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3章
第──44
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「王都までは10日の距離です」
「随分かかりますね」
「徒歩ならその倍以上ですよ」
荷車が一台、小さな馬車が一台。どちらも馬は二頭繋がっている。それと馬車にも荷車にも繋がっていない馬が二頭だ。
だが馬車には御者の村人が二人載っているだけ。
「鮮度もありますけん、スピードを維持するための、交代用なんですよ」
「そうなんですか。じゃあこっちの馬も?」
馬車にも荷車にも繋がっていない二頭だ。
「いえいえ、こっちが冒険者さんに乗って貰うための馬ですよ」
「「ジャンケン──ポンッ」」
またジャンケンが始まった。
「やったわ!」
「悔しいですぅ」
今度はシェリルが勝ったらしい。
練習できる機会があったら、自分で乗れるようにしなきゃな……。
シェリルの後ろに跨って(決していやらしい意味ではない!)出発する。
「ねぇ空。空気清浄の範囲、少し小さくしてみて。どんだけ臭いのか、嗅いでみたい」
「え? うん、まぁ俺も少し気になるから、花粉以外の成分をそのまま残すよう、スキルを掛けなおすよ──"空気清浄"」
特に……臭くないような?
「はっはっは。兄ちゃんたち、そっちは風上だべ。臭いを嗅ぎてーってんなら、荷車の横さ行ってみるだ」
「横ね。はっ」
シェリルが馬の腹を軽く蹴るとスピードがあがる。
急だったので俺は振り落とされまいと、彼女にピッタリとくっついた。
ぁ……石鹸の匂い。いいなぁ────
「くっせぇええぇぇぇぇぇっ!」
「ダメっ。これ殺人級よ! 空、は、早く空気清浄っ」
『きゅ、きゅきゅう~♪』
「くっせえええええぇぇぇ"空気清浄"!」
『きゅうぅぅ!?』
「なんで毛玉はそんな嬉しそうなんだよっ。無理だろこれっ」
ドリンの臭いを消臭!!
頭の中にはそれだけしかなかった。それぐらい臭かった。
そのせいで──
「ふえっくしゅん。ヤベ、ぶえっくしゅん!」
花粉対策が出来ていなかった。
「あぁ、久々に花粉が体に入った気がする」
「大変ね」
「エルフの里では、植物の花粉でくしゃみが出る人はいないのですが。人間族の方だけなのでしょうか」
「え!? なにそれ。エルフ羨ましい! 俺エルフになりたい」
「なりたいからってなれる訳ないでしょ、もう」
エルフマジ羨ましい。
「あそこが今夜泊まる場所です。といっても、あの小屋は乗り合う馬車の乗客用なんで、私らは横にテントを張るだけなんですけどね」
「へぇ。他にもテントを張ってる人がいますね」
「えぇ。人が大勢いたほうが、モンスターも盗賊も襲い難いですから」
「ただいつもなら儂ら、小屋の近くにはテントを張らせて貰えないんですよ。荷の都合でね」
空の馬車を引く依頼主によると、臭い&モンスターが寄って来る──という理由で追い返されるのだとか。
だから冒険者の護衛を雇うしかないと。
「ほんと、臭いを消してくれるスキルはいいですねぇ。空さん、わしらの村に移住してきませんか?」
「は、はは。いやぁ、その……すみません」
消臭剤としてコキ使われる未来が見える。
それに、せっかくの異世界でさぁ今から旅だぞってところで、農村に移住って。ないない。
小屋の近くの木に馬を繋いで、まずすることと言えば。
「"生命の精霊よ。痛みを和らげ内外の傷を癒す力になって"」
「イタタタタ。さすがに丸一日馬に乗ってると、お尻すれちゃって痛いわね」
「空さんも」
にっこり微笑むリシェルは、俺にお尻を見せろ──という。
もちろんパンツを脱げってんじゃない。
でもやっぱり恥ずかしいだろ!
『きゅうん』
背後から、甘えたような声の毛玉が聞こえた。
──と思ったら、『ぎゅふっ!』と腹黒い時の毛玉ボイスが聞こえ、そして衝撃が走った。
尻に。
「あああぁぁぁぁっー!」
「そ、空さん大丈夫ですか!?」
「コラッ毛玉っ。ダメでしょ空のお尻に頭突きしたら!!」
『きゅうん』
おま、毛玉……角あるの……忘れんなよ……。
「はっはっは。お疲れさん。テントを張る作業はおじさんたちがやっておくから、少し休んでいなさい」
「す、すびばせん」
俺たちのテントも依頼主の村人に預け、羞恥心をぐっと堪えてリシェルに治療をしてもらう。
すぐに効果は現れ、痛みはすっと消えた。
はぁ、死ぬかと思ったぜ。
テントを任せているので、俺たちは飯の支度にとりかかる。
小屋の横には井戸があり、これは自由に使っていいとのこと。
俺が井戸で水を汲んでいる間に、シェリルたちが焚火の準備をした。
俺たちの周囲でも、三つほど焚火の明かりが見える。小屋の窓からも光が漏れていた。
食事を終えると、冒険者風の人がやって来て声をかけてきた。
「夜の見張り順だが──」
「見張り順、ですか?」
「ん? 知らないのか」
なにをだろう?
「こういう休息場はな、それぞれで見張りを立てるより、グループ全体で交代制にする方が睡眠時間を多く取れるんだよ」
「あぁ、なるほど」
「んで、お前さんところは若いのばかりだし人数も少ないからな。早朝を担当してくれないか?」
早朝なら、夜行性のモンスターの活動も鈍っているからそもそも襲ってこないだろう。
盗賊にしても明るくなれば襲い難い。
もっとも、大人数が宿泊する休息場を襲撃するような盗賊は早々いないがな──と、声をかけてきた冒険者は笑いながら言う。
ならお言葉に甘えて、明け方まで休ませてもらおう。
「随分かかりますね」
「徒歩ならその倍以上ですよ」
荷車が一台、小さな馬車が一台。どちらも馬は二頭繋がっている。それと馬車にも荷車にも繋がっていない馬が二頭だ。
だが馬車には御者の村人が二人載っているだけ。
「鮮度もありますけん、スピードを維持するための、交代用なんですよ」
「そうなんですか。じゃあこっちの馬も?」
馬車にも荷車にも繋がっていない二頭だ。
「いえいえ、こっちが冒険者さんに乗って貰うための馬ですよ」
「「ジャンケン──ポンッ」」
またジャンケンが始まった。
「やったわ!」
「悔しいですぅ」
今度はシェリルが勝ったらしい。
練習できる機会があったら、自分で乗れるようにしなきゃな……。
シェリルの後ろに跨って(決していやらしい意味ではない!)出発する。
「ねぇ空。空気清浄の範囲、少し小さくしてみて。どんだけ臭いのか、嗅いでみたい」
「え? うん、まぁ俺も少し気になるから、花粉以外の成分をそのまま残すよう、スキルを掛けなおすよ──"空気清浄"」
特に……臭くないような?
「はっはっは。兄ちゃんたち、そっちは風上だべ。臭いを嗅ぎてーってんなら、荷車の横さ行ってみるだ」
「横ね。はっ」
シェリルが馬の腹を軽く蹴るとスピードがあがる。
急だったので俺は振り落とされまいと、彼女にピッタリとくっついた。
ぁ……石鹸の匂い。いいなぁ────
「くっせぇええぇぇぇぇぇっ!」
「ダメっ。これ殺人級よ! 空、は、早く空気清浄っ」
『きゅ、きゅきゅう~♪』
「くっせえええええぇぇぇ"空気清浄"!」
『きゅうぅぅ!?』
「なんで毛玉はそんな嬉しそうなんだよっ。無理だろこれっ」
ドリンの臭いを消臭!!
頭の中にはそれだけしかなかった。それぐらい臭かった。
そのせいで──
「ふえっくしゅん。ヤベ、ぶえっくしゅん!」
花粉対策が出来ていなかった。
「あぁ、久々に花粉が体に入った気がする」
「大変ね」
「エルフの里では、植物の花粉でくしゃみが出る人はいないのですが。人間族の方だけなのでしょうか」
「え!? なにそれ。エルフ羨ましい! 俺エルフになりたい」
「なりたいからってなれる訳ないでしょ、もう」
エルフマジ羨ましい。
「あそこが今夜泊まる場所です。といっても、あの小屋は乗り合う馬車の乗客用なんで、私らは横にテントを張るだけなんですけどね」
「へぇ。他にもテントを張ってる人がいますね」
「えぇ。人が大勢いたほうが、モンスターも盗賊も襲い難いですから」
「ただいつもなら儂ら、小屋の近くにはテントを張らせて貰えないんですよ。荷の都合でね」
空の馬車を引く依頼主によると、臭い&モンスターが寄って来る──という理由で追い返されるのだとか。
だから冒険者の護衛を雇うしかないと。
「ほんと、臭いを消してくれるスキルはいいですねぇ。空さん、わしらの村に移住してきませんか?」
「は、はは。いやぁ、その……すみません」
消臭剤としてコキ使われる未来が見える。
それに、せっかくの異世界でさぁ今から旅だぞってところで、農村に移住って。ないない。
小屋の近くの木に馬を繋いで、まずすることと言えば。
「"生命の精霊よ。痛みを和らげ内外の傷を癒す力になって"」
「イタタタタ。さすがに丸一日馬に乗ってると、お尻すれちゃって痛いわね」
「空さんも」
にっこり微笑むリシェルは、俺にお尻を見せろ──という。
もちろんパンツを脱げってんじゃない。
でもやっぱり恥ずかしいだろ!
『きゅうん』
背後から、甘えたような声の毛玉が聞こえた。
──と思ったら、『ぎゅふっ!』と腹黒い時の毛玉ボイスが聞こえ、そして衝撃が走った。
尻に。
「あああぁぁぁぁっー!」
「そ、空さん大丈夫ですか!?」
「コラッ毛玉っ。ダメでしょ空のお尻に頭突きしたら!!」
『きゅうん』
おま、毛玉……角あるの……忘れんなよ……。
「はっはっは。お疲れさん。テントを張る作業はおじさんたちがやっておくから、少し休んでいなさい」
「す、すびばせん」
俺たちのテントも依頼主の村人に預け、羞恥心をぐっと堪えてリシェルに治療をしてもらう。
すぐに効果は現れ、痛みはすっと消えた。
はぁ、死ぬかと思ったぜ。
テントを任せているので、俺たちは飯の支度にとりかかる。
小屋の横には井戸があり、これは自由に使っていいとのこと。
俺が井戸で水を汲んでいる間に、シェリルたちが焚火の準備をした。
俺たちの周囲でも、三つほど焚火の明かりが見える。小屋の窓からも光が漏れていた。
食事を終えると、冒険者風の人がやって来て声をかけてきた。
「夜の見張り順だが──」
「見張り順、ですか?」
「ん? 知らないのか」
なにをだろう?
「こういう休息場はな、それぞれで見張りを立てるより、グループ全体で交代制にする方が睡眠時間を多く取れるんだよ」
「あぁ、なるほど」
「んで、お前さんところは若いのばかりだし人数も少ないからな。早朝を担当してくれないか?」
早朝なら、夜行性のモンスターの活動も鈍っているからそもそも襲ってこないだろう。
盗賊にしても明るくなれば襲い難い。
もっとも、大人数が宿泊する休息場を襲撃するような盗賊は早々いないがな──と、声をかけてきた冒険者は笑いながら言う。
ならお言葉に甘えて、明け方まで休ませてもらおう。
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