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1章
第──4
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「森の空気を……浄化して欲しい?」
翌日。体を動かせるようになった俺に、ガラス細工のような風貌のエルフ男がやって来て頭を下げた。
なんでもこのエルフの里の長老らしい。どう見ても20代後半ぐらいなんだけどな。
そしてひとつ分かったことは、ここにはリシェルとシェリル以外のエルフも多数暮らしているということ。
「リシェルが言うには、君は空気を清浄化させる力があると?」
「は、はい。その……」
俺は異世界から召喚されてここに来た。
そう素直に喋ってもいいものだろうか。
そう悩んでいると、長老のほうから「君は異世界人だね?」と尋ねてきた。
「分かっている。話すべきかどうか迷っているのだろう。それは当然のことだし、警戒心を持つのは良いことだ。だがあの場所に残っていた魔力の流れを考えれば、召喚魔法が使われたのだとうのはすぐに分かる。そして見慣れない君の服装は、よその世界から招かれた証拠にもなるだろう」
「あ、なるほど……。じゃあ話します。実は──」
俺はこの長老に全部話した。
言葉を挟むことなく、長老は全て黙って聞いてくれた。
全て話し終えて長老は一言。
「今回はまた随分と多いな。いや、過去にも異世界人が召喚された事例は何度かあるのだ」
と教えてくれた。
俺たちが初めてじゃなかったのか。
「直近であれば103年前だ。腐王を倒すために召喚された勇者なのだが、彼のせいでこの森は瘴気で満たされてしまったのだ」
「え? じ、じゃあエルフは異世界人を恨んでいるんじゃ!?」
「確かにかの者のことは恨んではいるが、それ以前に召喚された勇者は邪悪な神を封印するのに協力もしてくれた。異世界人とひとくくりに善悪は決められぬ」
ほっ。邪神を封じてくれた召喚勇者に感謝しなくちゃな。
聞けば110年ぐらい前に、どこぞの国が勇者召喚の魔法を使ってひとりの異世界人を呼んだ。
腐王というのは邪神の眷属のひとりで、まぁ魔王みたいなものらしい。
その腐王を倒したはいいが、死体からは瘴気が駄々洩れして、その死体をなんとエルフの住むこの森に捨てたというのだ。
「この森には生命の樹がある。その樹によって、微々たる量の瘴気が浄化し続けてられていた。だが生命の樹そのものが瘴気に犯され始め、根が腐ってきているのだ」
「それで瘴気の浄化が間に合わなくなって、さらに樹の腐敗が?」
長老は頷く。
このままではエルフの里は瘴気に包まれ、この森では暮らせなくなってしまう。
その上、森が瘴気で包まれれば、この森で暮らす動物たちが全て狂暴化し、モンスターは力を増してしまうだろう。
さらに瘴気が広がり、人間たちの住む村や町すら覆われてしまうと話す。
「で、でも俺のこのスキル……空気清浄っていうんですが、俺を中心に一定範囲の空気しか浄化できないんですよ」
「なるほど。では森を歩き回って貰えば、それだけ広範囲を浄化できると思うのだがどうだろう? もちろん里の者を護衛につけるから安心して欲しい」
あ、なるほど。瘴気を浄化したいなら、歩き回っていればいいのか。
俺が木の上で気を失う直前、リシェルやシェリル、それに何人かのエルフであの兎は全部始末したようだ。
もともとこの森に住んでいるエルフたちだ。モンスターと戦うのはお手の物だろう。
「命を救って貰った恩もあります。俺でできることなら、なんだって手伝いますよ」
「そうか。そう言ってくれてこちらも助かる。異世界から召喚されたのなら、いろいろ知りたいこともあるだろう。我らも人の暮らしとは程遠い所で生きているため、人間の常識といった物には疎いが。分かることはなんでも教えよう」
最後に長老は「フロイトノーマだ」と名乗って手を差し出した。
「君の世界には握手の習慣はないのかな?」
「い、いえ、あります! エルフにもあるのですか?」
そう尋ねると、俺の手を握って笑顔で「ない」と答えた。
ないんかい!
エルフの里の中心に生命の樹は立っていた。
大人が何十人手を繋げば、あの幹をぐるっと一周できるんだろうな。そんなことを考えてしまうほど、この樹はデカい。
そして地面から出た根っこのうち、何本かが紫色に変色して、腐っているのが見てわかる。
「"空気清浄"」
少しでも役に立てるなら──そう思ってスキルを使ったのだが。
「無駄よ。この一帯は瘴気に包まれていないもの」
「エルフの里の周辺は、長老さまたちが風の精霊魔法で結界を張ってくださっています。それに生命の樹が瘴気を払ってくれていますから」
シェリルとリシェルが隣でそう話す。
俺を見つけてくれたのがシェリル。そして俺の周囲だけ瘴気が消えて、それを不思議に思ったのがリシェル。
二人のおかげで命を救われたが、外見の年齢が近いということでそのまま世話役になったようだ。
まぁエルフなので、実際年齢は分からない。それを聞くほど俺も野暮じゃない。
「でも根っこが腐ってるし」
「生命の樹の根は、この森のいたるところに根を伸ばしています」
「里の外に漂う瘴気に充てられて、少しずつ腐っていってるのよ。見えている部分でこんだけ腐ってるの。地面の下の根はもっと……くっ」
悲痛な顔でシェリルが足元を見下ろした。
里のシンボルみたいなものなんだろうな。それにこの樹がダメになったら、彼女らはここを離れなければならない。
そう考えると辛いんだろう。
よぉし。なんとか俺、頑張っちゃうよ!
「リシェル、シェリル。瘴気のある場所まで案内してくれ。今日から少しずつ、瘴気の浄化を始めよう」
「もちろんよ。そのためにあんたを助けてやったんだから」
「でもまだ空さんの体調も心配ですし、あまり遠くにはいかないようにしないと」
リシェルは精霊魔法を使うという。シェリルは弓を持ち、腰には短剣を帯びていた。
他にもうひとり、20代半ばに見える男のエルフが同行。彼の腰には細い剣を下げていた。
「俺はニキアスだ。リシェルとシェリルの叔父で、君を里まで担いで来たのも俺だ」
「俺を担いで!? あ、その前になんていいました?」
「ん? ニキアスだ」
「いや、そのあと」
「リシェルとシェリルの叔父だ」
叔父──つまり二人の両親どちらかの弟ってことで……。
え? 叔父?
「はっはっは。俺が若々しくて驚いているな。だが空よ。この世界の人間もそうなんだが、エルフの年齢を見た目だけで判断するな。リシェルやシェリルだって子供のように見えるが、あれでもはち──」
「ニキアス叔父さん、余計なこと言わないで!」
「そ、そうです叔父様っ。空さんに私たちの年齢は、教えないでくださいっ」
「え? そんな減るもんじゃなしに」
「「だぁーめ!」」
「しょぼーん」
しょぼーんって、そこ自分で効果音付けるのか。
翌日。体を動かせるようになった俺に、ガラス細工のような風貌のエルフ男がやって来て頭を下げた。
なんでもこのエルフの里の長老らしい。どう見ても20代後半ぐらいなんだけどな。
そしてひとつ分かったことは、ここにはリシェルとシェリル以外のエルフも多数暮らしているということ。
「リシェルが言うには、君は空気を清浄化させる力があると?」
「は、はい。その……」
俺は異世界から召喚されてここに来た。
そう素直に喋ってもいいものだろうか。
そう悩んでいると、長老のほうから「君は異世界人だね?」と尋ねてきた。
「分かっている。話すべきかどうか迷っているのだろう。それは当然のことだし、警戒心を持つのは良いことだ。だがあの場所に残っていた魔力の流れを考えれば、召喚魔法が使われたのだとうのはすぐに分かる。そして見慣れない君の服装は、よその世界から招かれた証拠にもなるだろう」
「あ、なるほど……。じゃあ話します。実は──」
俺はこの長老に全部話した。
言葉を挟むことなく、長老は全て黙って聞いてくれた。
全て話し終えて長老は一言。
「今回はまた随分と多いな。いや、過去にも異世界人が召喚された事例は何度かあるのだ」
と教えてくれた。
俺たちが初めてじゃなかったのか。
「直近であれば103年前だ。腐王を倒すために召喚された勇者なのだが、彼のせいでこの森は瘴気で満たされてしまったのだ」
「え? じ、じゃあエルフは異世界人を恨んでいるんじゃ!?」
「確かにかの者のことは恨んではいるが、それ以前に召喚された勇者は邪悪な神を封印するのに協力もしてくれた。異世界人とひとくくりに善悪は決められぬ」
ほっ。邪神を封じてくれた召喚勇者に感謝しなくちゃな。
聞けば110年ぐらい前に、どこぞの国が勇者召喚の魔法を使ってひとりの異世界人を呼んだ。
腐王というのは邪神の眷属のひとりで、まぁ魔王みたいなものらしい。
その腐王を倒したはいいが、死体からは瘴気が駄々洩れして、その死体をなんとエルフの住むこの森に捨てたというのだ。
「この森には生命の樹がある。その樹によって、微々たる量の瘴気が浄化し続けてられていた。だが生命の樹そのものが瘴気に犯され始め、根が腐ってきているのだ」
「それで瘴気の浄化が間に合わなくなって、さらに樹の腐敗が?」
長老は頷く。
このままではエルフの里は瘴気に包まれ、この森では暮らせなくなってしまう。
その上、森が瘴気で包まれれば、この森で暮らす動物たちが全て狂暴化し、モンスターは力を増してしまうだろう。
さらに瘴気が広がり、人間たちの住む村や町すら覆われてしまうと話す。
「で、でも俺のこのスキル……空気清浄っていうんですが、俺を中心に一定範囲の空気しか浄化できないんですよ」
「なるほど。では森を歩き回って貰えば、それだけ広範囲を浄化できると思うのだがどうだろう? もちろん里の者を護衛につけるから安心して欲しい」
あ、なるほど。瘴気を浄化したいなら、歩き回っていればいいのか。
俺が木の上で気を失う直前、リシェルやシェリル、それに何人かのエルフであの兎は全部始末したようだ。
もともとこの森に住んでいるエルフたちだ。モンスターと戦うのはお手の物だろう。
「命を救って貰った恩もあります。俺でできることなら、なんだって手伝いますよ」
「そうか。そう言ってくれてこちらも助かる。異世界から召喚されたのなら、いろいろ知りたいこともあるだろう。我らも人の暮らしとは程遠い所で生きているため、人間の常識といった物には疎いが。分かることはなんでも教えよう」
最後に長老は「フロイトノーマだ」と名乗って手を差し出した。
「君の世界には握手の習慣はないのかな?」
「い、いえ、あります! エルフにもあるのですか?」
そう尋ねると、俺の手を握って笑顔で「ない」と答えた。
ないんかい!
エルフの里の中心に生命の樹は立っていた。
大人が何十人手を繋げば、あの幹をぐるっと一周できるんだろうな。そんなことを考えてしまうほど、この樹はデカい。
そして地面から出た根っこのうち、何本かが紫色に変色して、腐っているのが見てわかる。
「"空気清浄"」
少しでも役に立てるなら──そう思ってスキルを使ったのだが。
「無駄よ。この一帯は瘴気に包まれていないもの」
「エルフの里の周辺は、長老さまたちが風の精霊魔法で結界を張ってくださっています。それに生命の樹が瘴気を払ってくれていますから」
シェリルとリシェルが隣でそう話す。
俺を見つけてくれたのがシェリル。そして俺の周囲だけ瘴気が消えて、それを不思議に思ったのがリシェル。
二人のおかげで命を救われたが、外見の年齢が近いということでそのまま世話役になったようだ。
まぁエルフなので、実際年齢は分からない。それを聞くほど俺も野暮じゃない。
「でも根っこが腐ってるし」
「生命の樹の根は、この森のいたるところに根を伸ばしています」
「里の外に漂う瘴気に充てられて、少しずつ腐っていってるのよ。見えている部分でこんだけ腐ってるの。地面の下の根はもっと……くっ」
悲痛な顔でシェリルが足元を見下ろした。
里のシンボルみたいなものなんだろうな。それにこの樹がダメになったら、彼女らはここを離れなければならない。
そう考えると辛いんだろう。
よぉし。なんとか俺、頑張っちゃうよ!
「リシェル、シェリル。瘴気のある場所まで案内してくれ。今日から少しずつ、瘴気の浄化を始めよう」
「もちろんよ。そのためにあんたを助けてやったんだから」
「でもまだ空さんの体調も心配ですし、あまり遠くにはいかないようにしないと」
リシェルは精霊魔法を使うという。シェリルは弓を持ち、腰には短剣を帯びていた。
他にもうひとり、20代半ばに見える男のエルフが同行。彼の腰には細い剣を下げていた。
「俺はニキアスだ。リシェルとシェリルの叔父で、君を里まで担いで来たのも俺だ」
「俺を担いで!? あ、その前になんていいました?」
「ん? ニキアスだ」
「いや、そのあと」
「リシェルとシェリルの叔父だ」
叔父──つまり二人の両親どちらかの弟ってことで……。
え? 叔父?
「はっはっは。俺が若々しくて驚いているな。だが空よ。この世界の人間もそうなんだが、エルフの年齢を見た目だけで判断するな。リシェルやシェリルだって子供のように見えるが、あれでもはち──」
「ニキアス叔父さん、余計なこと言わないで!」
「そ、そうです叔父様っ。空さんに私たちの年齢は、教えないでくださいっ」
「え? そんな減るもんじゃなしに」
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