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1 婚約破棄
しおりを挟む「婚約破棄しましょう」
「なん、だって?」
スッと婚約破棄の書類を出してくるガーネット。
アベールの目は大きく開かれ、体が震えた。
「な、何を言ってるんだ。婚約破棄なんてできるわけがないだろう!そもそも君の両親が……
「両親は説得済みです」
ぐぅとアベールが唸る。
「そもそもアベール様は私のことを嫌いだとおっしゃっておりました」
「そうだ!」
「私のことをブス、だと……」
「そう、だ…」
「友人のマリア様の方が可愛くて愛嬌があると」
「その通りだ……」
「では婚約破棄しても何も問題はないかと」
「そう、だな……」
「ではこれを」
ガーネットはペンをアベールに渡した。
それを手に取ったアベールは手を震わせながらもサインした。
書いた字も震えているが、間違いなくアベールのサインだ。
ガーネットは安心したようにほっと息を吐く。
「ありがとうございます」
書類を丁寧に折りたたみ、鞄に大事にしまう。
「ま、待て!やはり
「アベール様、今までありがとうございました。もう社交場でしか会うことはないかと思いますが、お元気で」
ガーネットは美しくカーテシーをし、部屋を出て行った。
取り残されたアベールは全身の力が抜けたようにへなへなと床に座り込んだ。
「……こんなはずじゃ、なかったのに」
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