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68.僕の脳がおかしいのは睡眠不足のせいだから
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「城戸さんが、僕のことを好きかもしれない……」
そんな風に意識すると胸のドキドキが止まらなくなるわけで……。
そのせいで眠れないまま朝を迎えてしまった。
ぼーっとする頭を叩いて、無理やり覚醒させる。
「城戸さんが、僕のことを……」
それでも考えることは昨日の夜と変わらなくて。どうしようもなく恋愛ごとに思考を持って行かれる。
だって、これまでの人生を振り返っても、僕が女子に好かれた経験なんてない。
むしろ人見知りが激しすぎて、女子と関わりを持てなかったほどだ。
だからこそ美月を異性として好きなのだと錯覚していたくらいなのだから。
そんな僕が女子に好かれる? 正直美月に言われても半信半疑のままだった。
「ポロポロ零さない! ご飯中にぼーっとしない! しっかり食べなさい!」
「ご、ごめんなさいっ」
気づけば朝食中で、母親にぼーっとしているのを怒られてしまった。
いつ食べ始めたかも覚えていないぞ。我ながら集中力がなさすぎにもほどがある。
「比呂、もしかして悩み事でもあるの?」
目に余りすぎるほどぼーっとしていたのだろうか。母さんに心配されてしまった。僕は「なんでもないよ」と答えて朝食を食べ終えた。
いくら僕でも親に恋愛相談をする度胸はない。
しかも恋愛に発展する段階でもないし。いきなり「僕、後輩の女子に好かれてるかもしれない」なんて、聞く人が聞けば自意識過剰にもほどがあると言われてしまってもおかしくないだろう。
そんな風に思われてしまうと考えただけで、ベッドでのたうち回る自分が想像できた。
「いつも通りだ。いつも通りにいこう」
自分の頬をぺしぺしと叩きながら言い聞かせる。
急に何かができるわけでもない。そうそう、そうだよ。きっと何も変わらないんだ。
本当に城戸さんが僕のことを好きだったとしても……して、も……。
「くぅぅ~~っ!」
表現しきれない感情が、お尻から込み上げてきて口から吐き出しそうになる。
もし城戸さんに告白されたらどうしよう……。なんて、そんな自惚れた悩みまで勝手にしてしまう始末。
ちょっと言われただけで自意識過剰になってしまう自分が嫌になる。
「学校行こ……」
頭がぼーっとする。変な考えに囚われてしまうのは、寝不足も原因の一つだろう。
「あっ、おはよう矢沢くん」
「お、おはよう杉藤さん」
いつもの通学路を歩いていると、珍しく杉藤さんに会った。
杉藤さんとは、学校か彼女がバイトしている喫茶店でしか会ったことがなかったから新鮮だった。
かなりの美人さんだし、やっぱり彼氏とかいるのかな? って、いかんいかん。頭が恋愛ごとに支配されてるぞ。
「そういえばなんだけど……」
「え? ええっ!?」
突然、杉藤さんが顔を寄せてくるものだから驚いてしまう。女の子の甘い匂いが、睡眠不足の脳に染み渡る……。
さらに女子に近づかれたためか、心臓が痛いくらいに鼓動してしまった。
最近はなかったけど、なんだか久しぶりの感覚だった。
そうだった。以前の僕は美月以外の女子と話をするってだけで緊張していたんだったな。
「男子の間で謎のメイドさんを探そうって話になっているらしいんだけど、大丈夫?」
「へ? 謎のメイド?」
杉藤さんは周囲に見られないようにしながら、僕にスマホの画面を向ける。
そこに映っていたのは、いつぞやに見た僕のメイド服姿の写真だった。
「これ、メイクして印象が変わっているけれど、矢沢くんよね?」
「……」
普通にバレてる!?
いや、泉くんもすぐに僕だとわかったみたいだし、見る人が見れば簡単に見抜いてしまえるのだろう。
ていうかメイドの正体を探す話ってまだ続いてたんだ……。自然消滅してくれればよかったのに。
杉藤さんに隠しても仕方がないか。僕は観念して小さく頷いた。
「男子の間で変に盛り上がってるから心配になっちゃって。私に何ができるわけでもないのだけど、もし困ったことがあったら相談してね。綾乃ちゃんも味方になってくれるから元気出すのよ」
「は、はい」
なぜかものすごく励ましてもらえた。そんなに心配そうに見えるのかな?
もしメイドの正体が僕だってバレたらどうなるんだろう? よくわからないけど、あまり良い結果にはならないように思えた。
「千夏ちゃんと……矢沢くん? この組み合わせは珍しいな。二人して内緒話でもしてんの?」
背後から声をかけられて、僕と杉藤さんは慌てて離れた。
振り返ればちょっとチャラい外見をした男子。身構えそうになったけど、相手が佐野くんだと気づいて力を抜く。
「べ、別に内緒話をしてたわけじゃ……」
僕の返事に興味がないのか、佐野くんは杉藤さんに近づくと、当然と言わんばかりに肩を抱いた。
「っ!?」
あまりにもあっさりと女子の肩を抱くものだから滅茶苦茶驚いた。もう目玉が飛び出るんじゃないかってくらいびっくりした。
いやいやいやいやいやいや! そんなナチュラルに女子の肩を抱く男子が存在するの!?
文化祭の時はナンパ男から助けるためだったと理解できるけど……今回はそんなイベント起こってないよ?
これが陽キャのノリってやつなのか!? だからって杉藤さんがどう思うかを考えて……。
「も、もうマサくんったら……。こんな朝から人が見てるかもしれないのに……」
満更じゃないだと!?
勝手なイメージなのだけど、杉藤さんのような気の強そうな外見の女子はこういう軽いノリを嫌がるものだと思っていたのに……。頬を赤らめながらも、嬉しさを隠し切れていないのが僕にも感じ取れた。
こ、これが最近の男女のノリってやつなのか? 遅れているのは僕の方なのか!?
「千夏ちゃんってば俺以外の男子と親しそうにしているんだもんよ。心の広い俺でも妬いちゃうぜ?」
「私がマサくん以外の男子とそういう仲になるわけがないじゃない。本当はわかってるくせに」
なんだかイチャイチャしているようにさえ見えてくる……。
こういう場面を目の当たりにすると、自分がいかに陰キャかを思い知らされる。
「矢沢くん」
「は、はい」
二人の世界に入りそうだったので、このまま存在を消して離れようかと考えていたところで佐野くんに声をかけられた。
「メイド姿、似合ってたぜ」
「……」
実はもう学校のみんなにバレてるんじゃないかな……。僕が知らないところで笑ってたりしない?
「冗談はさておき。何かあったら俺も手助けするからさ。気軽に頼ってくれよ」
ニカッと陽キャスマイルを向けられて蒸発しそうになった。
こういうことをさらりと言ってくれるから陽キャ男子を嫌いになれないのだ。佐野くんが眩しくて直視できないっ。
「あ、ありがとう……」
「お? 確かにこういう仕草されると可愛いな」
「マサくん?」
「ち、違うんだよ千夏ちゃんっ。変な意味じゃなくて……ちょっ、待ってくれよー!」
なぜか杉藤さんが早足になったものだから、佐野くんは慌てて彼女の後を追った。
ようやく肩の力を抜ける。二人ともいい人なんだけど、陰と陽の違いのせいかどうしても緊張してしまうんだよなぁ。
「比呂先輩……」
「わっ!? き、城戸さん……」
気を抜いた時に城戸さんが現れたものだから、僕の心臓は再び激しく鼓動したのだった。
そんな風に意識すると胸のドキドキが止まらなくなるわけで……。
そのせいで眠れないまま朝を迎えてしまった。
ぼーっとする頭を叩いて、無理やり覚醒させる。
「城戸さんが、僕のことを……」
それでも考えることは昨日の夜と変わらなくて。どうしようもなく恋愛ごとに思考を持って行かれる。
だって、これまでの人生を振り返っても、僕が女子に好かれた経験なんてない。
むしろ人見知りが激しすぎて、女子と関わりを持てなかったほどだ。
だからこそ美月を異性として好きなのだと錯覚していたくらいなのだから。
そんな僕が女子に好かれる? 正直美月に言われても半信半疑のままだった。
「ポロポロ零さない! ご飯中にぼーっとしない! しっかり食べなさい!」
「ご、ごめんなさいっ」
気づけば朝食中で、母親にぼーっとしているのを怒られてしまった。
いつ食べ始めたかも覚えていないぞ。我ながら集中力がなさすぎにもほどがある。
「比呂、もしかして悩み事でもあるの?」
目に余りすぎるほどぼーっとしていたのだろうか。母さんに心配されてしまった。僕は「なんでもないよ」と答えて朝食を食べ終えた。
いくら僕でも親に恋愛相談をする度胸はない。
しかも恋愛に発展する段階でもないし。いきなり「僕、後輩の女子に好かれてるかもしれない」なんて、聞く人が聞けば自意識過剰にもほどがあると言われてしまってもおかしくないだろう。
そんな風に思われてしまうと考えただけで、ベッドでのたうち回る自分が想像できた。
「いつも通りだ。いつも通りにいこう」
自分の頬をぺしぺしと叩きながら言い聞かせる。
急に何かができるわけでもない。そうそう、そうだよ。きっと何も変わらないんだ。
本当に城戸さんが僕のことを好きだったとしても……して、も……。
「くぅぅ~~っ!」
表現しきれない感情が、お尻から込み上げてきて口から吐き出しそうになる。
もし城戸さんに告白されたらどうしよう……。なんて、そんな自惚れた悩みまで勝手にしてしまう始末。
ちょっと言われただけで自意識過剰になってしまう自分が嫌になる。
「学校行こ……」
頭がぼーっとする。変な考えに囚われてしまうのは、寝不足も原因の一つだろう。
「あっ、おはよう矢沢くん」
「お、おはよう杉藤さん」
いつもの通学路を歩いていると、珍しく杉藤さんに会った。
杉藤さんとは、学校か彼女がバイトしている喫茶店でしか会ったことがなかったから新鮮だった。
かなりの美人さんだし、やっぱり彼氏とかいるのかな? って、いかんいかん。頭が恋愛ごとに支配されてるぞ。
「そういえばなんだけど……」
「え? ええっ!?」
突然、杉藤さんが顔を寄せてくるものだから驚いてしまう。女の子の甘い匂いが、睡眠不足の脳に染み渡る……。
さらに女子に近づかれたためか、心臓が痛いくらいに鼓動してしまった。
最近はなかったけど、なんだか久しぶりの感覚だった。
そうだった。以前の僕は美月以外の女子と話をするってだけで緊張していたんだったな。
「男子の間で謎のメイドさんを探そうって話になっているらしいんだけど、大丈夫?」
「へ? 謎のメイド?」
杉藤さんは周囲に見られないようにしながら、僕にスマホの画面を向ける。
そこに映っていたのは、いつぞやに見た僕のメイド服姿の写真だった。
「これ、メイクして印象が変わっているけれど、矢沢くんよね?」
「……」
普通にバレてる!?
いや、泉くんもすぐに僕だとわかったみたいだし、見る人が見れば簡単に見抜いてしまえるのだろう。
ていうかメイドの正体を探す話ってまだ続いてたんだ……。自然消滅してくれればよかったのに。
杉藤さんに隠しても仕方がないか。僕は観念して小さく頷いた。
「男子の間で変に盛り上がってるから心配になっちゃって。私に何ができるわけでもないのだけど、もし困ったことがあったら相談してね。綾乃ちゃんも味方になってくれるから元気出すのよ」
「は、はい」
なぜかものすごく励ましてもらえた。そんなに心配そうに見えるのかな?
もしメイドの正体が僕だってバレたらどうなるんだろう? よくわからないけど、あまり良い結果にはならないように思えた。
「千夏ちゃんと……矢沢くん? この組み合わせは珍しいな。二人して内緒話でもしてんの?」
背後から声をかけられて、僕と杉藤さんは慌てて離れた。
振り返ればちょっとチャラい外見をした男子。身構えそうになったけど、相手が佐野くんだと気づいて力を抜く。
「べ、別に内緒話をしてたわけじゃ……」
僕の返事に興味がないのか、佐野くんは杉藤さんに近づくと、当然と言わんばかりに肩を抱いた。
「っ!?」
あまりにもあっさりと女子の肩を抱くものだから滅茶苦茶驚いた。もう目玉が飛び出るんじゃないかってくらいびっくりした。
いやいやいやいやいやいや! そんなナチュラルに女子の肩を抱く男子が存在するの!?
文化祭の時はナンパ男から助けるためだったと理解できるけど……今回はそんなイベント起こってないよ?
これが陽キャのノリってやつなのか!? だからって杉藤さんがどう思うかを考えて……。
「も、もうマサくんったら……。こんな朝から人が見てるかもしれないのに……」
満更じゃないだと!?
勝手なイメージなのだけど、杉藤さんのような気の強そうな外見の女子はこういう軽いノリを嫌がるものだと思っていたのに……。頬を赤らめながらも、嬉しさを隠し切れていないのが僕にも感じ取れた。
こ、これが最近の男女のノリってやつなのか? 遅れているのは僕の方なのか!?
「千夏ちゃんってば俺以外の男子と親しそうにしているんだもんよ。心の広い俺でも妬いちゃうぜ?」
「私がマサくん以外の男子とそういう仲になるわけがないじゃない。本当はわかってるくせに」
なんだかイチャイチャしているようにさえ見えてくる……。
こういう場面を目の当たりにすると、自分がいかに陰キャかを思い知らされる。
「矢沢くん」
「は、はい」
二人の世界に入りそうだったので、このまま存在を消して離れようかと考えていたところで佐野くんに声をかけられた。
「メイド姿、似合ってたぜ」
「……」
実はもう学校のみんなにバレてるんじゃないかな……。僕が知らないところで笑ってたりしない?
「冗談はさておき。何かあったら俺も手助けするからさ。気軽に頼ってくれよ」
ニカッと陽キャスマイルを向けられて蒸発しそうになった。
こういうことをさらりと言ってくれるから陽キャ男子を嫌いになれないのだ。佐野くんが眩しくて直視できないっ。
「あ、ありがとう……」
「お? 確かにこういう仕草されると可愛いな」
「マサくん?」
「ち、違うんだよ千夏ちゃんっ。変な意味じゃなくて……ちょっ、待ってくれよー!」
なぜか杉藤さんが早足になったものだから、佐野くんは慌てて彼女の後を追った。
ようやく肩の力を抜ける。二人ともいい人なんだけど、陰と陽の違いのせいかどうしても緊張してしまうんだよなぁ。
「比呂先輩……」
「わっ!? き、城戸さん……」
気を抜いた時に城戸さんが現れたものだから、僕の心臓は再び激しく鼓動したのだった。
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