて一週間。
 このスキルは一日一回しか使えないことが判明した。

 更に一カ月──このスキルが失敗する条件が分かった。

[対象の筋力が術者の筋力を下回っているため、強奪に失敗しました]

 相手のステータスが俺より高くないと、強奪は出来ないらしい。
 しかも失敗も一日一回にカウントされ、この日は強奪スキルの使用が出来なかった。

 翌日、同じ相手に今度は『体力』の強奪を試みる。
 これは成功した。

 つまりステータス単位で成功判定があるんだな。
 しばたくは体力一本に絞って、失敗するようになったら敏捷の強奪、それから魔力だ。

 そうして三カ月も過ぎると、全ステータスの強奪が失敗するようになってしまった。
 平均すれば一つあたり30ぐらい増えたことになるはず。
 元々のステータスがどのくらいだったか分からないから、なんとも言えないなぁ。

 困ったときは生臭坊主だ。
 物心ついてから九歳になる頃まで、俺もあそこにいた。
 前世の記憶が蘇る前の俺は、ここでの食い扶持を減らすために自分から教会を出て行ったんだ。
 時々戻って来ては怪我を治して貰ったり、休んだりはしていたけどな。

「おーい、なま──神父」
「あぁ? わざわざ言い直しやがったなクソガキ」

 神父の癖に口が悪い。
 だけど俺が頼れる大人はこの人しかいないし、実際物知りなんで助かっている。

 知りたいのはこの世界の一般人の平均ステータスだ。
 冒険者はあれこれ突出しすぎていて当てにならない。

「神父。ステータスの平均値ってあるのか? こう……一般人の平均とかさ」
「まぁたステータスか。知ってどうするんだ? 冒険者カードや教会の鑑定水晶で見る訳でもないだろうに」
「鑑定水晶!? そ、そんなのあるのかよっ」
「でっけー教会にはない。もちろんここには──」

 小さい教会だしある訳ないか。

「あーあー、期待しねぇ。で、平均的な数値ってあるの?」
「まぁ……はぁ……この俺様が教えてやろう! なんせベテラン冒険者だからな」
「元だろ」
「だいたい魔力以外は40前後ぐらいだ。魔力は20ぐらいだな。お前ぐらいのガキで50以上あれば、将来魔術師になれる可能性もあるってぐらいだぞ」

 魔力は他のステータスより低いのが当たり前なのか。

「神父のステータスってどんくらいだっけ?」
「俺様かー? ふっふっふ、見たいんだな。輝かしい俺様のステータスを!」

 神父はポージングを決めて懐からカードを取り出すと、指先をガリっと噛んで血を滴らせた。
 カードは血によって反応するらしい。

 血のついたカードには、神父のステータスが浮かんだ。

 筋力:98 体力:397 敏捷:139 魔力:2018

「は? なんだよこのめちゃくちゃなステータス。魔力四桁って……。それ以外も一般人の平均を軽く超えてんだけど」
「ふっふっふ。まぁそれぐらいないと、冒険者なんかやってらんねえよ」

 普通に生きていく分には、さっき言った魔力以外は40前後、魔力も20ぐらいで不自由なく暮らせる。
 それ以上を必要としないなら、わざわざ体を鍛えたりはしない。

 ──と神父は言う。
 だけど一般人であっても、重い物を運ぶ仕事をしている人の筋力や体力はもう少し高い。
 足が速い──と言われる人も、普通よりは敏捷が高かったりする。
 これも神父の話だ。

「じゃあ……ゴロツキどもとかも?」
「んぁー、そうだなぁ。奴らも他の連中よりかは、少し高いだろうなぁ。ま、俺様程じゃあねーけどな」
「はいはい。ありがとうな、神父」

 話を聞いて教会を出た。
 一般人の平均が40前後……俺は子供だから半分だと仮定して……筋力、体力、敏捷は50前後ぐらいまで上がった……のかな?
 強奪していた相手がゴロツキばかりだし、他より少し数値が高いかもとしたらそんなもんだろう。

 ──長生きしろよ坊主。

 そう言われたんだ。絶対長生きして見せる。
 そうだな、差しあがって目標は──

「前世と今の年齢を合わせた二倍!!」

 えぇっと、前世が二十三歳で事故死して、今が十歳。
 合計三十三歳だな。
 その二倍ってことで──六十六歳。

 うん、ささやかな目標だな。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...