6 / 35
6話 仕事 その2
しおりを挟む「エメリ嬢、仕事の方はどうかな? 何か問題などは起きているか?」
「フラック王子殿下! はい、特に問題はございません。仕事の方は、楽しく進めさせていただいております」
「そうか……それなら良かった」
私はその日、宮殿内で働いていた。フラック王子殿下が用意してくれた仕事は、宮殿内で働く使用人たちの作業効率を上げるというもの。まずは、その段階から始めようというものだ。さらに、フラック王子殿下は幼馴染としてのよしみとして、宮殿内の客間の1つを提供してくれた。つまり、その客間から仕事場まで徒歩で行けるということだ。
ルドルフ様と婚約していた時は、遠方の金鉱山などに行っていたので、それから考えると体力的にはまったく問題ないということになる。我が家から向かうことも出来たのだけれど、せっかくフラック王子殿下が用意してくれた部屋で寝泊りをさせてもらうことにした。
また、私は伯爵令嬢でもあるので、この部屋から宮殿で開かれるパーティーなどには出席するというわけね。まあ、私は婚約破棄をされた直後だから、そういった公務にはしばらく出てはいないのだけれど……。
貴族の間でも噂にはなっているだろうし、ほとぼりが冷めるまで聖女の仕事の方に集中しようと考えている。
「君のおかげで、宮殿内の使用人たちの作業効率は飛躍的に上がっていると聞いている。流石は聖女の家系……いや、流石はエメリ嬢だな」
フラック王子殿下は私個人を褒める為に、わざわざ言い直してくれた。
「いえ……そんなことは。仕事をいただけただけでも感謝しかありません、フラック王子殿下」
「いやいや、こちらこそ」
フラック王子殿下と私は一緒に笑い合う。なんだか楽しい時間となっていた。フラック王子殿下に認められることは単純に嬉しいし、数年ぶりの再会からのこの状況には感謝したい程だった。
ルドルフ様との婚約破棄の件についての悔しさは、今はもうかなり晴れていると言えるだろうか。新しく、聖女として活躍できる場が出来たからというのが最大の要因だと思うけれど。
「さて……私は公務があるのでこれで失礼するが、今日は客人が来るようだぞ。客人と言っていいのか分からないが」
「客人……? 私にでしょうか?」
「ああ、ハーグリーブス夫妻がいらっしゃるようだ。最近は屋敷に帰っていないようだし、偶には親子水入らずで話すと良い。エメリの部屋に招くように、使用人には伝えている」
「お父様とお母様が……」
お父様とお母様が来るのは意外だった。別にそれほど会えなくなっているわけではないのだけれど……。しかも、このタイミングで訪れるということは、一体、どういう用件なのだろう?
31
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された公爵令嬢ですが、王太子を破滅させたあと静かに幸せになります
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エレナは、
誕生日の舞踏会で突然、婚約破棄を宣言される。
「地味で役に立たない」と嘲笑され、
平民の少女を新たな婚約者に選ぶ王太子。
家族にも見放され、エレナは王都を追われることに――。
しかし彼女は、ただの“癒しの令嬢”ではなかった。
静かに力を蓄え、事実と証拠だけで王太子の虚飾を暴き、
自らの手で破滅へと導いていく。
復讐の果てに選んだのは、
誰かに与えられる地位でも、名誉でもない。
自分で選び取る、穏やかな幸せ。
これは、
婚約破棄された公爵令嬢が
王太子を終わらせたあと、
本当の人生を歩き出す物語。
-
奥様は聖女♡
喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。
ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。
【完結】王太子とその婚約者が相思相愛ならこうなる。~聖女には帰っていただきたい~
かのん
恋愛
貴重な光の魔力を身に宿した公爵家令嬢エミリアは、王太子の婚約者となる。
幸せになると思われていた時、異世界から来た聖女少女レナによってエミリアは邪悪な存在と牢へと入れられてしまう。
これは、王太子と婚約者が相思相愛ならば、こうなるであろう物語。
7月18日のみ18時公開。7月19日から毎朝7時更新していきます。完結済ですので、安心してお読みください。長々とならないお話しとなっております。感想などお返事が中々できませんが、頂いた感想は全て読ませてもらっています。励みになります。いつも読んで下さる皆様ありがとうございます。
無能と罵られた私だけど、どうやら聖女だったらしい。
冬吹せいら
恋愛
魔法学園に通っているケイト・ブロッサムは、最高学年になっても低級魔法しか使うことができず、いじめを受け、退学を決意した。
村に帰ったケイトは、両親の畑仕事を手伝うことになる。
幼いころから魔法学園の寮暮らしだったケイトは、これまで畑仕事をしたことがなく、畑に祈りを込め、豊作を願った経験もなかった。
人生で初めての祈り――。そこで彼女は、聖女として目覚めるのだった。
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
婚約者を奪われるのは運命ですか?
ぽんぽこ狸
恋愛
転生者であるエリアナは、婚約者のカイルと聖女ベルティーナが仲睦まじげに横並びで座っている様子に表情を硬くしていた。
そしてカイルは、エリアナが今までカイルに指一本触れさせなかったことを引き合いに婚約破棄を申し出てきた。
終始イチャイチャしている彼らを腹立たしく思いながらも、了承できないと伝えると「ヤれない女には意味がない」ときっぱり言われ、エリアナは産まれて十五年寄り添ってきた婚約者を失うことになった。
自身の屋敷に帰ると、転生者であるエリアナをよく思っていない兄に絡まれ、感情のままに荷物を纏めて従者たちと屋敷を出た。
頭の中には「こうなる運命だったのよ」というベルティーナの言葉が反芻される。
そう言われてしまうと、エリアナには”やはり”そうなのかと思ってしまう理由があったのだった。
こちらの作品は第18回恋愛小説大賞にエントリーさせていただいております。よろしければ投票ボタンをぽちっと押していただけますと、大変うれしいです。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
【完】聖女じゃないと言われたので、大好きな人と一緒に旅に出ます!
えとう蜜夏
恋愛
ミレニア王国にある名もなき村の貧しい少女のミリアは酒浸りの両親の代わりに家族や妹の世話を懸命にしていたが、その妹や周囲の子ども達からは蔑まれていた。
ミリアが八歳になり聖女の素質があるかどうかの儀式を受けると聖女見習いに選ばれた。娼館へ売り払おうとする母親から逃れマルクト神殿で聖女見習いとして修業することになり、更に聖女見習いから聖女候補者として王都の大神殿へと推薦された。しかし、王都の大神殿の聖女候補者は貴族令嬢ばかりで、平民のミリアは虐げられることに。
その頃、大神殿へ行商人見習いとしてやってきたテオと知り合い、見習いの新人同士励まし合い仲良くなっていく。
十五歳になるとミリアは次期聖女に選ばれヘンリー王太子と婚約することになった。しかし、ヘンリー王太子は平民のミリアを気に入らず婚約破棄をする機会を伺っていた。
そして、十八歳を迎えたミリアは王太子に婚約破棄と国外追放の命を受けて、全ての柵から解放される。
「これで私は自由だ。今度こそゆっくり眠って美味しいもの食べよう」
テオとずっと一緒にいろんな国に行ってみたいね。
21.11.7~8、ホットランキング・小説・恋愛部門で一位となりました! 皆様のおかげです。ありがとうございました。
※「小説家になろう」さまにも掲載しております。
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる