婚約破棄ですか？ 優しい幼馴染がいるので構いませんよ

27話 グレンデル視点

(グレンデル視点)


「大変なことをしてくれたな……グレンデル」

「国王陛下……まさかお会い出来るとは思いませんでした」


　目の前には我が王国の長であるリヴァル国王陛下がいる。マルクス・ファーム大公殿下の伯父に当たる人物だ。私は地下牢に閉じ込められていたが、そこに国王陛下がわざわざ来たことになる。


「右腕が折れているな。大丈夫か？」

「怪我の方は問題ありません。大丈夫ですよ」

「そうか。それならば何よりだ」

「……」


　国王陛下の意図が読めなかった。なぜ、私のところに来たのだ？　最早、議会や裁判所からも見放され私の人権などないようなものなのに……。国王陛下は最小限の護衛しか連れていないようだ。私が鉄格子に捕らえられていなければ、陛下すら刺せたのかもしれないな。

「なぜマルクスを刺した？　お前らしくもない……」

「わかりません、陛下。自分でもなぜあんなことをしたのか……」

「お前は精神に異常をきたしているようにも見受けられるな」

「そうかもしれませんね。どのみち、私の処罰は大変重い物になるでしょう？　終身刑か極刑……」

「大公殿下を殺めようとしたのだから、当然の報いだな」

「でしょうね……」


　私は終身刑の可能性がないわけではないのか？　とも思ったが、間違いなく極刑になるだろうと思っていた。それも貴族社会の重大さをアピールする為に、また、他の貴族たちへのみせしめとして殺されるのだろう。私の首はしばらく晒されるかもしれないな。

「マルクスは現在、生死の境をさ迷っている。大変なことをしてくれたものだ……本当に」

「今さらで申し訳ないですが……後悔はしています……」

「後悔をしている、か……ならば、お前は研究施設の実験体にならないか？　どうせ、もう死を受け入れているのだろう？」

「実験体ですか……？　それは……」


　あまり良い響きではないな。一体、国王陛下は何を考えているのか……。


「少しでも王国に報いる気があるのなら、実験体になるのだ。そうすれば最低限の生活の保障はしよう。極刑や終身刑よりは幾分かマシな生活が送れるだろう」

「……」


　このまま行けば、私は拷問の末に殺されるかもしれない。国王陛下は取引を要求しているのだ。私のように捕まる貴族はめずらしいからな。良い機会だと思っているのかもしれない。答えは……考えるまでもないか。私は頷いた。