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27話 メイラース・クヴェル その1
しおりを挟む「恐れながら申し上げますが、私が宮殿内の使用人の顔に見覚えがあるのは、少し変ですわ……」
「うむ……確かにそうかもしれないな。メイラース・クヴェルは子爵の令嬢になるが、確か3女だったはずだ。当主にはなれんし、嫁ぎ先を見つけるよりも、宮殿内での仕事を優先していると聞いている。外に出る機会も少ないし、リシア嬢と対面するケースは非常に稀だろうからな……」
「はい。私もどこで見たのか、考えていたのですが……」
私とフラック様、リシア様の会話はそのメイラース・クヴェルという使用人の話に移行していた。宮殿内で働いている私ですら、最近、顔を覚えたのだから、上位貴族令嬢であるリシア様が知っているとなると、少しおかしい気はしてくる。
リシア様は別の場所で彼女を見ていた……?
「思い出しましたわ」
「えっ、思い出したんですか……? メイラースさんのことですよね?」
「ええ、どこで彼女を見かけたのか。あれは確か……コーブル家の屋敷ですわ」
「本当か? メイラースがコーブル家の屋敷内に入っていたと?」
それが本当なら大変なことのような気がするけど……。
「いえ、実際はコーブル公爵家の屋敷内ではないですわ。でも、屋敷の前で馬車の乗り降りをしていた記憶がございます。使用人として見に覚えのない方でしたので、印象が強かったのだと思いますわ」
「ええと……それってつまり……」
ラグディ様、若しくはルドルフ様のスパイの可能性があるということ? 確かによく考えてみると、彼女の今日の言動はおかしなところがあったけれど……。
「それだけでスパイと決めつけるのは難しいな。リシア嬢の言葉を信じないわけではないが」
「いえ、賢明なご判断だと思います。それでは……如何なさいますか?」
「直接、聞いてみるのが一番だろう。早速、呼んでみるとしようか」
そういえば、彼女も住み込みで働いていたっけ。宮殿内の離れには、使用人用の宿が併設されている。私は生意気にもそこではなく、一人部屋を貰えたけれど……こうして考えてみると、なんだか悪い気がするわね。宮殿内で働く人達はその仕事内容に応じて、住む部屋が変わって来る。一般的には等級と呼ばれているらしいけど。
もしも、ラグディ様達が、メイラースさんを通して私の勧誘に躍起になっているのだとしたら、最早、救いようがないわね……。私はそうではないことを祈っていた。
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