悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

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騎士と派閥と学園生活と

第152話-貴方と私は違います-

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「分かりました。でもそれはたまたまですよ」
「何がよ……。注目の近衛騎士候補を正式に近衛騎士にして、総長に目をかけられて。何がたまたまよ。領主の娘ってそれだけで有利なのよ。私は家柄じゃ勝てない。せめて年齢だけでも私を敬って下について来なさいよ!」

 無茶苦茶な事を言い出した。人間ここまで清々しくダメになれるものなのかと感心するしかない。

「とりあえず一旦私についてきてください」

 先輩の手を取ってそのまま校舎に沿って人気の無い所に移動した。
 人通りがちらほら見えてきた事もあってお互いに話しにくいと思ったからだ。それに側から見たら私が上級生を泣かせそうになっている様にしか見えなさそうだったからと言う理由もある。

「何よ、こんなとこまで引っ張って来て」

 あまりこっちの意図は理解していないらしい。私としては恩を売る気もないないから説明はしない。

「さっきの言葉の家柄だとかなんとかって言ってたの私はそんなのかざした事はありませんよ」
「貴方が口にしなくても周りは貴方をそう見るのよ、そんなのも分からないの!」

 また口調が強くなる。
 確かにその意見は私は見落としていた。いや、見ないふりをしていたのかも知れない。

「先輩は凶器を持った盗賊に石を投げた事はありますか?」
「何よそれ……そんな馬鹿な事あるわけないじゃない」
「魔法信者とやらに殺されそうになった経験は?」
「何が言いたいのよ!」
「私はそれを経験しました」

 先輩の口は何かを言おうとして空いたけど、口から言葉が出てくる事はなかった。

「最初のはアルが私の近衛騎士になってくれた出来事です。次のはガルド城での出来事でした」
「そ、そんなの……」
「嘘じゃないですよ。表向きにはなってませんけど。調べてもらって結構です。ガルド公あたりにでも私と一緒に聞きに行きますか?」

 答えはなかった。

「たまたまと言うのは『たまたま生き残れた』って言うだけです。下手をしたら私はもう死んでたと思います。だから私は今の状況を家柄が全ての理由だとは思いません」

 先輩は俯いたまま顔を上げない。だけど身長が向こうの方が高いからどんな顔をしているかは少しだけ見えてしまう。

「ガルド城に行けたのは家柄のことかも知れません。だけど、行っただけで、何もなかったら今の私はないんです。だから、それだけはわかっていて欲しいです」
「……それは……本当なの?」
「本当です」

 先輩は私の言葉を聞いて笑い出した。だけど、単に笑っているだけじゃない。そこには泣いている彼女がいた。笑いながらも涙を流して泣いている。

「馬鹿みたいじゃない……。私は貴方が羨ましかった。私が高望みをしてた近衛騎士を側につけて、総長の目にほとんど止まらない程度の私を差し置いて、総長に直々に誘われて」

 さっき聞いた言葉と内容は同じでも込められている感情は全く違った。
 怒りじゃなく、羨望でもない。私が受け取った感情は自虐だ。

「私と貴方は家柄だけでも、年齢だけでもない。根本から違ったのね」
「もちろん私と先輩は違いますよ」
「それが分かったわ。私は今のまま、変わらず生きていくしかないのよ」
「だったら今からでも遅くはないんじゃないですか?」
「今から…?」

 私はこの人を助ける気持ちはなかった。打算的だったとは言え、売った恩の意味も気にせず私に向かって来たこの人は放っておくつもりだった。
 だけど、気づけば自然と口から先輩を励ます言葉が出ていた。

「アルはもちろん手放せません。だけど、これからまだまだ人生は続きます。だから、これから頑張れば良いんです。でも、馬鹿な事してる私が言うのも何ですけど、命は大事にしましょう」
「貴方……年下とは思えない事を言うのね。人生達観しすぎじゃないかしら」

 勘が鋭い。けど最後の言葉は余計じゃないかとモヤモヤする。

「でもありがとう」

 「ありがとう」先輩からそんな事を言われるとは思いもしなかった。
 感謝の言葉を言った先輩の顔は少し目が腫れていたけど、顔が元から整ってる分すごく綺麗に見える。憑き物でも取れたみたいだ。

「貴方からそんな言葉を言われるとは思ってなかったわ。不満をぶつけた相手から励まされるなんて。本当……だめな私」
「先輩……そんな事な……」
「フローリア=コーナ。周りからはフローって呼ばれてるの」
「えっ?」
「私の名前よ。フランソワ」
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