悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

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騎士と派閥と学園生活と

第121話-噂の見方-

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「おはよう。アンにアリス。顔を見れて私嬉しいわ!」
「大袈裟ですフランソワ様。ねぇアリスさん」
「本当に。そんな日にちも経っていませんのに」

 教室に入るなり2人を見つけた。アリスの机の所に2人が居て楽しそうに話をしていた所に私が声をかけた。
 2人とも変わらず元気そうで安心する。

「2人で何を話してたの?」
「私もアリスさんも今来た所ですので、2人でフランソワ様に会いに行こうかと話をしていた所でした」
「そしたらフランソワ様から来て頂けたので驚きました」

 2人は息があったように互いに頷く。
 最初の関係性から思い付かないほどの息ぴったりさだ。

「そうだったのね。ならちょうど良かったわ。2人に早く会いたくて来ちゃった」
「私も是非フランソワ様から噂の話を聞きたくて仕方ないですわ」

 アンは笑いながら目を輝かせていた。
 私はさっき頭から飛ばしたはずの恥ずかしさがまた浮かんでくる。

「噂って何ですか?」

 アリスの反応は新鮮なものだった。
 首を傾げるように疑問を投げるアリスは見るもの全てを虜にするような可愛さだ。現に私は虜になっている。

「フランソワ様がガルド公のお城で大活躍された話ですのよ」
「それは失礼致しました。私の家は田舎な方なので、噂が回ってくるのが遅くて」
「いいのよ。むしろそっちの方がいいわ。私も恥ずかしいし」
「是非そのお話聞いてみたいです」
「私からお話しましょうか! フランソワ様の大活躍のお話を!」

 アンは自信満々と言った顔でアリスに迫る。
 いやいや、アリスも食い入るような顔で前のめりにならないで。見てるこっちが恥ずかしくなる。

「おい、邪魔だ。通れないだろ」

 横からの一声で私達の会話は途切れた。
 苛立ちを隠すことのない言葉は紛れもなく私達に向けられていた。
 今の立ち位置を見直して、私達が通行の邪魔になっていることは明らかだった。話に夢中になっていて周りに目を向けていなかった。

「ごめん。今退くわね」

 謝罪の言葉を一言伝えてから道を譲る。言葉の主はため息を吐きながら自分の席と思われる場所に座った。

「自分の噂で持ちきりだからっていい気になってるんじゃないか。周りを見ろよな」
「確かに私が悪かったけど、その言い方は酷くない?」

 間違いなく私達が悪いから何を言われても黙っていようと思ったけど、その言葉には黙っていられなかった。流石に言い方が酷い。

「そう思うなら道を塞がないでくれよ。困るんだ」
「だから私が悪かったって言ってるじゃないの。ってあなた見覚えがあるなって思ったら前にアリスをナンパしてた人か」
「名前ぐらい覚えておけよアゴン=リーゾルだ。それにナンパなんかしてない」
「いやいや、あれをナンパと呼ばずになんて呼ぶのよ。まぁいいや、でも道を塞いでたのは私が悪かったから良いけど、その後の言葉は流石に控えた方がいいと思うわ。誰にでもね」

 私の言葉を聞いているのか聞いていないのか分からないけど特に反応はない。

「噂になるほどの大活躍で浮かれていると思ってたからさ。悪いな」

 言葉の撤回をする気はないらしい。悪びれる気持ちも微塵も感じない。
 ただ、何よりその言葉は私の琴線に触れた。これだけは訂正してもらわないと気持ちが収まらなかった。

「言っておくけど私はその噂みたいに活躍なんかしてない。それはちゃんとアリス達にも正直に言うつもりよ。私はたまたま運が良かっただけ、私と一緒にいた人達がすごくて、身体を張ってくれたの。だから私は浮かれてなんかいないわ。それだけは間違えないで」

 気がつくと掴みかかるような距離にまで詰めて彼に言葉を浴びせていた。
 その光景を見た周りからは小さな声で何かを言われているような気がする。言葉は聞き取れないけど、きっと私達のことだと思うのは正直女の勘でしかない。

「わ、分かったよ。悪かったな」

 その言葉はさっきと違って適当な言葉という感じはしなかった。
 ただ、悪いと思ったからというよりかは私の態度にびっくりして出た言葉の方が強い気がした。

「私もごめん。そういうことだから。ユリィ、戻りましょ。みんなごめんなさい」

 我にかえって教室の人に騒がせてしまったことに対してのお詫びを告げた。私はなんだか居た堪れなくて教室から逃げるように自分の教室へと戻った。
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