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2話 王子殿下 その1
しおりを挟む「……」
私はディノス様からの理不尽な婚約破棄以降、無気力な生活を行っていた。お父様やお母様は私を責めることはなく、ディノス様……ひいてはカンブリア家を恨んでいたようだけれど。伯爵家と侯爵家では明確に権力の差がある。お父様達がいくら私の為に怒ってくれたとしても限界があるのだった。
あれから2週間、結局は慰謝料請求すらも断られる始末だったのだ。
私は現在、とあるパーティーに参加している。参加はしているけれど、それはあくまでも以前から決まっていたことだから出席しているだけだ。本当ならベッドに横たわっていたいとすら思っている。ディノス様からの婚約破棄はそれほどにダメージを私に与えていた。
彼を愛していたのは事実だけれど、それ以上にショックなことが、ディノス様が私を陥れようとしている点だ。あの言葉を聞いてから、私の虚無感は一気に広がってしまった。先ほどからも、パーティー会場では私の噂をしている人々がいる。それはとても悲しいことだった。
完全に濡れ衣であるにも関わらず、他の貴族に信じてもらえない状況なのだから……。
「リディア様……大丈夫でございますか?」
「ええ……大丈夫よシェリー。気遣ってくれてありがとう」
「いえ、とんでもないことでございます……」
私と同じ17歳のシェリーは、専属の使用人の一人だ。今回のパーティーに同席してくれている。子爵令嬢という肩書きがあるのだけれど、4女という立場から最終的には一般人になるらしく、それならばと我が家に雇用されたのだ。
私の大切な友人でもあり、何でも話せる数少ない相手でもあった。シェリーには心配を掛けさせたくはない。せめて、彼女の前では気丈に振る舞わなければ。
「婚約破棄をされた直後です……無理をして、パーティーに出席されなくても良かったのでないでしょうか?」
「そうも言っていられないわ。お父様やお母様の名誉をこれ以上汚すわけにはいかないもの。例え笑いものにされらとしても、フォルスタ伯爵家の名誉をこれ以上下げたくはないの」
「リディア様……」
これは本音でしかない。私を責めないでいてくれたお父様達への、親孝行と言えば良いのだろうか。私は公務をしっかりと行うことで気丈に振る舞う……悲しい気持ちを見せないことが重要だと考えていた。
ただ……人力飛行機みたいなもので、気を緩めればすぐにも落ちてしまう非常に脆い状態だけれど……。シェリーもその辺りを理解しているのか、私を見る視線は憂いを帯びているようだった。
「失礼、少しよろしいかな?」
ああ、私を小馬鹿にする貴族が声を掛けて来たようだ。先ほど、私を見て笑っていた貴族の内の誰かなのだろう。私はどうでも良かったけれど、無視をするわけにはいかないので、声の主に視線を合わせる。
「やあ、リディア。久しぶりじゃないか」
「えっ……ケルビン様!?」
驚きを隠せなかった……目の前に居たのは、ケルビン・アウガスト王子殿下だったからだ。幼馴染にはなるけれど、まさかこのタイミングで会うことになるなんて……私の心臓はとても高鳴っていた。
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