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70.枕元に良い物があるよ
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パチリと目が覚めた。
「ん~。よく寝た~」
上体を起こして伸びをする。背中がパキパキと鳴るのが気持ちいい。
時計を見れば午後三時。けっこう眠れたな。おかげでぼーっとしていたのが嘘みたいに頭が冴えている。
「一日潰してしまった……」
「よく寝た」じゃないよ!
すでにほとんどの授業を終えてしまった時間だった。今から教室に戻ったところでもう遅いだろう。
図らずも徹夜してしまったとはいえ、これは酷すぎる……。寝たいのになかなか寝られなかったはずなのに、なんで急に眠れるようになったんだろう?
城戸さんを意識しすぎて頭がぼーっとして……そうだ。松雪さんの顔を見たら安心して一気に睡魔に襲われたのだ。授業中に居眠りするよりは、こうやって保健室で寝た方がマシだったと信じたい。
「やっと起きたのね。お昼食べてないからお腹空いたでしょう? ここでお弁当食べていいよー」
カーテンを開けて声をかけてくれたのは保健室の先生だった。
長時間ベッドを占領して申し訳ないと思いつつも、先生の言葉に引っかかりを覚えて首をかしげる。
「お弁当なんて持ってきてないですよ?」
今日も今日とて購買のパンの予定だったのだ。この時間では買いに行くには遅すぎた。
しかし言われてみれば昼飯抜きだったのだ。腹の虫が鳴って空腹を訴えてくる。……後でコンビニで何か買おう。
「だったら、枕元に置いてあるそれは何かなー?」
先生に言われて目を向ければ、確かに弁当らしき包みが置いてあった。
これ、見覚えがあるぞ……。たぶん松雪さんのだろう。
もしかして保健室で寝ている僕を心配して弁当を差し入れしてくれたのか?
あり得るぞ。なんだかんだで松雪さんは優しいから、僕の体調が悪いのではないかと心配してくれたのだろう。
それにしても枕元に置いてあるとサンタさんのプレゼントみたいだ。丁度十二月だもんね。
「お茶はあるよー」
「すみません。いただきます」
保健室の先生は冷蔵庫からお茶を出してくれる。保健室での飲食を先生が勧めてもいいのかな?
松雪さんの思いやりに感謝しながら弁当を開けた。
「お、おぉう……」
中身は色彩だけなら豊かな、野菜びっしりのサラダ弁当だった。
これって松雪さん用だよね? 以前食べていたのを見たことあるし……。
「……」
僕の体調が悪いのだと心配して、自分の分の弁当をくれたのか……。
僕は手を合わせて、彼女の厚意をいただくことにした。
「それにしても……松雪さんの弁当ってサラダか肉か、極端なんだよなぁ」
この間僕のためにと作ってくれた弁当は、全体的に茶色かった。
もう少しバランスが良ければもっと美味しいのになと、余計なことを考えながら口を動かすのであった。
◇ ◇ ◇
放課後になったので、鞄を取りに教室へ戻った。
「比呂くん、もう起きても平気なんですか?」
真っ先に声をかけてくれたのは松雪さんだった。
「うん、ただの寝不足だったからね。しっかり寝たから元気だよ」
さすがに寝過ぎた罪悪感があるけども……。
まさか残りの授業を全部寝て過ごすとは予想してなかった。今日の授業内容が気になる……。自分だけ勉強が遅れたのは精神衛生上よくない。
そんなことを考えていたのが伝わったわけじゃないんだろうけど、松雪さんがノートを差し出してきた。
「どうぞ、今日の授業のノートです。返すのはまた明日でいいですよ」
「助かるよ。何から何までありがとう」
「ノートを貸すくらい大したことではありませんよ」
「いや、それだけじゃなくてね……」
僕は誰かに見られないように気をつけながら、懐にしまっていた弁当箱を松雪さんに見せる。
「これを枕元に置いてくれたのは松雪さんだよね? お腹が空いてたから全部食べちゃったよ。また洗って明日返すからね」
「なんでそんなところに隠しているんですか……。別に見られて困るものでもないでしょうに」
松雪さんに呆れられる。
いやいや、男子の嫉妬心を舐めてはいけないんだよ。一応松雪さんは人気の女子なんだから、僕が弁当を差し入れてもらったなんてバレたらどう思われるかわかったもんじゃない。
「ていうか、これ松雪さんの分だったんでしょ? 僕のためにお昼抜いたりしてないよね?」
「大丈夫です。今日は購買のパンを買いましたから」
彼女は「えっへん」とでも言いそうな態度で胸を張った。それってそんなにも得意げになること?
「僕のせいでわざわざ……」
「そんな顔しないでください。私は購買でパンを買うのが初めてだったので新鮮で楽しかったですよ。丁度いい機会でした」
僕に罪悪感を与えないようにか、そんなことを言ってくれる松雪さん。フォローの天使だ。
「それで比呂くん。顔色も良くなったみたいですし、放課後はボクシングジムに行かれるのですよね?」
「え、なんで知ってるの?」
「お昼に紬さんに聞きました」
そっか。僕が昼休みも眠っていたから、松雪さんと城戸さんの二人で昼食を取っていたのか。
朝の段階なら寝不足……体調不良を理由に休もうかと思っていたんだけど、これだけ寝たのならむしろ身体を動かさないと夜眠れないだろう。
「そうだね。しっかり鍛えてくるよ」
僕は鞄を持ってスマホを確認する。城戸さんはすでに昇降口で待っているとメッセージが来ていた。
「比呂くん、何私を置いて行こうとしているのですか?」
「はい?」
顔を上げれば、松雪さんがワクワクを隠せない子供みたいな表情をしていた。
「私も一緒に行きますよ」
「はい?」
外見だけなら清楚な黒髪ロング美少女をボクシングジムに連れて行くの? ……マジで?
「ん~。よく寝た~」
上体を起こして伸びをする。背中がパキパキと鳴るのが気持ちいい。
時計を見れば午後三時。けっこう眠れたな。おかげでぼーっとしていたのが嘘みたいに頭が冴えている。
「一日潰してしまった……」
「よく寝た」じゃないよ!
すでにほとんどの授業を終えてしまった時間だった。今から教室に戻ったところでもう遅いだろう。
図らずも徹夜してしまったとはいえ、これは酷すぎる……。寝たいのになかなか寝られなかったはずなのに、なんで急に眠れるようになったんだろう?
城戸さんを意識しすぎて頭がぼーっとして……そうだ。松雪さんの顔を見たら安心して一気に睡魔に襲われたのだ。授業中に居眠りするよりは、こうやって保健室で寝た方がマシだったと信じたい。
「やっと起きたのね。お昼食べてないからお腹空いたでしょう? ここでお弁当食べていいよー」
カーテンを開けて声をかけてくれたのは保健室の先生だった。
長時間ベッドを占領して申し訳ないと思いつつも、先生の言葉に引っかかりを覚えて首をかしげる。
「お弁当なんて持ってきてないですよ?」
今日も今日とて購買のパンの予定だったのだ。この時間では買いに行くには遅すぎた。
しかし言われてみれば昼飯抜きだったのだ。腹の虫が鳴って空腹を訴えてくる。……後でコンビニで何か買おう。
「だったら、枕元に置いてあるそれは何かなー?」
先生に言われて目を向ければ、確かに弁当らしき包みが置いてあった。
これ、見覚えがあるぞ……。たぶん松雪さんのだろう。
もしかして保健室で寝ている僕を心配して弁当を差し入れしてくれたのか?
あり得るぞ。なんだかんだで松雪さんは優しいから、僕の体調が悪いのではないかと心配してくれたのだろう。
それにしても枕元に置いてあるとサンタさんのプレゼントみたいだ。丁度十二月だもんね。
「お茶はあるよー」
「すみません。いただきます」
保健室の先生は冷蔵庫からお茶を出してくれる。保健室での飲食を先生が勧めてもいいのかな?
松雪さんの思いやりに感謝しながら弁当を開けた。
「お、おぉう……」
中身は色彩だけなら豊かな、野菜びっしりのサラダ弁当だった。
これって松雪さん用だよね? 以前食べていたのを見たことあるし……。
「……」
僕の体調が悪いのだと心配して、自分の分の弁当をくれたのか……。
僕は手を合わせて、彼女の厚意をいただくことにした。
「それにしても……松雪さんの弁当ってサラダか肉か、極端なんだよなぁ」
この間僕のためにと作ってくれた弁当は、全体的に茶色かった。
もう少しバランスが良ければもっと美味しいのになと、余計なことを考えながら口を動かすのであった。
◇ ◇ ◇
放課後になったので、鞄を取りに教室へ戻った。
「比呂くん、もう起きても平気なんですか?」
真っ先に声をかけてくれたのは松雪さんだった。
「うん、ただの寝不足だったからね。しっかり寝たから元気だよ」
さすがに寝過ぎた罪悪感があるけども……。
まさか残りの授業を全部寝て過ごすとは予想してなかった。今日の授業内容が気になる……。自分だけ勉強が遅れたのは精神衛生上よくない。
そんなことを考えていたのが伝わったわけじゃないんだろうけど、松雪さんがノートを差し出してきた。
「どうぞ、今日の授業のノートです。返すのはまた明日でいいですよ」
「助かるよ。何から何までありがとう」
「ノートを貸すくらい大したことではありませんよ」
「いや、それだけじゃなくてね……」
僕は誰かに見られないように気をつけながら、懐にしまっていた弁当箱を松雪さんに見せる。
「これを枕元に置いてくれたのは松雪さんだよね? お腹が空いてたから全部食べちゃったよ。また洗って明日返すからね」
「なんでそんなところに隠しているんですか……。別に見られて困るものでもないでしょうに」
松雪さんに呆れられる。
いやいや、男子の嫉妬心を舐めてはいけないんだよ。一応松雪さんは人気の女子なんだから、僕が弁当を差し入れてもらったなんてバレたらどう思われるかわかったもんじゃない。
「ていうか、これ松雪さんの分だったんでしょ? 僕のためにお昼抜いたりしてないよね?」
「大丈夫です。今日は購買のパンを買いましたから」
彼女は「えっへん」とでも言いそうな態度で胸を張った。それってそんなにも得意げになること?
「僕のせいでわざわざ……」
「そんな顔しないでください。私は購買でパンを買うのが初めてだったので新鮮で楽しかったですよ。丁度いい機会でした」
僕に罪悪感を与えないようにか、そんなことを言ってくれる松雪さん。フォローの天使だ。
「それで比呂くん。顔色も良くなったみたいですし、放課後はボクシングジムに行かれるのですよね?」
「え、なんで知ってるの?」
「お昼に紬さんに聞きました」
そっか。僕が昼休みも眠っていたから、松雪さんと城戸さんの二人で昼食を取っていたのか。
朝の段階なら寝不足……体調不良を理由に休もうかと思っていたんだけど、これだけ寝たのならむしろ身体を動かさないと夜眠れないだろう。
「そうだね。しっかり鍛えてくるよ」
僕は鞄を持ってスマホを確認する。城戸さんはすでに昇降口で待っているとメッセージが来ていた。
「比呂くん、何私を置いて行こうとしているのですか?」
「はい?」
顔を上げれば、松雪さんがワクワクを隠せない子供みたいな表情をしていた。
「私も一緒に行きますよ」
「はい?」
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