異世界日帰りごはん 料理で王国の胃袋を掴みます!

ちっき

文字の大きさ
888 / 1,133
連載

デサッバ国の謁見の間!

しおりを挟む
 城から見える光景に、デサッバ・ルブの貴族は固唾を吞む、絶望を感じる者、落胆し膝をつく者、国に失望を感じ空を見上げる者、貴族達は全てを諦めた、すると扉が開き、兵士が貴族達に声を掛ける。

「謁見の間へ移動だ。」
 兵士は淡々と言う、貴族達は兵士を見る、本来ならば貴族に命令する兵士など切り捨てても文句は言われない、しかしこの兵士はロラカリアの兵士だ、そして兵士の後ろにも数人の兵士が居る。
 貴族達は頷き黙って部屋を出て行く、足取りは重い、まるで死刑執行を突き付けられた犯罪者の様に。

「終わるのか、私達は。」
 ポツリと呟く貴族に、他の貴族は反応しない、審問官にいつ連れて行かれ、どんな扱いをされるのか、想像するだけで身の毛がよだつ、貴族はガクガクと震える足を必死にこらえ歩く、そして謁見の間で兵士が止まる。

「入れ。」
 貴族達は返事もせず、開けられた扉を潜る、そして玉座を見る。

「ジーアス国王陛下!」
 貴族は、ジーアス・ルブ・デサッバ王を見る、ジーアスはチラリと貴族を見ると、視線を動かし中へ促す、貴族達は王の前に並ぶ、既に他の部屋からも大勢の貴族が呼ばれ、同じく左右に分かれ立っていた。

「揃ったみたいね。」
 ユラ達よりも少し年上に見えるであろう少女、チェリーサ・モン・ロラカリアが、楽し気に話しながら謁見の間へ入って来る、そしてその後ろからはファーグス・ジル・ブルーワグ国王が入って来る。

「さ、あなた達も入りなさいな。」
 チェリーサに促され男が2人入って来る、その姿を見てジーアスは目を見開く。

「ブローグ!生きていたのか!?」
「お久しぶりで御座います、ジーアス国王陛下。」
 ロラカリアに亡命していたブローグ卿はにこやかに微笑みジーアスに頭を下げる。

「・・・お前が手を引いていたのか。」
 驚きの表情から悲し気になり問いかけるジーアス、ブローグは首を振る。

「そうではありません、ジーアス国王陛下、私はこの国を愛しております、この国を・・・消滅させない為に、国の存亡をかけて動いておりました。」
「・・・。」
 ブローグの話を聞き、王は肩を落とす。

「ああ、そうか、俺はあいつらにそそのかされ、ドラゴンの尾に剣を刺してしまったのだな。」
「はい、しかし、まだ・・・。」
 ブローグはそう言うと、謁見の間にある一番大きな扉を見る、玉座の正面にある豪華な扉だ、その扉の外が騒がしくなる、そして。

「来たわね♪」
 チェリーサが嬉しそうに言うと、扉が開かれ、色とりどりのローブを着た少女達が入って来る、千春達の横にはワークスやルプ達、そしてドラゴニュートが囲んでいる。

「あ!チェリーサちゃん!」
 重い空気を切り裂くような明るい声が、謁見の間に響く、その声は今にも死にそうな貴族達の心を掴む。

「少女・・・。」
「この方が聖女様・・・。」
 聖女が来る、その事は貴族達にも聞かされていた、だが、王都に来たのは恐ろしいドラゴンや聖獣、そして上位精霊達だ、すると一人の貴族が膝をつく、その姿を見た他の貴族達は同じ様に膝をつき始めた。

「・・・うぉう。」
 思わず千春は足が止まり声をあげる。

「ちょ、千春、まだ呼んでないのにコレヤバない?」
「ヤバいね、教国並みにヤバいわ。」
 小さな声で話す千春と頼子、美桜達も驚きつつ後ろからついて行く、そして玉座の前に辿り着くと、ジーアスは既に玉座から降りていた、そして千春の前に跪く。

「ようこそお越しくださいました、聖女様。」
 ジーアスは膝をついたまま頭を下げる、ジーアスは2人の王、ファーグスとチェリーサに聞いてたのだ『聖女を怒らせるな』と。

「あ、どうも、千春です。」
 軽く答える千春、頼子はクスクス笑いながら自分も自己紹介する、そして皆が名前を言うと、チェリーサは数段高くなった玉座の前に来るようにと千春を呼ぶ、。

「こっちにいらっしゃいな。」
「そっちなの?」
「それはそうよ、この場で一番偉いのよ?」
「んなこたないよ、もっと偉い人が今から来るんだから。」
 笑いながら千春は階段を上る、頼子達は並んで上ると、貴族の方を見る、数十人の貴族は千春達を見て立ち上がる。

「さてとー。」
 小さく呟く千春に頼子が話しかける。

「セリフは?」
「アイトネがテレパッシ~で教えてくれるって。」
 千春はそう答えると、一瞬目を閉じ、女神アイトネからのテレパシーを受け取る。

(アイトネ、ねぇアイトネ。)
((なにー?))
(言い方固くない?)
((それくらいの方がいいわよ~♪))
 アイトネに話しかける千春、そして脳内に響く威厳ある声に合わせ、彼女は深呼吸をして玉座の前で貴族たちを見据える、姿勢を正し、聖女のローブがキラキラと光る中、力強く、しかし落ち着いた口調でセリフを始める。

「デサッバ・ルブの民と王、そして貴族たちよ、聖女たる私が、女神アイトネの意志を伝えん、この国は長きにわたり、腐敗と不正に蝕まれてきました、しかし、今こそ変わる時です、デサッバ・ルブは新たな道を歩まねばなりません、内部からの改革、仕組みの再構築、そして正しき王政の確立、それを成すは、ここにいる貴族たる汝らと、ジーアス国王です。」
 千春は一呼吸置き、貴族たちの顔を一人一人見つめる、謁見の間は静寂に包まれ、彼女の声だけが響く。

「汝らには責任があります、この国を正しい未来へと導く責務が、 過去の過ちを悔い改め、民のために尽くすのです、公正な統治、誠実な心、それこそがデサッバ・ルブを再び輝かせる鍵なのです、女神アイトネは見ています、汝らの行いを、その心を、全てを見通しておられます。」
 ここで千春は声を少し柔らかくし、まるで友達に話しかけるような口調で、でも目はキリッと真剣に続ける。

「それから!未だ悪しき企みを抱く者、己の欲のために国を乱そうとする者がいるとすれば、その魂は冥界へと堕ちるであろう! さあ、悔い改めなさい、そして、ブルーワグ国やロラカリア国に戦争を仕掛けようと暗躍し、悪事に手を貸した者たちよ、今ならば温情が与えられる、自首せよ。女神の名の下に、今、潔く名乗り出るのだ!」
 千春はセリフを言い終えると、無邪気な笑顔を浮かべつつ、貴族たちをじっと見つめる、謁見の間に緊張感が漂い、貴族たちの間にざわめきが広がる、彼女の背後では、頼子や他の聖女たちが小さく頷き、ドラゴンや精霊たちの存在が圧を加える。

「んじゃ呼んじゃおうか。」
 千春が言うと、聖女たちは一斉に頷き、厳かに手を繋ぐ。千春が中心に立ち、皆で声を揃えて呼びかける。

「女神アイトネ様! どうぞ、私たちの前に現れてください!」
 空気がキラキラと輝き始め、謁見の間に神聖な光が広がる。貴族たちは息を呑み、ジーアス国王すら身を固くする。光の中から、荘厳な姿の女性が現れる。アイトネだ。彼女は光り輝く白銀のドレスで、威厳に満ちた微笑みを浮かべている。

「我が聖女たちの呼び声に応じ、現れたり、デサッバ・ルブの民よ、我が名はアイトネ。」
 アイトネは静かだが力強い声で語り、謁見の間を圧倒する。

「聖女の言葉こそ私の意思、この国を正しき道へ導くのは、汝らの務め、誠心をもって事に当たりなさい、背く者は、裁きが待ってるわよ。」
 アイトネは穏やかに、しかし有無を言わさぬ威厳で貴族たちを見据える、貴族たちは畏怖と希望が入り混じった表情で女神を見つめる。

「アイトネ・・・めっちゃ神様じゃん(コソコソ)」
「こんな感じでも話できるんだ・・・驚いたわー(ボソッ)」
「みてよ貴族さん達、もうアイトネ様から目離さないよ(ボソボソッ)」
「そりゃ目離せないっしょ、神様だもん(コソッ)」
「うぉっほん!」
 千春達の言葉を聞き苦笑いするファーグスは咳をする、貴族たちの視線はファーグスに移る。

「女神アイトネ様の御意志に従い、デサッバ・ルブは新生する! 貴族諸君、ジーアス国王と共に、正しき国を築け! 背く者は女神の裁きを受けるぞ!」
 ファーグスは力強く宣言し、謁見の間を圧する、貴族たちは畏怖と決意の表情で頷いた。
 アイトネは微笑み、千春たちに軽くウィンクし、聖女たちはクスクス笑う、緊張が解ける中、改革への第一歩が踏み出された。





しおりを挟む
感想 3,724

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」 魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。 ――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。 「ここ……どこ?」 現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。 救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。 「ほら、食え」 「……いいの?」 焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。 行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。 旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。 「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」 「ウチの子は天才か!?」 ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。 これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。 ※若干の百合風味を含みます。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

お転婆令嬢は、大好きな騎士様に本性を隠し通す

湊一桜
恋愛
侯爵令嬢クロエは、二度も婚約破棄をされた。彼女の男勝りで豪快な性格のせいである。 それに懲りたクロエは、普段は令嬢らしく振る舞い、夜には”白薔薇”という偽名のもと大暴れして、憂さ晴らしをしていた。 そんな彼女のもとに、兄が一人の騎士を連れてきた。 彼の名はルーク、別名”孤高の黒薔薇”。その冷たい振る舞いからそう呼ばれている。 だが実は、彼は女性が苦手であり、女性に話しかけられるとフリーズするため勘違いされていたのだ。 兄は、クロエとルークのこじらせっぷりに辟易し、二人に”恋愛の特訓”を持ちかける。 特訓を重ねるうちに、二人の距離は少しずつ近付いていく。だがクロエは、ルークに”好きな人”がいることを知ってしまった…… 恋愛なんてこりごりなのに、恋をしてしまったお転婆令嬢と、実は優しくて一途な騎士が、思い悩んで幸せになっていくお話です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。