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ガルド城の秘密
第115話-フランソワとルシア-
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「乾杯ー!」
私達は舞台から降りて下の会場へと降りてきていた。
豪華な食事が並べられたテーブルの上はまるで宝石箱のような輝きが広がっている。
そんな料理達を傍目にしながら私は家族と祝いの乾杯をしていた。
フランソワの家族だけでなく、隣にはユリの家族もいる。それ以外にもルシア夫妻、バレルさんも居て、この3日間のオールスターが揃っていた。
「でもあなた達ほんとに欲がないわね。私ならめちゃくちゃな要求をしてる自信あるわ」
そうぼやいたのはルシアさんだ。
ワイン片手に喋る彼女は元が綺麗なこともあってとても絵になっている。同性の私から見ても大人の色気がある。
「いざとなると難しいものですので」
笑って誤魔化す。そりゃ本当の所であれば欲を言えばキリがない。だけど、その場面に実際立つと面子の事もあって無茶は言えないものだ。
「それであの願いかぁ。まぁそれもいっか」
私の願い。それは「この城の資料室への自由な出入りの権利」だった。
お金で買えるものでなく、思いついたのはこれだった。
ここの資料室は少し入っただけだったけど、かなりの資料があった。
私の今後も含めて考えて出入りができるようになっていても損はない。
ガルド公も「なんじゃ、そんなことか?」と言っていたけど、電話のないこの世界では確認を取るのも億劫で仕方ないから便利な権利だと思う。
「知識は身を救うかも知れませんので」
「言われてみればそうよね。言う通りだわ。それと私はユリちゃんの方も感動したわ。自分の願いをお兄さんのために使うなんてね」
ユリは結局新しい願いを聞かれた時に出したのは「兄のガルド領内での自由な商業権」だった。
兄は駆け出しでまだまだ販路と人脈を広げていきたい。そのための手助けがしたいと言う願いをガルド公は何も言わずに了承してくれた。
「私も子どもが出来たらあなたたち見たいな優しい子が育つように努力しないとね」
「頑張って下さい。ルシアさんならきっと大丈夫」
「褒め上手でほんと可愛いわ貴方」
ルシアさん、見た目は派手で初対面はやばいと思ったけど、中身はめちゃくちゃいい人だ。私も逆に見習いたいくらい。
「でももう少しでまたお別れね。来年また会えるの楽しみにしておくわ」
「そういえばルシアさんって住んでる所遠いんですか?」
「結構遠いわよ。だから仕事しながらじゃなかなかこっちに来れないのよ。去年も遊びに来てとは言ってくれたけど行かなくてごめんね」
「いえいえ、お仕事ですもの仕方ないですよ」
むしろフランソワがそこまで懐いてたのがまたまた驚きで仕方ない。私の知ってるフランソワとは違うんだと改めて思う。
「自分で言うのもなんだけど、私は派手目が好きでさ。だから割と浮くのよね、だけど貴方は話しかけてくれた。きっかけは香水だったけどさ。それでも去年貴方と話して、また会えると思ったから楽しみに来たのよ」
「そこまで言ってもらえると照れますよ」
ワインをテーブルに置いて両手で私を包んだ。
アルコール独特の香りがルシアさんの吐息と一緒に流れてくる。
一瞬呆気に取られたけど、私はルシアさんの背中に手を回した。
きっとフランソワもそうしたと私は思ったから。
「またね。フランソワ」
「はい。ルシアさんもお元気で」
お互いの体から手を離して顔を見合わせてお互い笑います。
「なんだ。酔ってるのか? 飲み過ぎだぞ」
旦那さんがルシアさんを後ろから嗜めた。
この人はこの人で見た目めちゃくちゃ怖い。だけど知っているこの人は見た目通りの人じゃないことを。それがこの3日で学んだことの1つ。
「女同士の別れよ。いいじゃない! ねぇ、フランソワ?」
「そうです! 私はルシアさんを堪能してましたので!」
「そ、それならいいんだが」
私達の冗談にたじろぐ旦那さん。
そんな私達の楽しい時間はどんどん過ぎていくのだった。
私達は舞台から降りて下の会場へと降りてきていた。
豪華な食事が並べられたテーブルの上はまるで宝石箱のような輝きが広がっている。
そんな料理達を傍目にしながら私は家族と祝いの乾杯をしていた。
フランソワの家族だけでなく、隣にはユリの家族もいる。それ以外にもルシア夫妻、バレルさんも居て、この3日間のオールスターが揃っていた。
「でもあなた達ほんとに欲がないわね。私ならめちゃくちゃな要求をしてる自信あるわ」
そうぼやいたのはルシアさんだ。
ワイン片手に喋る彼女は元が綺麗なこともあってとても絵になっている。同性の私から見ても大人の色気がある。
「いざとなると難しいものですので」
笑って誤魔化す。そりゃ本当の所であれば欲を言えばキリがない。だけど、その場面に実際立つと面子の事もあって無茶は言えないものだ。
「それであの願いかぁ。まぁそれもいっか」
私の願い。それは「この城の資料室への自由な出入りの権利」だった。
お金で買えるものでなく、思いついたのはこれだった。
ここの資料室は少し入っただけだったけど、かなりの資料があった。
私の今後も含めて考えて出入りができるようになっていても損はない。
ガルド公も「なんじゃ、そんなことか?」と言っていたけど、電話のないこの世界では確認を取るのも億劫で仕方ないから便利な権利だと思う。
「知識は身を救うかも知れませんので」
「言われてみればそうよね。言う通りだわ。それと私はユリちゃんの方も感動したわ。自分の願いをお兄さんのために使うなんてね」
ユリは結局新しい願いを聞かれた時に出したのは「兄のガルド領内での自由な商業権」だった。
兄は駆け出しでまだまだ販路と人脈を広げていきたい。そのための手助けがしたいと言う願いをガルド公は何も言わずに了承してくれた。
「私も子どもが出来たらあなたたち見たいな優しい子が育つように努力しないとね」
「頑張って下さい。ルシアさんならきっと大丈夫」
「褒め上手でほんと可愛いわ貴方」
ルシアさん、見た目は派手で初対面はやばいと思ったけど、中身はめちゃくちゃいい人だ。私も逆に見習いたいくらい。
「でももう少しでまたお別れね。来年また会えるの楽しみにしておくわ」
「そういえばルシアさんって住んでる所遠いんですか?」
「結構遠いわよ。だから仕事しながらじゃなかなかこっちに来れないのよ。去年も遊びに来てとは言ってくれたけど行かなくてごめんね」
「いえいえ、お仕事ですもの仕方ないですよ」
むしろフランソワがそこまで懐いてたのがまたまた驚きで仕方ない。私の知ってるフランソワとは違うんだと改めて思う。
「自分で言うのもなんだけど、私は派手目が好きでさ。だから割と浮くのよね、だけど貴方は話しかけてくれた。きっかけは香水だったけどさ。それでも去年貴方と話して、また会えると思ったから楽しみに来たのよ」
「そこまで言ってもらえると照れますよ」
ワインをテーブルに置いて両手で私を包んだ。
アルコール独特の香りがルシアさんの吐息と一緒に流れてくる。
一瞬呆気に取られたけど、私はルシアさんの背中に手を回した。
きっとフランソワもそうしたと私は思ったから。
「またね。フランソワ」
「はい。ルシアさんもお元気で」
お互いの体から手を離して顔を見合わせてお互い笑います。
「なんだ。酔ってるのか? 飲み過ぎだぞ」
旦那さんがルシアさんを後ろから嗜めた。
この人はこの人で見た目めちゃくちゃ怖い。だけど知っているこの人は見た目通りの人じゃないことを。それがこの3日で学んだことの1つ。
「女同士の別れよ。いいじゃない! ねぇ、フランソワ?」
「そうです! 私はルシアさんを堪能してましたので!」
「そ、それならいいんだが」
私達の冗談にたじろぐ旦那さん。
そんな私達の楽しい時間はどんどん過ぎていくのだった。
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