異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔

文字の大きさ
67 / 110

35

しおりを挟む
「解体? 助けて貰ったんだ、それぐらいお安い御用だ」
「有難い。じゃあ解体後の肉と、あとレア個体じゃない奴の毛皮は持って行って貰ってもいい」
「「は?」」

 それじゃあ遺体を全部出すか。
 いや、一度に出すと邪魔かな?

 先にキックバードを空間収納袋から取り出して地面に並べた。
 レア八体、ノーマルが五体ある。

「お、お前さんらはレア素材目当てで狩りに来たのか」
「そうなんだ。迷宮都市から来たんだけど、あっちじゃ狩場を独占する奴らが出たってんで市場でレア素材が枯渇し始めているらしい。それで依頼を受けたんだ」
「な、なるほど。狙っている獲物は他にも?」
「あぁ。ルガーウルフのレアを探してんだけど、なかなか見つけらなくって。あ、そうだ。ルガーウルフのレア個体とノーマルは、どこで見分けるか知ってるか?」

 獣人たちは頷き、ノーマルは背中から尻尾までに黒い毛が生え、レアは青い毛だという。
 やっぱり……俺たちが狩ったのはノーマルか。

「し、しかし……本当に貰ってよいのか? この肉を」
「あぁ。俺たちは二人だし、一頭分で何週間……ヘタしたら二、三カ月持つだろ」

 キックバードはダチョウに似たモンスターだ。実物のダチョウはテレビでしか見たことないけど、キックバードは確実にそれよりデカい。卵……産むんだろうか。凄いサイズだろうな。
 そんなキックバード一頭分の肉で、俺とセシリア何か月分の肉になるだろうか。
 かれこれ十日ほどキックバードの肉を食っている。結構美味い。

 ただ……

「ずっとこいつ食うのかって思うと、ちょっとな」
「そりゃ毎日同じものばかりではそうなるだろうな。同じ肉でも味付けを変えたり、調理方法を変えれば違うだろうが」
「面倒だから塩振って焼いただけだ」
「美味い食事は、それだけで心を満たすことが出来る。心が満たされれば体も頭もよく動くようになる。大事なことだぞ」

 それは……分かっているつもりだ。
 ただ俺にとっては「食えるものを食うことが大事」であって、味なんて二の次だった。
 そもそも地下三階の町で美味い物なんて手に入らないからな。
 野菜はしおれて痩せ細っているし、肉なんてモンスターからドロップするのを知るまでは週に一欠片の干し肉を口にできるかどうか。
 そんな暮らしだったから、食えればなんでもいい。肉ならなおのこと。

 しかしいざ好きなだけ食えるようになると、人ってのは直ぐに舌が肥えるもんだ。

「我らが簡単な調理法を、いくつか教えてやろう。東のあの森で採れる香草を使った調理もある。まぁ根本的に解決するには、肉の種類を変えることだな」
「ごもっともで」

 キックバードを捌く彼らの作業を手伝いながら、同時にやりかたも学ぶ。
 セシリアもここまで上手くは出来ないと、彼女自身、俺と同じように彼らから学んだ。

 三日もすれば彼らの体力も戻り、集落へ戻る時が来た。
 とはいえ、怪我は完治した訳じゃない。
 そこで俺とセシリアが彼らの集落まで送っていくことに。

「じゃあ位置を上書きするか」
「うん、はい。──よし!」

 セシリアが最初に位置を記憶させた場所から電気くんの近くに、転移玉の位置情報を上書きする。
 玉はまだ二つあるので、移動先で野宿するときにそこの位置を記憶。朝は転移の指輪でここに戻って来て体力を頂いたら野宿場所に転移──ってやれば、毎日欠かさずステータス強奪も出来る。

 テントを畳んで移動を開始。
 すると電気くんが顔を上げてこちらをじっと見つめてきた。

「なんだ、寂しいのか電気くん。──なーんて、そんな訳ないか」

 ひらひらと手を振ると、電気くんは興味無さそうに目を閉じて眠りはじめた。





「ウィザーラビットだ。魔法を使ってくるから、気を付けろ」
「兎のくせに、魔法だと!」

 魔力はあるけど魔法が使えない俺に謝れ!
 内心そんなことを思いながら、兎にハンマーを振り下ろす。
 
 山道を進めばモンスターと遭遇するのも当たり前。
 兎と呼ぶには大きな、体長一メートルを超すソレと対峙している。

 魔法を使うってのに、反射神経もいい。普通魔法使いなら筋力体力敏捷が低いって相場が決まってるだろ?

「とぅ!」

 あ、ここにも敏捷が高い魔術師がいたよ。
 セシリアは兎を足蹴にし、ぽーんっと跳ねたところを魔法で仕留めている。
 エグい戦い方だ。

 ウィザーラビットを三匹ほど仕留めると、残りは慌てて森の奥へと逃げて行った。

「こいつらの肉も上手いぞ」
「毛皮は少し硬いが、暖を取るためなら十分だ」
「じゃあ袋に入れて持って行くか」

 こうして襲ってくるモンスター全部を返り討ちにし、空間収納袋に入れて彼らの集落へと向かった。

「お前さんのおかげで、戻ったら冬支度に専念出来る」
「そうだな。これなら今年はもう狩りに行かなくてもいいだろう」
「ん? そうなのか?」
「あぁ。我らは獲物を仕留めたらその都度、里へと戻っていた。獲物を担いだまま移動は出来ぬからな」

 行きも帰りも、こうしてモンスターに襲われることを考えれば、大荷物を抱えて移動するわけにはいかない。
 そのせいで、大物を狩っても全部は持ち帰れないそうだ。

 だが今回は俺の空間収納袋を使って、狩った物は全部そっくりそのまま持って帰れる。
 キックバードは十体分、ルガーウルフもクセはあるが食えるという。他にもウィザーラビットにボア、道すがら集めた茸や木の実と大量だ。

「里に到着したら、塩漬け、味噌漬けにした肉と交換してやろう。美味いぞ」
「味噌!? え、味噌なんてあるのか!?」
「おぉ、お主は味噌を知っているのか? 人間はあれを腐った糞だと言って、毛嫌いするのだがな」

 ……腐った糞。いやまぁ、色的にはそう見えるのかも?
 でもなんか不安だ。ちゃんと大豆で作った味噌なんだろうな?

 だがその不安は里に付いたら解消された。
 完全に俺の知る味噌と同じものだ。
 セシリアも知らないといい、どうやら獣人族のみが作る調味料の一つらしい。

「味噌の美味さを知っている人間とは。お前はいい人間だな!」
「味噌の美味さを知っているなんて、獣人族はいい種族だな!」

 俺は里長とガッツリ腕を組み、そして味噌をゲットした。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...