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8話
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「まったく、伯爵令嬢の護衛と言うのはこんなにも礼儀がなっていないのか……私は悲しいよ、アリス」
「は、はあ……」
グリア・ソードフェルトさんは私の家の護衛ではなくて、マルクスの護衛だ。彼を侮辱することはマルクスの家を侮辱しているようなものなんだけれど……大丈夫かしら?
「仕方がないわよグレンデル。アリス嬢はたかが伯爵令嬢でしかないんだから。貴族としての礼儀……まあ、嗜みなどが劣っていても文句を言うことはできないわ」
「嗜み……礼儀……」
アレッサ様もグレンデルに便乗するように私を見下して来た。彼女は侯爵令嬢なのだから確かに地位は上と言えるけれど。それでも伯爵家を相手に「たかが」と言えるほどの身分ではないように思える。王国内の伯爵家を地位が低いと馬鹿にするのなら、それ以下の子爵や男爵は顔も見せられない状況になるのではないかしら。
アレッサ様は子爵家や男爵家をもっと見下しそうではあるけれどね。
「それで? 首を切らないのならどういう処分をするのかしら、グレンデル」
「ふふふ、そうだね」
「ええっ?」
この話はまだ続くと言うの? 私はもうそろそろ終わるかと思っていたのに、二人は続ける気満々のようだ。どれだけしつこいのよ。少しグリアさんが言葉を挟んだだけじゃない。
「先ほどの件をまだ続けるのですか? グリアさんはそこまで悪いことはしていないでしょう。許してあげてください」
「私も個人的には許したいと思っているさ。しかし、侯爵という地位に就いている以上、配下の者を簡単に許したのでは示しがつかないからな」
「そうよそうよ!」
配下の者って……グリアさんはあなたの配下でもなんでもないでしょう。何を言ってるのかしらこの二人は……。
「アリスはあくまでも、この護衛の処分をするつもりはないのかね?」
「ありませんよ……あるわけないでしょう?」
私の護衛ではないので処分をする権限自体持たないけれどね。それにしたってさっきの発言だけで処分をする方がどうかしている。あの程度の言葉で護衛が処分されるなら、どの貴族の護衛も辞めてしまうだろう。そうなると結局困るのは貴族自身だ。
「仕方がないな。では、護衛の後始末は君自身に任せるとして……謝罪は公式の場できっちりと書面で行ってもらおうか」
「……へっ? どういう意味ですか? 意味不明なんですが……」
また、わけのわからない暴論が出て来たわ。また、侯爵家として身分にあった行動だとか言うんでしょうけれど。
「決まっているだろう。文章による謝罪をしてもらうんだよ。場所はそうだな……我が屋敷に直接来て貰おうか。父親のデラン殿が来てもらった方が良いが……アリスが直接来るのかは任せるよ」
「ご自分で何を言っているのか分かっています?」
「当たり前だ」
グリアさんの言葉の謝罪に文章で行えと言っているわけだ。しかも、お父様か私が直接、グレンデル様の屋敷に出向かないといけない。これは、婚約破棄の手続き並の出来事だ。まだ、彼から慰謝料は貰っていない……それすら払っていないくせに、なにが侯爵として行うべき事柄なのだろうか。
「わかっているとは思うが、個人的にはしたいとは思っていない。ただ、私も侯爵だからな……仕方がないのだよ」
「ふふ、流石グレンデルね! 頼もしいわ。私の将来の夫だけはあるわ」
「ははは、当然だよ」
二人で盛り上がっているけれど、流石に我慢の限界に近づいていた。許せない……。
「あの、二人で盛り上がっているところ悪いんですけれど、侯爵としての立場を重んじるなら、慰謝料はすぐに払っていただきませんか?」
「なに……? 慰謝料だと?」
「そうです。あなたの勝手な婚約破棄に対しての慰謝料です。グリアさんの件よりもそっちの方がよっぽど重大でしょう?」
グレンデル様は苦々しい顔をしている。私は彼の発言を逆手にとってやることにした。
「は、はあ……」
グリア・ソードフェルトさんは私の家の護衛ではなくて、マルクスの護衛だ。彼を侮辱することはマルクスの家を侮辱しているようなものなんだけれど……大丈夫かしら?
「仕方がないわよグレンデル。アリス嬢はたかが伯爵令嬢でしかないんだから。貴族としての礼儀……まあ、嗜みなどが劣っていても文句を言うことはできないわ」
「嗜み……礼儀……」
アレッサ様もグレンデルに便乗するように私を見下して来た。彼女は侯爵令嬢なのだから確かに地位は上と言えるけれど。それでも伯爵家を相手に「たかが」と言えるほどの身分ではないように思える。王国内の伯爵家を地位が低いと馬鹿にするのなら、それ以下の子爵や男爵は顔も見せられない状況になるのではないかしら。
アレッサ様は子爵家や男爵家をもっと見下しそうではあるけれどね。
「それで? 首を切らないのならどういう処分をするのかしら、グレンデル」
「ふふふ、そうだね」
「ええっ?」
この話はまだ続くと言うの? 私はもうそろそろ終わるかと思っていたのに、二人は続ける気満々のようだ。どれだけしつこいのよ。少しグリアさんが言葉を挟んだだけじゃない。
「先ほどの件をまだ続けるのですか? グリアさんはそこまで悪いことはしていないでしょう。許してあげてください」
「私も個人的には許したいと思っているさ。しかし、侯爵という地位に就いている以上、配下の者を簡単に許したのでは示しがつかないからな」
「そうよそうよ!」
配下の者って……グリアさんはあなたの配下でもなんでもないでしょう。何を言ってるのかしらこの二人は……。
「アリスはあくまでも、この護衛の処分をするつもりはないのかね?」
「ありませんよ……あるわけないでしょう?」
私の護衛ではないので処分をする権限自体持たないけれどね。それにしたってさっきの発言だけで処分をする方がどうかしている。あの程度の言葉で護衛が処分されるなら、どの貴族の護衛も辞めてしまうだろう。そうなると結局困るのは貴族自身だ。
「仕方がないな。では、護衛の後始末は君自身に任せるとして……謝罪は公式の場できっちりと書面で行ってもらおうか」
「……へっ? どういう意味ですか? 意味不明なんですが……」
また、わけのわからない暴論が出て来たわ。また、侯爵家として身分にあった行動だとか言うんでしょうけれど。
「決まっているだろう。文章による謝罪をしてもらうんだよ。場所はそうだな……我が屋敷に直接来て貰おうか。父親のデラン殿が来てもらった方が良いが……アリスが直接来るのかは任せるよ」
「ご自分で何を言っているのか分かっています?」
「当たり前だ」
グリアさんの言葉の謝罪に文章で行えと言っているわけだ。しかも、お父様か私が直接、グレンデル様の屋敷に出向かないといけない。これは、婚約破棄の手続き並の出来事だ。まだ、彼から慰謝料は貰っていない……それすら払っていないくせに、なにが侯爵として行うべき事柄なのだろうか。
「わかっているとは思うが、個人的にはしたいとは思っていない。ただ、私も侯爵だからな……仕方がないのだよ」
「ふふ、流石グレンデルね! 頼もしいわ。私の将来の夫だけはあるわ」
「ははは、当然だよ」
二人で盛り上がっているけれど、流石に我慢の限界に近づいていた。許せない……。
「あの、二人で盛り上がっているところ悪いんですけれど、侯爵としての立場を重んじるなら、慰謝料はすぐに払っていただきませんか?」
「なに……? 慰謝料だと?」
「そうです。あなたの勝手な婚約破棄に対しての慰謝料です。グリアさんの件よりもそっちの方がよっぽど重大でしょう?」
グレンデル様は苦々しい顔をしている。私は彼の発言を逆手にとってやることにした。
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