悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

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ガルド城の秘密

第46話-手紙の送り主は誰?-

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 一夜の小さな冒険から2日が経っていた。
 時間通りにアレンの迎えに来た馬車で家まで帰ってからは病み上がりのホリナの負担を考えながら自分でも家の中の用事をするようになっていた。元々用事もないんだし、丁度いい運動になる。
 ホリナ自身は問題ないって言ってるけど、私としては心配だし、当分はゆっくりしていてほしいというのが本音だ。
 当の本人はいつも通り掃除も洗い物も洗濯も全部しようとするから困りものだけど、本人としても日々のルーティンをしている方が気が楽みたいなので、あくまで私は補助のように動いている。
 あの日私の話を聞いてくれたホリナ。怒られはしたけどそれでも最後には「よかったですね」って優しく言ってくれた。ただ、今回の発端になってしまったことをかなり気にしているみたいだったのが私の気がかりだ。ホリナは被害者なのに。
 ヤンとアルもアレンが迎えに来る時間の前に一度会いに来てくれた。「近衛騎士になったと言ってもお嬢が卒業までは今と変わんねーよ。給料もそれまではいらねぇ」というのでとりあえずその形での近衛騎士契約という事で収まった。
 次に会うのは休み明けの交流会。今からまた楽しみで仕方ない。

「それにしても陽が伸びてきたなぁ」

 夕方の手紙が来ていないか門先まで来て思わず独り言が出た。
 ちょっと前までだとこの時間だと陽が落ちてたのに、今はそんなこともなくまだ空は明るい。
 そんなことを思いつつも門先の郵便受けを見ると手紙が1通入っていた。宛名は私。裏を見ると差出人はない。ただ手紙の封は見た事のある紋が押されている。どこで見たか思い出せない。とりあえず誰かに聞こうかと思って外にいることの多いアレンを探してみるけど見当たらない。仕方ない、ホリナに聞こう。

 ホリナはすぐに見つかった。この時間は大体厨房にいて今日の夕飯の準備をしているからだ。
 厨房からは鼻をくすぐるハーブの香りが漂ってくる、何かを焼いて、油が弾ける音もしている。恐らく魚の香草焼きが今日のメニューかもしれない。
 そんな香りを放つ厨房へ私は吸い込まれていった。

「いい匂いね。今日も夕飯が待ち遠しいわ」
「お嬢様、部屋で待って置いてください。ここまで来るなんてはしたない」
「つまみぐいに来たんじゃないの。聞きたいことがあって」
「聞きたい事?」

 誤解を解きつつホリナに手紙を見せた。

「誰から来たのか分からないの。開けても大丈夫かしら?」

 ホリナの手紙を見る目は冷たい。そして私を見る目もなんだか冷ややかに感じる。

「お嬢様、今日は体調が悪いみたいですね。夕飯は軽くしてすぐにお休みになった方がいいみたいですね」
「えっ? なんで?」

 いきなりの言葉にびっくりしてしまう。私そんな変な事を言ったのか。関西弁も出ていないはず。なんなのだろうか。

「自分の家の家紋を覚えてないはずがないでしょう。これはご両親宅からのお手紙ですよ。今までもそうだったじゃないですか」

 言われたら思い出した。この家紋は玄関先に飾ってたり、広間に飾ってある家紋だった。厨房に来るまでにも目にする機会はあったのに全然気にしていなかった。立場が逆だったら私も当然ホリナのような反応になるわ。

「あー。紋が潰れてて分かりづらかったの! なるほどねー。ありがとー! 夕飯楽しみに待っておくわねー」

 その場をごまかして厨房を慌ててでる。このままじゃ本当に病人扱いされてあのおいしそうな夕飯を食べることが出来なくなってしまいそうだったから。
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