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7 元婚約者の恋人
しおりを挟む「今すぐ婚約してほしいとかじゃないんだ。ただ、僕が君を好きなことを知ってもらいたくて……」
「フィリップ様……」
見つめ合う私たちを、優しい風が撫でる。
胸がドキドキと高鳴る。
アベール様には芽生えなかった気持ち。
「ガーネットと結婚したくてたまらないくせに何言ってんだか」
「リリアナ!!」
リリアナの言葉にフィリップ様は図星を刺されたように焦り、リリアナはアハハと口を開け笑っている。私もリリアナにつられて笑ってしまった。
その後フィリップ様は私が帰るまでずっとリリアナに揶揄われていた。
それから私たちは昔のように集まり、一緒に過ごすことが多くなった。三人で過ごす時間は心地よく、フィリップ様と二人きりのときは緊張したけど、彼は昔と同じように優しく接してくれた。
穏やかで楽しい時間だった。
フィリップは口から心臓が飛び出しそうなほど緊張していたのだが、ガーネットは気づかなかった。
子爵家でフィリップと過ごしたあと、彼のことを考えながら屋敷に帰ると門の前が騒がしい。何事かとガーネットは門番の方を見た。
「早く伯爵令嬢を出しなさいよ!!」
「あら……」
騒がしくしていたのはアベールの恋人でフィリップの元婚約者、マリア子爵令嬢だった。
「どうなさったの?」
私は彼女に声をかける。念のため伯爵家の騎士が私を守るように前に立つ。
「やっと出たわねこの悪女!!」
「あ、あくじょ?」
「そうよ!!フィリップ様を返してよ!!」
「え?フィリップ様?」
アベール様じゃなくて?私は困惑する。
するとマリア様は怒っていたかと思ったら、急にポロポロと泣き出してしまった。
「こんな……こんなはずじゃなかったのに!!」
うわあああんとマリア様は令嬢らしからぬ大きな声で泣き始めた。
「フィリップ様が!嫉妬してくれると思ったから!だからアベールの誘いに乗って恋人になったのに!!アベールをとったらあなたの絶望した顔が見れると思ったのに!!なのにフィリップ様とあなたが会っているなんて!!アベールが婚約破棄は絶対されないって言ってたから!!嘘つき!!嘘つき!!酷いわ!!」
ぽかーんと私は口を開いてしまった。
嘘つき?私が?
マリア様は涙を流しながら私を恐ろしい目で睨みつける。
それを見て騎士たちが私を完全に隠した。
「拘束しますか」
「その方が良いかしら」
「放っておくのも危険かと」
伯爵家の騎士が警戒しながら私に話しかけるが、そこへ騒ぎを聞きつけたのかお父様がやってきた。
状況を把握したお父様は一言。
「拘束しろ」
拘束されながらも泣き喚くマリア様の横を、私は騎士に守られながら通り過ぎる。
屋敷に入ると、今度はお母様が待っていた。
「ガーネットおかえりなさい。話があるの」
私は何ごとかとお母様の部屋に連れて行かれた。
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