悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

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ガルド城の秘密

第86話-炎と拳-

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 さっき俺がいた所から激昂したような声が聞こえてくる。
 時間を稼ぐようにとは言ったけど少し不安だ。
 だけど今は目の前のこいつに集中だ。

「一対一なら勝てると思ったか? むしろ逆だったな」

 上がった息を整えるために攻撃の手を止めたがその間に距離を取られた。
 逃げに徹されるとこっちの方が先にバテちまう。
 さらに距離をとってぐちぐちと言ってくる相手に対してはひたすらに不快感しかわかない。

「お前らみたいなやつはぶん殴ってさっさと黙らせてやりたくなるよ」
「えらく乱暴な物言いだな。我々に恨みでもあるのか?」
「ないと言えば嘘になるな。でも1番の理由はそんなんじゃねぇよ」
「だったら死んだ時に1番の理由を恨め」

 男が懐から何かを投げた。
 黒い円球。投げて来たと言っても速度を武器にしたものじゃない。
 まず目に行くのはその円球に着いた火の導線。
 投げられた円球は俺の目の前に着地する軌道で宙を舞う。

「爆弾かよ!」

 頭で理解して身体をその場から遠ざかる。
 さっきまでいた場所あたりで起爆した。
 音と共にその場にあった小石などが飛んでくる。避けられない。致命傷になる顔面を腕で覆って爆発の余波から身を守る。
 俺から距離をとった理由、そして最初に言った逆という言葉の意味が分かった。
 爆弾なら1人の方が戦いやすいだろうな。

「今はただの爆弾だ。だがそれももう少しで本当の魔法になるかも知れないなぁ」

 次に投げて来たのはさっきの爆弾じゃなかった。何かの粉のようなものを撒いた。
 続けて懐から取り出したのは火を付けた木だ。小さな松明のようなものをまたさっきのように投げた。それが地面に落ちると火が地面に燃え広がった。

「これが火の魔法だ」

 得意げに言う男の顔が憎たらしい。
 
「ただの手品みたいなもんだろ!」

 今すぐにでも殴ってやりたいが目の前の火が邪魔をする。
 
「さっきのはどうせ可燃性の液体かなんかを砂に染み込ませて引火させただけだ」
「なかなか察しがいいじゃないか。だがそれを本物にするための技術がここに眠っている。だからそれが欲しいのさ」

 ここまでの相手の動きから近接はそこまで得意じゃないと見た。距離をとって爆弾と炎でじわじわとこっちを削いでくる。思った以上に面倒くさい。
 爆弾を投げた隙に近づくのが良さそうだが、それをすると背後から飛んでくるものをモロに受けることになる。
 それを受けないためには爆発物から距離を取るしかない。つまり俺と相手の距離を今より開けて爆弾を投げた後に広がった距離を詰めるしかないわけだ。そしてそのまま近距離の肉弾戦で一方的に倒す。
 チャンスは一回だ。作戦を悟られたらひたすらに距離を取られてじわじわとこっちが削られる。それに時間が経てばユリ嬢達の方も危ない。

「ほら、どうする」

 また手元から爆弾を取りだして投げてくる。しかも今度は地面で燃えている火の中に投げ込んだ。
 すると眩しい光と共にまた爆弾が弾けた。さっきよりも爆発のタイミングが早い、さらに威力も高い。
 火に触れて破裂までの時間が短くなったのと、熱されて威力が増したらしい。

「ちっ!」

 爆弾が火の中に飛び込む一瞬前に上着を脱いで自分の前にかざした。
 爆発音とほとんど同時に石などが飛んでくる。それを上着を壁にして凌ぐ。
 上着の面積外から飛んでくるものはあるが致命傷にはならない。なんなら腕で頭を防ぐよりも痛くもない。
 上着を一振りして土煙を吹き飛ばした。
 密閉空間で煙が立ちこもって視界が確保しにくい。
 こいつの爆弾のせいで明かりが落ちていないことがまだ救いだ。明かりがなくなれば近接に持ち込むことが難しくなる。
 土煙を払うと追加の爆弾がこっちに向かって投げられていた。
 手元から投擲された爆弾は見えるだけで3つ。
 それが今度は自分に目掛けて投げられていた。山なりに飛んでくる爆弾2個と直線距離で真っ直ぐ飛んでくる爆弾。
 1つが弾けると残りの2つが連鎖する様に俺の視界の中で誘爆した。
 
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