悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

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新たなる始まり

第294話-誰の騎士か-

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 張り詰めていた空気がヤンの一言で弾けた。
 私もユリィもどうしたものかと目を合わせた。私なんて不穏な空気を察して、手が出そうになっていたのをどう戻したものかと内心焦っている。

「どう言うこと?」
「今言った通り」

 さっきまでの表情が嘘の様にあっけらかんとしているヤンの頭を軽く叩いた。

「痛えな。今言った通り俺の仕事は終わり」
「何がしたかったの?」
「フランソワは表向きにはさっき言った通りに俺にあんたらを殺せって言って来たんだだけどな」
「表向きですか?」
「そう。そうせざる得なかっただけさ。だから俺をその仕事に選んだ。俺も都合良かったしな」
「とりあえず説明して、少なくとも私はよく分かってない」
「私もです」

 ユリィも手を上げた。

「命令は出たけど元々それを遂行させるつもりはなかった。時間かけて、適当に誤魔化すつもりだった」
「そんなの出来るんですか?」
「まぁ極端な話、あんたらが活動やめて、処理しましたって言ったら終わる話だしな。もちろんもうソボール領内は迂闊に動けないだろうけど」
「そしたら裏向きって?」

 ヤン曰く今のが表向きの理由。つまり裏側の秘密の命令があるはずだ。

「あんたらを手伝えってさ」
「「えっ!?」」

 ユリィと一緒のタイミングで驚いてしまう。まぁ仕方ない。

「追うふりして、そのまま手伝いさ」
「それならそうとさっさと言ってよ。なんなのよさっきの芝居は!」

 さっきまでの重苦しい空気を作り出す必要などあっただろうか。いや、ないはずだ。
 ヤンを叱る様に言ってしまう。

「あれは俺が聞きたかった事だ。その回答次第じゃ、俺としてはこっからの行動どうするか考えないといけなかったしな」
「それってどう言う事?」
「それで、私の答えは……?」

 ユリィは恐る恐るヤンに聞いた。
 さっきの凛々しいユリィとは少し違って少し怯えている様な気がする。
 私の視線から心の内を読み取ったのか「さっきは空気にあてられて……」と誰かに向かって弁解していた。

「まぁいいだろ。俺もそれなりには納得した。とりあえずフランソワに敵意がないしな」
「あ、当たり前です!」
「その当たり前ってのはこっちじゃ分かんないんだよ」

 そりゃそうだ。人の心は周りには分からない。当たり前だ。

「そしたら手伝ってくれるの?」
「そうだな。ただし、フランソワの命令じゃない」
「何で?」

 ヤンの視線が私を食い入る様に向けられて来る。

「俺は誰の近衛騎士だ? フランソワ=ソボールか? 違うよな。俺が剣を捧げたくなったのは……」

 ヤンが何を言いたいのか察してしまう。だけどそのセリフを私が口にするのは出来ない。恥ずかしすぎるから。

「あんただよな。お嬢」

 どこかフランソワへの呼び方がおかしかった違和感の理由が分かった。










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