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3話 王子殿下 その2
しおりを挟むアウガスト王国の第二王子殿下であらせられる、ケルビン・アウガスト様。私の幼馴染であり、年齢は19歳だ。実に、3年ぶりの再会ではあるけれど……まさか、こんなタイミングで会うことになるなんて思わなかった。
「け、ケルビン王子殿下……お、お久しぶりでございます……!」
私は自分の現状を察し、なるべく他人行儀になるように彼に挨拶をした。以前であれば、もっとフランクに話していたけれど、流石に今の状況でそれは無理だったから。ディノス様に理不尽な婚約破棄をされ、不名誉な噂まで流された私……今、ケルビン様と親しくすることなんて出来なかった。
しかし……。
「ははは、随分、しおらしいじゃないか。どうしたのだ? ははぁ、父上であるアストラ殿に厳しく教育をされた結果というわけか?」
「け、ケルビン様……!」
私は恥ずかしさの余り、ついつい大きな声をあげてしまった。周囲の貴族達もその雰囲気を奇妙に思っているようだった。この舞踏会では私は、粗相を起こしてディノス・カンブリア侯爵令息から婚約破棄をされた伯爵令嬢でしかないはずなのに……。
私は軽く混乱してしまっていた……ケルビン様との再会は3年ぶりになる。いくら、幼馴染の関係とはいえ彼は明確に地位が上のお方だ。私も伯爵令嬢なので、地位が低いというわけではないけれど。しかし、今の私の環境は非常にマズいと言えた。
ディノス様に婚約破棄をされ、悪い噂を流されている令嬢、という立ち位置なのだから。今の状態でケルビン様に近づくのは非常に申し訳がない。今すぐにでも離れたい気持ちだったのだけれど……。
「リディア、噂は聞いているよ」
「け、ケルビン様……?」
「ディノス・カンブリア侯爵令息に婚約破棄をされたのだろう? 先ほどから、その話題を何度か聞いているが……」
「は、はい。左様でございます……ですので、私がケルビン様の近くに居ることは、ケルビン様の名誉を傷つけることになるかと……」
「バカなことを言うなっ」
ケルビン様は私の腕を引いて、私を近くに寄せた。もう少し勢いがあれば、唇が重なってしまっていたかもしれない。
「私が君のことを知らないとでも思っているのか? 3年間の空白はあるが、かの噂など全てデタラメだと確信しているよ」
「け、ケルビン様……」
あ、あれ……私は涙を流しているような気がする。いえ、間違いなく流しているわね……ああ、パーティー会場なのになんて情けない真似を……。でも、彼の言葉はそれほどに嬉しかった。まさか、私にそんな言葉を掛けてくれるなんて思わなかったから。
使用人のシェリーは怪しく笑っているけれど……何よ失礼ね、私だって乙女なんだしこんな状況に出くわしたら感動で涙くらい流すわよ。
とにかく、ケルビン様のお言葉はそれ程に嬉しかったと言うことだ。
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