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「ところで神父は冒険者ギルド行くのに、やっぱ毎回金払ってんの?」
「うんにゃ。俺には冒険者カードがあるからな。言っただろ、冒険者になったら階段の通行は自由だって」
「やっぱカード欲しいよなぁ。でも地上まで出る金が出来れば、冒険者ギルドに登録する必要なんて──」
「地上の居住権が無ければ強制的に連れ戻されるんだぞ? お前、居住権買うのにどんだけ金が要るか知ってるのか?」
俺は首を左右に振る。階段の通行料より高いのは確かだろう。
金貨五十枚ぐらいとか?
「金貨百枚だ」
「は? 地上に出す気なんてないんじゃないのか?」
「ある訳ねえだろう。万が一スタンピードが発生した時の、生餌が全部いなくなりゃ自分たちの命が危ぶまれるんだ。そんなことするわけねえじゃん」
分かっちゃいるが、そう聞かされるとヘドが出る。
クソみたいな権力者しか、この世界にはいねぇのかよ。
「神父は自由に階段を行き来出来るのに、なんで三階なんかに? 一階ならまだマシなんだろ?」
「まぁな。けど誰が三階で子供たちの面倒を見るんだ? 俺様が世界一ナイスでガイなイケメン神父なんだぜ? 俺以外にいねえだろ」
「世界一物好きな生臭坊主だもんな。ところでさっきの話だけど、あんで冒険者ギルドに登録したほうがいいって神父は思ってんだ?」
「冒険者ギルドに登録して、ギルドが紹介する依頼を受けるとだな、貢献値ってのが貰えるんだ」
その貢献値は加算方式で、これで何かと交換とかそういったポイントではない。
どんだけギルドに貢献した人物かっていう、個人評価みたいなものだ。
地下住人から冒険者になった者は、この貢献値が高いと──
「タダで地上での居住権が与えられる」
「タダ!?」
「そ、タダより安いもんはないってね。それにドロップ品の売却は、いわずもがなギルドの方が高く買ってくれる」
一階からダンジョンへは直通の転送装置もあるし、実際わざわざ三階まで下りてくる必要はない。
治安もかなりまともだし、地上の食料も結構売られていたりもするらしい。
地下三階とは大違いだ。
「それにな。冒険者なら依頼で地上に出ることもできる。もちろん期限付きだが、それもタダで出れるんだよ」
「一時的とはいえ、タダで外に出れるのか……しかもその依頼を完了させりゃあ貢献値も──」
「まぁすべての依頼で貢献値が貰える訳じゃねえが、受ける依頼は選ぶことも出来る」
貢献値くれるのだけ選んで受ければ──居住権を手に入れるのも夢じゃない。
「よし、稼ぎに行ってくる」
「おぅ、まぁ張り切り過ぎて無茶だけはするなよ」
「分かってるよ」
管理棟でぽっきり折れたハンマーを交換して、地下十一階へ。
今日もクリスタルイーターから魔力を強奪してから狩りを開始した。
ついでだから解熱剤や下痢止めの薬草も採取。
「今夜はちょっと張り切るか」
稼ぐために張り切るのではない。
昼夜が逆転しないように、短時間で疲れて帰るためだ。
一時停止も頻繁に使って慣れたのか、それとも魔力のおかげなのか。
十、二十と使っても意識が遠のくことはなくなった。
普段は安全面を考えて階段近くでしか狩りをしないんだが、今日は少し奥まで行ってみよう。
目印は岩の洞窟入口だ。
昨日の鶏牛を十頭ほど狩ったが、肉はなし。
ドロップ率低いって言ってたもんなぁ。
三時間ほど狩りをして魔石十個と他素材をドロップ。
帰りに解熱剤苔をもう少し採取しようと思って洞窟に。
苔の生えている真横にクリスタルイーターがいて邪魔だな。
そぉっと手を伸ばして苔を毟っていると、バランスを崩してクリスタルのほうへ!?
うげっ、やべぇー!!
咄嗟にハンマーをクリツラスに突き立て体を支える。
ライフドレイン……っての、来てないような?
特に何も感じないが、もしかして素手じゃないから大丈夫とか。
試しにハンマーでガンガン殴ってみるが、何も起きない。
しかし結構硬いなぁ。
力いっぱいハンマーを振り下ろしても、ヒビすら入らない。
なんかムカつく。
「うらあぁぁーっ!」
ガスガスとハンマーを叩きつけること数分。
パキ、ペキ──と音がして、パァンっとクリスタルイーターが弾けた。
「ふぅ、やぁっと割れたか。ん?」
クリスタルは溶けるのではなく、光の粒子になってダンジョンへと吸い込まれる。
元あった場所には魔石ではなく、指輪が落ちていた。
「うんにゃ。俺には冒険者カードがあるからな。言っただろ、冒険者になったら階段の通行は自由だって」
「やっぱカード欲しいよなぁ。でも地上まで出る金が出来れば、冒険者ギルドに登録する必要なんて──」
「地上の居住権が無ければ強制的に連れ戻されるんだぞ? お前、居住権買うのにどんだけ金が要るか知ってるのか?」
俺は首を左右に振る。階段の通行料より高いのは確かだろう。
金貨五十枚ぐらいとか?
「金貨百枚だ」
「は? 地上に出す気なんてないんじゃないのか?」
「ある訳ねえだろう。万が一スタンピードが発生した時の、生餌が全部いなくなりゃ自分たちの命が危ぶまれるんだ。そんなことするわけねえじゃん」
分かっちゃいるが、そう聞かされるとヘドが出る。
クソみたいな権力者しか、この世界にはいねぇのかよ。
「神父は自由に階段を行き来出来るのに、なんで三階なんかに? 一階ならまだマシなんだろ?」
「まぁな。けど誰が三階で子供たちの面倒を見るんだ? 俺様が世界一ナイスでガイなイケメン神父なんだぜ? 俺以外にいねえだろ」
「世界一物好きな生臭坊主だもんな。ところでさっきの話だけど、あんで冒険者ギルドに登録したほうがいいって神父は思ってんだ?」
「冒険者ギルドに登録して、ギルドが紹介する依頼を受けるとだな、貢献値ってのが貰えるんだ」
その貢献値は加算方式で、これで何かと交換とかそういったポイントではない。
どんだけギルドに貢献した人物かっていう、個人評価みたいなものだ。
地下住人から冒険者になった者は、この貢献値が高いと──
「タダで地上での居住権が与えられる」
「タダ!?」
「そ、タダより安いもんはないってね。それにドロップ品の売却は、いわずもがなギルドの方が高く買ってくれる」
一階からダンジョンへは直通の転送装置もあるし、実際わざわざ三階まで下りてくる必要はない。
治安もかなりまともだし、地上の食料も結構売られていたりもするらしい。
地下三階とは大違いだ。
「それにな。冒険者なら依頼で地上に出ることもできる。もちろん期限付きだが、それもタダで出れるんだよ」
「一時的とはいえ、タダで外に出れるのか……しかもその依頼を完了させりゃあ貢献値も──」
「まぁすべての依頼で貢献値が貰える訳じゃねえが、受ける依頼は選ぶことも出来る」
貢献値くれるのだけ選んで受ければ──居住権を手に入れるのも夢じゃない。
「よし、稼ぎに行ってくる」
「おぅ、まぁ張り切り過ぎて無茶だけはするなよ」
「分かってるよ」
管理棟でぽっきり折れたハンマーを交換して、地下十一階へ。
今日もクリスタルイーターから魔力を強奪してから狩りを開始した。
ついでだから解熱剤や下痢止めの薬草も採取。
「今夜はちょっと張り切るか」
稼ぐために張り切るのではない。
昼夜が逆転しないように、短時間で疲れて帰るためだ。
一時停止も頻繁に使って慣れたのか、それとも魔力のおかげなのか。
十、二十と使っても意識が遠のくことはなくなった。
普段は安全面を考えて階段近くでしか狩りをしないんだが、今日は少し奥まで行ってみよう。
目印は岩の洞窟入口だ。
昨日の鶏牛を十頭ほど狩ったが、肉はなし。
ドロップ率低いって言ってたもんなぁ。
三時間ほど狩りをして魔石十個と他素材をドロップ。
帰りに解熱剤苔をもう少し採取しようと思って洞窟に。
苔の生えている真横にクリスタルイーターがいて邪魔だな。
そぉっと手を伸ばして苔を毟っていると、バランスを崩してクリスタルのほうへ!?
うげっ、やべぇー!!
咄嗟にハンマーをクリツラスに突き立て体を支える。
ライフドレイン……っての、来てないような?
特に何も感じないが、もしかして素手じゃないから大丈夫とか。
試しにハンマーでガンガン殴ってみるが、何も起きない。
しかし結構硬いなぁ。
力いっぱいハンマーを振り下ろしても、ヒビすら入らない。
なんかムカつく。
「うらあぁぁーっ!」
ガスガスとハンマーを叩きつけること数分。
パキ、ペキ──と音がして、パァンっとクリスタルイーターが弾けた。
「ふぅ、やぁっと割れたか。ん?」
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