僕が先に好きだったけど、脳破壊されて訳あり美少女たちと仲良くなったので幼馴染のことはもういいです

みずがめ

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53.ハマりすぎにはご用心

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 僕は同年代の男子の中でも、背が低い方だ。
 それに筋肉も薄いのだろう。だから後輩の女子にメイドをやらされるハメになったんだろうし。僕がマッチョだったら、そんな選択肢もなかったはずだ。
 自分の肉体の貧弱さにコンプレックスを抱いていなかったわけじゃない。
 それでも今まで、大して何もしてこなかった。
 それを最近、怠慢だと思うようになった。
 いつも城戸さんや松雪さんに守ってもらうだけではダメなのだ。なんかこう……悔しいのだ。
 僕が彼女たちを守れるようになりたい。
 後悔をしないために、そんな自分になりたいと思った。

「よ、よろしくお願いします!」
「うんうん、楽しんでいこうね」

 母さんに頼んで、ボクシングジムに入会させてもらった。
 我ながら思い切ったことをしたと思う。
 でも、二年の僕が今更学校の運動部に入るわけにもいかないし、スポーツジムは通うのに遠い場所にしかない。
 丁度いい距離にあって、身体を鍛えられそうなところが、このボクシングジムだったのだ。

「まずはストレッチをしていこうか。それから縄跳びをしていこうね」
「はい!」
「最近の若い子は元気いいなぁ」

 ボクシングジムはもっと怖いところかと思っていたけど、僕についてくれたトレーナーのおじさんは優しかった。
 自分で筋トレをしようと試みたことはあったけど、あまり長続きしなかった。こうやって教えてくれる人がいれば、ちゃんと続けられるかもしれない。
 そうすれば僕も筋肉質な身体に……ふふっ。

「へばってんじゃねえ! 休まず打て!」
「ぜぇ……ぜぇ……は、はい……!」

 怒号のような大声に肩を跳ねさせてしまう。
 目を向ければ、息を切らせながらサンドバッグを打ち続ける練習生の姿があった。
 あ、あんなに苦しそうに……。密かにサンドバッグを打ってみたいという好奇心があったけど、厳しい練習風景を目の当たりにすると甘い考えだったかと尻込みしてしまう。

「大丈夫大丈夫。矢沢くんには厳しくしないから、気にしなくてもいいんだよ。あっちはプロを目指している子だからね。矢沢くんはゆっくり楽しくやっていこう」
「プロですか!?」

 サンドバッグを打っている人は、僕とあまり年が変わらないような男子に見える。
 背丈だって、たぶん彼の方が高いのだろうけど、あまり差があるようにも思えない。
 けれど、息を切らせながらもギラついた目や、がっしりとした身体つきからはプロを目指すだけのオーラを感じる気がした。

「す、すごい……」
「矢沢くん?」
「あ、すみませんっ」

 見惚れている場合じゃない。僕も身体を鍛えにきたんだ。

「……」

 彼のようになれたら、僕も頼られる男になれるだろうか?
 あれだけ真剣に練習に取り組める人だ。きっと後悔なんて縁がないのだろう。
 プロを目指している人に失礼かもしれないけれど、あんな風になりたいと羨ましくなった。


  ◇ ◇ ◇


 初日はストレッチに縄跳び、それから筋トレの正しいフォームを教わった。
 そして、パンチの打ち方も。

「シュッ、シュッ、シュシュッ」

 帰宅後。自室で教わったばかりの左ジャブと右ストレートを繰り返す。
 トレーナーのおじさんが「今度はミット打ちしようね」と言ってくれたのだ。今から待ち遠しい。
 格闘技なんて僕には合わないと決めつけていた。
 でも実際にやってみると楽しかった。まあ僕でもできるようにと合わせてくれただけなんだろうけどね。

「これなら続けられそう」

 ベッドに倒れ込み、心地良い疲労感に身を任せる。
 練習を続けてさえいれば、いずれ僕の身体も筋肉質なものへと変わるだろう。

「ふふふ」

 そんな自分を想像すると、頬が緩むのが抑えられなかった。


  ◇ ◇ ◇


 次の日。松雪さんは図書委員の仕事があり、城戸さんもクラスの女子たちに昼食を誘われたとのことで、昼休みは一人となった。
 今日はちょっと筋肉痛もあるし、のんびりできて丁度いいか。うん、全然寂しくないんだからねっ。

「シュッ、シュッ、シュシュッ」

 屋上で食事を終えた後、僕はシャドーボクシングをやっていた。
 まあシャドーボクシングのやり方なんて教わっていないので、ひたすら昨日教わったパンチを繰り返しているだけなんだけども。
 左ジャブ、左ジャブ、左ジャブ右ストレート。
 少しの筋肉痛くらいなら関係ないとばかりに、身体が動いてしまう。
 教わった形を崩さないように集中しながら、パンチを放ち続けた。
 息が上がってくる。腕がだるくなってきたけど、段々様になっているような気がしてパンチを打つのをやめられない。
 集中力が増してきて、周囲の音が気にならないほどだ。

「あ、比呂先ぱ──」
「シュッ」

 仮想敵を追って、振り向きざまに左ジャブを放った。
 すると、ぽにゅんっと。なんとも言えない柔らかい手応えがあった。

「シュ?」

 いつの間にか、僕の前には城戸さんが立っていた。
 そして、僕の左拳は……的確に彼女のおっぱいを捉えていたのだ。
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