悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

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新たなる始まり

第305話-風雲告げるイゾール領-

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 屋敷の方が慌ただしい。こんなにもバタバタしているのはいつ以来だ。
 外にいても分かるのは屋敷の入口側から声が上がっているからだ。そして屋敷の窓から見える屋敷内は守衛と使用人が走り回っている。
 
「なにかあったのかしら?」

 気づいていたのは俺だけじゃなくて、お嬢を含めた全員が異変に気づいていた。

「ちょっと聞いてきますのでここにいて下さい」
「いや、私が行くわ」

 お嬢が率先して動くせいで結局俺たち全員が屋敷の中へと戻る事になった。

「どうかしたの?」

 廊下を走っていた守衛を一人捕まえて、お嬢が聞いた。

「フランソワお嬢様! 私の口からはなんとも言いにくいのですが……」

 対応に困った守衛がこっちに視線を送ってくるが俺は見なかった事にした。俺も気になっているんだから。
 他のメンバーにも視線を送ったように見えたが、助け舟は誰も出さなかった。

「いいから」

 お嬢が問い詰めるように迫った。

「領地内の町に賊が出たと伝令があり、ただいま伝令者の手当、対応に追われている所であります」

 言葉尻がどんどん弱くなっていきながらも、現状を簡潔にまとめてくれた。

「それでは失礼致します」

 去り際のあいさつだけは元気よく、向かっていた方向へと急いで駆け出した。

「賊が出たにしては騒ぎようがでかい気がしますね」

 ユリの言う通りだ。たかが賊にしては騒ぎがでかすぎる。もちろん蔑ろにしているわけじゃない。混乱している時だからと言うのも理解はしているつもりだ。

「単に賊って話じゃないのかもしれないっすね」

 その考えにはこの場にいる全員が頷いた。

「だったら分かる人に聞けばいいのね」

 お嬢がそう言って向かった先は見慣れた大きな扉がある部屋。いかにもお偉いさんがいる部屋だ。
 もちろんここに誰がいるかは知ってる。

「お母様、賊が出たと言うのは本当ですか?」

 現在混乱の領内を鎮めるために駆け回っているお嬢の父親の代理である、お嬢の母親だ。
 お嬢の姿を見ていつもなら嬉しがる母親なのは知っているが、今日は反応が違った。

「その通りよ。それだけだから貴方は気にしないで」

 距離を置くような言い方。その反応からただの賊騒ぎじゃないのは明白だった。

「それだけなはずありません。この騒ぎですよ。明らかに異常です」
「でも貴方には……」
「関係あります。私はお母様とお父様の娘ですから」

 お嬢としての責任感なんだろう。ただ、今はそれが正しく機能しているかは怪しい。むしろ母親としてはありがたくない反応だろうに。

「隣の領地との境目であるダガマの町に賊が出ました。ただ、その賊は町の守備兵では敵わず、現在住人を追い出し、さらには殺害し町を占領され、近隣の町へも被害を拡大させようとしているそうです」

 お嬢の引かない態度に諦めたように話し出す。
 話の内容的に聞いたことない。賊が町に住み着くことはある。ただ、ひっそりとだ。町を占領するなんてのは賊側にはメリットがない。

「現在領主である貴方の父は出払っており、まとまった人間も出せません。伝令は既に走らせています。ただ、襲われている町への被害は抑えられないわ」

 言い切った。それを口にするのは冷静だからだろう。本来なら領主としては守らないといけない場所を助けきれないと言う判断。簡単には言い切れないはずだ。
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