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1:イベントは悪役令嬢に乗っ取られた!
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王立魔法学園。その学園祭の初日の開会式で、事件は起こった。
学園の三年生で生徒会長でもある第一王子アレクシスが、開会宣言のために講堂の壇上へ現れる。
――何故か自分の側近候補、副会長で宰相の息子のベネディクト、書記で魔術師団団長の息子セドリック、庶務で騎士団長の息子ダグラスの三人と、そして一人の可愛らしい少女と共に。
あちゃー、と、集まった学園生の中の誰かが呟いた。壇上を見上げる学園生は、ほとんど同じ表情だった。
この五人組は、今一番話題のグループだからだ。互いに牽制しつつも一人の少女に愛を囁く令息たちと、常に男を侍らす男爵令嬢という醜聞で有名なのだ。現に今も、一人の令嬢相手に壇上にも関わらずエスコート合戦している。
学園祭を前にした修羅場発生の予感に、学園生たちはざわつく。
「――諸君、静粛に。栄えある学園生であることを自覚したまえ」
アレクシス王子は己の事は棚に上げて、学園生たちに語り掛けた。照明を浴びてキラキラ光る金髪、苛烈な光を宿した碧眼。見た目だけは最高の部類の王子である。
「これから学園祭が始まるわけだが、その前に時間を取らせてもらう。どうしても告げなければならないことがあるのだ」
そう言いながら、アレクシスの目はさっと講堂の中を見渡す。そして目的の人物を見つけた。そいつは図々しくも最前列に立ち、俯いている。葡萄酒色の髪が顔に影を落としていてどんな顔をしているかわからないが、どうせいつものように不細工な仏頂面なのだろう、とアレクシスは心の中で嘲笑する。
「そこに突っ立っているユーフェミア・エイダスよ。貴様との婚約は今日ここで破棄させてもらう。貴様は私の婚約者という立場に増長し、ここにいる聖女フローラを散々責めさいなんだ。その上ここ数か月の間ほとんど授業も出ないで、生徒会の会計担当という立場を利用して、生徒会の予算を横領した! この数々の非道は看過できん! よって貴族籍をはく奪する。修道院にでも入るがいい。連れ去れ!」
アレクシスが高らかに告げ、それまでフローラの髪をデレデレしながら盛んに撫でていた騎士団長の息子ダグラスが弾かれたように壇から飛び降りた。そして俯いたまま動きもしないユーフェミアを取り押さえようと腕を伸ばす。
ダグラスの手が触れるかどうかで、葡萄酒色の髪の女子学園生の体がガシャンと崩れ落ちた。
「なっ、マネキン!?」
同時に、講堂内に魔導拡声器の声が響き渡った。
『あーテステス。聞こえますかぁー?』
「この声は……ユーフェミアか!?」
アレクシスの声がひっくり返った。
『学園生の皆さーん、朝早くからお疲れ様ぁ! いよいよお待ちかねのーぅ、学園祭が始まるよ! 準備はいいかなぁー?』
とても王子の婚約者――侯爵令嬢とは思えない、能天気なしゃべり方。アレクシスは馬鹿にされたと思って顔を憤怒で染め上げる。
「くそっ、あの性悪女はどこに隠れている!?」
王子たちは右往左往するが、ユーフェミアの姿はどこにもない。ただひたすら馬鹿にしたような陽気な声が響くばかりだ。
『レディース、アーンドジェントルマーン! これからじっくり楽しんでねー!』
「ふざけるな! どこだ……!?」
次の瞬間、王子とその愉快な仲間たちの姿が消えた。残るのは、舞台の床の魔法陣。
彼らは転移魔法で飛ばされたのだ。
『さあ、イベント開始ぃー!』
学園の三年生で生徒会長でもある第一王子アレクシスが、開会宣言のために講堂の壇上へ現れる。
――何故か自分の側近候補、副会長で宰相の息子のベネディクト、書記で魔術師団団長の息子セドリック、庶務で騎士団長の息子ダグラスの三人と、そして一人の可愛らしい少女と共に。
あちゃー、と、集まった学園生の中の誰かが呟いた。壇上を見上げる学園生は、ほとんど同じ表情だった。
この五人組は、今一番話題のグループだからだ。互いに牽制しつつも一人の少女に愛を囁く令息たちと、常に男を侍らす男爵令嬢という醜聞で有名なのだ。現に今も、一人の令嬢相手に壇上にも関わらずエスコート合戦している。
学園祭を前にした修羅場発生の予感に、学園生たちはざわつく。
「――諸君、静粛に。栄えある学園生であることを自覚したまえ」
アレクシス王子は己の事は棚に上げて、学園生たちに語り掛けた。照明を浴びてキラキラ光る金髪、苛烈な光を宿した碧眼。見た目だけは最高の部類の王子である。
「これから学園祭が始まるわけだが、その前に時間を取らせてもらう。どうしても告げなければならないことがあるのだ」
そう言いながら、アレクシスの目はさっと講堂の中を見渡す。そして目的の人物を見つけた。そいつは図々しくも最前列に立ち、俯いている。葡萄酒色の髪が顔に影を落としていてどんな顔をしているかわからないが、どうせいつものように不細工な仏頂面なのだろう、とアレクシスは心の中で嘲笑する。
「そこに突っ立っているユーフェミア・エイダスよ。貴様との婚約は今日ここで破棄させてもらう。貴様は私の婚約者という立場に増長し、ここにいる聖女フローラを散々責めさいなんだ。その上ここ数か月の間ほとんど授業も出ないで、生徒会の会計担当という立場を利用して、生徒会の予算を横領した! この数々の非道は看過できん! よって貴族籍をはく奪する。修道院にでも入るがいい。連れ去れ!」
アレクシスが高らかに告げ、それまでフローラの髪をデレデレしながら盛んに撫でていた騎士団長の息子ダグラスが弾かれたように壇から飛び降りた。そして俯いたまま動きもしないユーフェミアを取り押さえようと腕を伸ばす。
ダグラスの手が触れるかどうかで、葡萄酒色の髪の女子学園生の体がガシャンと崩れ落ちた。
「なっ、マネキン!?」
同時に、講堂内に魔導拡声器の声が響き渡った。
『あーテステス。聞こえますかぁー?』
「この声は……ユーフェミアか!?」
アレクシスの声がひっくり返った。
『学園生の皆さーん、朝早くからお疲れ様ぁ! いよいよお待ちかねのーぅ、学園祭が始まるよ! 準備はいいかなぁー?』
とても王子の婚約者――侯爵令嬢とは思えない、能天気なしゃべり方。アレクシスは馬鹿にされたと思って顔を憤怒で染め上げる。
「くそっ、あの性悪女はどこに隠れている!?」
王子たちは右往左往するが、ユーフェミアの姿はどこにもない。ただひたすら馬鹿にしたような陽気な声が響くばかりだ。
『レディース、アーンドジェントルマーン! これからじっくり楽しんでねー!』
「ふざけるな! どこだ……!?」
次の瞬間、王子とその愉快な仲間たちの姿が消えた。残るのは、舞台の床の魔法陣。
彼らは転移魔法で飛ばされたのだ。
『さあ、イベント開始ぃー!』
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