元婚約者がマウント取ってきますが、私は王子殿下と婚約しています

マルローネ

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4話 王子殿下 その3

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「ど、どういうこと……? ケルビン王子殿下が……」

「わ、私にもさっぱりだよ……」


 先ほどまで、私の噂話で盛り上がっていたであろう人々が、少し戸惑っているようだった。


「例の噂って確か……」

「ああ、ディノス・カンブリア侯爵令息に不祥事を起こして婚約破棄されたと聞いていたが……」

「どうなっているのだ?」


 私とケルビン様が一緒に居るだけで、周囲の貴族達は婚約破棄の話を疑い始めているようだ。なんというか……脆い噂話ね。まあ、噂話なんてそんなものなのかもしれないけれど。

 私はディノス様とメリナ様の顔を思い浮かべていた。二人とも今頃はどんな顔をしているのかしら? 勝ち誇っているのかもしれないわね……やれやれ。


「どうかしたのか、リディア?」

「いえ……なんでもありません。ケルビン様は私と並んでいても問題ないということで、よろしいのでしょうか?」

「ははは、当たり前だろう? 自慢ではないが、私に直接文句を言う者はいないだろう。それに、君がディノスに不祥事……何か失礼なことをしたとはどうしても思えないからな」

「はい、それはディノス様の吐いた嘘です。予想以上に浸透していたのは驚きでしたが」


 噂の浸透具合というものは、発信者の立場によって大きく変わっていく。一般の国民が発したところで限界があるけれど、貴族や王族が発した場合は大きく広まっていくものだ。

 ケルビン様は私の悪い噂をまったく信じている素振りを見せていない。それはとても嬉しいことだった。


「リディア様、良かったですね」

「そうね、シェリー。こんなに嬉しいことは他にないかもしれないわ」


 ケルビン様に3年ぶりに会えたというだけでも驚きなのに、いきなり婚約破棄の不名誉を否定してくれたのだから。嬉しいに決まっている。


「しかし、どういう理屈で不祥事からの婚約破棄に至ったのだ?」

「は、はい……その件なのですが……」


 パーティーの席で話すことではないかもしれないけれど、ケルビン様には知っておいて欲しかった。

「ディノス様は侯爵令嬢のメリナ・ホールドイン様と婚約するらしいのです。そこで、強制的に私は婚約破棄されることになりました」

「そんなことがあったのか……」


 それから、ディノス様が私に不名誉な噂を流してやる、と言ったことも全て打ち明けた。すると、ケルビン王子殿下の様子が変わり……。

「それは本当なのか?」

「は、はい……事実です……」

「そうか……」


 ケルビン様は無表情だったけれど、私には分かっていた。この時の彼はとても怒りに満ちていたのだと……。
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