悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

騎士と派閥と学園生活と

第120話-久々の登校-

　いくつもの馬車が止まっている。その中の１つに私はいる。
　周りの馬車から降りてくる人達はみんな男女の違いはあれど同じ制服を着てはいるが、髪や簡単な装飾品によって個性を出している。

「それではいってらっしゃいませ」
「ありがとうホリナ。行ってくるわね」

　ガルド城への道のりと比べると非常に短い馬車の旅を終えて私は地面へと足をつけた。
　目の前に広がるのは大きな西洋門。既に見慣れた門を久々に見た気がする。
　2週間もの長期休みを経て登校する学校はいかんせん新鮮だ。
　むしろ2週間しか空いてない割には半年以上もきてなかった気さえする。

「アリスもユリィもアンもみんな元気にしてるかしら」

　クラスメイトに顔を合わせるのが楽しみで心の中を口に出してしまう。
　周りから妙に見られている気もするけど、気にしない。
　独り言のせいなのか、それとも私の制服がどこか汚れているからのせいかもしれないけど、ホリナが何も言わなかったのであれば問題ないはずだ。
　周りの目を気にすることもなく、私は自分の教室に向かって歩き出す。


　校舎に入ってからもどことなく視線を感じるような気はした。

（気にしすぎか。自意識過剰みたいじゃない）

　教室に入って真っ先に探したのはユリィ。
　今思えばユリとほとんど名前が一緒なのよね。同じ場所にいる時に名前を呼んだら2人とも反応しそう。なんてことを考えてしまう。
　ユリィの席に座っているのは紛れもなく、私の探してる相手だった。

「おはよう！　ユリィ！」
「フランソワ様、おはようございます。お元気そうで何よりです」
「会いたかった～。顔見れたら一層元気になったわ！」
「まぁ、嬉しいことを言ってくださりますね」

　微笑むは姿はなんとも可愛らしい。
　ゲームでは嫌味な役が多かったけど、いまではもうそのイメージはない。
　
「休みの間のことたくさん話したいことがあるのよ。アンとアリスはもう来てた？」
「お噂は聞いておりますよ。大変ご活躍されたとか。2人の教室に入るとまだ行っておりませんので分かりません」
「そうなの。それなら今からいきましょう。って噂ってなんのこと？」

　噂とは何のことか。勢いでスルーしてしまいそうなったけど、聞かずにはいられなかった。

「ガルド城のパーティーでそれはもうそれは大層ご活躍されたとか」
「そんなことが噂になってるの！？　そもそもついこの間のことなのに早すぎるわよ……」

　あまりの噂の広がりぶりに若干引いてしまう。
　今朝から感じていた視線はこのことが原因なのかも知れない。

「横のつながりも広い世界ですので。でも良いお話ではございませんか。私は嬉しかったですよ」
「まぁ悪い気はしないけどさ。なんか目立つの恥ずかしいのよね」
「フランソワ様は隠れて生きる方が難しいと思います。それだけ素晴らしい人ですので」

　その場の空気と高揚感でユリを近衛騎士にしたりもしたけど思い返して見るとめちゃくちゃ目立つ事をしてたんだなと恥ずかしくなってくる。

「このお休みの間で近衛騎士まで決められたとは流石です。是非お話を聞きたいです」
「私もみんなの話が聞きたいの。今日のお昼休みが楽しみで仕方ないわ。だから、とりあえずアンとアリスの顔を見に行って見ないかしら」
「ええ、もちろんご一緒致させて頂きます」

　恥ずかしさを頭の中から一旦払拭するために話を切り上げてアンとアリスの所へ向かう提案をした。
　久々の友達に会うことがこんなにも楽しみなのはいつぶりの気持ちだろうか。
　私はユリィを連れて隣の教室に向かった。