悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

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嵐の来訪者

第219話-犠牲にする価値-

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 苦悶に満ちた表情を浮かべる目の前の人物、それでも視線だけは鋭くこちらを向いている。こちらの動きを逃さない。

「一歩間違えばお前の腕が折れていた……」
「それならそれまでだな。でもその場合最悪お前の腕も道連れにしてたさ。それがたまたま上手く行っただけさ」
「狂ってるぞお前……」
「自分の腕を犠牲にしてでも俺の役目を果たさないと行けないんだよ」
「さっき見つけた男はそれだけ価値があるのか?」
「あの人にじゃない。あの人が助けたい人に、それだけの価値があるんだ。自分の腕を犠牲にするかも知れない賭けをするぐらいのな」

 賭けには勝った。まぁ腕が折れる覚悟はしていたが。
 
「もう降伏してくれ。折れた腕じゃどうにもならないだろ」

 返事はない。無言が返事らしい。

「降伏する気がないなら、痛い時間が長くな……」
「降伏するはずがないだろ!!」

 そう言って後ろに走り出す。目の前には大きく太い樹が聳え立っている。放っておけばさっきの様に逃げられる。これが何かしらの意図に基づく罠でも放ってはおけない。後を追う様に走り出しす。
 勢いをつけて木の幹に足を掛けた相手を見てどこか違和感を感じて足を止めた。
 それは同じ戦い方をしていたからこそ感じ取れた違和感。その違和感は結果として現れる。
 さっきと違って木を登り切る前に勢いが失速していく。それが自分でも分かっているのか体勢がぎこちなくなっていく。
 考えてみれば簡単だ。腕が折れた状態だと身体の軸がぶれる、そして痛みで走る勢いが乗り切っていない。
 結果として登り切る前に幹から足が離れた。ただ樹を蹴りこっちに突っ込んできた。
 上空からの攻撃、こちらはそれを素直に受け止める意味もない。足を止めた場所から下がって着地同時に攻撃を仕掛けた。
 折れた腕に当てないよう、反対方向からの蹴りは防御の体勢を取らせる事もなく直撃、そのまま地面に仰向けで倒れ込んだ。

「もういいだろ。腕の処置をするから大人しくしてくれ」
「ふ……ざ……けるな、俺はウェルズ様の所に……」

 言葉も満足に言えない状況でも諦めていない。額に汗が滲んでいる。こっちがさせた怪我とは言え、これ以上は放っておかない方が良い。

「悪い。我慢しろよ」

 腹部へ垂直に渾身の力を込めた拳を振り下ろした。
 地面に倒れた標的は口から空気を吐き出す、それを最後に力が抜け、目を閉じた。呼吸は一定のリズムでしている。綺麗に意識を飛ばせた。
 とは言ってもすぐに腕の痛みで目が覚めるだろう。

「せめて処置の間は寝ててくれよ。さて、こっちは役目を果たしましたよ。そっちはお願いしますよ先輩」

 自分を頼ってくれた先輩が上手くいくよう願った。
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