底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂

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第6章

第2話

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 通路に入ってしばらく歩いていると、物が乱雑に置かれている部屋に辿り着いた。
 木箱が壁に埋まっていたり、中身のない木箱が壊れていたり、鉱石らしき物の塊が部屋中に転がっていたり、ガラスの破片が散らばっていたりと裸足の俺には少々危険な部屋だ。
 ここで行き止まりかと思いつつも、壁に手を付いたらまだ先にも通路が現れた。
 あの通路を通るために、崩れている木箱の板をガラスの上に投げ置いて足の踏み場を作り、板の上を跳び進んだら、現れた通路は安全なようだ。
 安心して歩けば突き当たりには、子供が目を閉じた状態で壁に下半身と両手が埋まっていた。 生きている感じはなく、こういうオブジェだと思いながら近づくとゆっくりと目を開いた。

「マスター、お久しぶりです」

 オブジェと思っていただけに驚いたものの、俺のことを誰かと間違えているのだろう、久しぶりと言いマスター呼びをして来た。

「ごめんよ。俺はキミのこと知らないから誰かと間違えていると思うよ」
「いえ間違いではないです。あなた様は私のマスターです。その膨大な魔力量はマスターしか有り得ません!」


 そう言い張る子供に困惑しながらも、俺の顔に見覚えがあるかを聞けば、転生したら顔などいくらでも変わるとまで言われてしまった。

「うーん、とりあえず本当のマスターってのが現れるまでの間、仮に俺がマスターってことでいいよ。それでキミは誰で、いつからここにいるんだい?」
「私はSKRB-No.0、魔導人形でございます。マスターは本当のマスターです。仮なんかではないです。私はここでスリープして何年経ったのでしょうか?今は何年でしょうか?」
「え?キミは魔導人形なの?だったらうちのソルトと同じか~。で、何年って話だったら俺もこの世界の西暦なんか分からんよ」
「そうですか。それではやはり、転生されて記憶がない状態なだけでしょう。ソルトとは?」
「あー、確かソルトは、そのSKRBのNo.5とかって言っていた記憶があるね。それで、最初はスカルブって呼ばれていたから、そう呼んでたんだけど、別に名前を付けて下さいって言うから、俺以外の人に対して塩対応だったからソルトにしたんだ」
「No.5ですと、私の後続機でございましょう。
魔導人形の中で私が一番早くに眠りに就かされましたので、のちの兄弟姉妹機となる魔導人形たちは、私が知る限りではNo.1とNo.2の二体が作られていたのを記録しております。その二体以外はどのような理由で眠らされたのかは存じ上げません」
「うちのソルトは、タイムスリープで時間が止まった眠りに就いていたって言っていたような気がするけど、なんで眠っていたかの理由は俺も知らないな。キミはその理由について自分で分かるのかい?」
「はい。存じております。私は世界の危機が近付いている時や、私に内臓されています様々なスキルが必要になったときに目覚めさせるのだと記録しております。先ず、現在のマスターはどのようなスキルをお持ちですか?」

 魔導人形は俺のスキルを聞いて来たものの、いくら魔導人形だからといっても信用していいものか少々悩んだ挙句、彼の前に俺のステータスの開示を出した。

レベル135
HP1,000万 MP20京/20京
筋力88万 体力500 魔力4,000兆
敏捷度44万 運?
《称号》
異世界人
勇者召喚に巻き込まれた一般人
常識のない者
超鈍感男
大バカ野郎
ダンジョンの主
超越者
勇***
魔***
凶運者/強運者
《固定スキル》
言語理解 文字変換 大想像魔法
《スキル》
瞬間転移魔法
MP瞬間回復
HP自然回復(減少)

 レベルが大幅にアップしたのにも驚いたが、HPと体力が前に見たときより、かなり減っているのにも驚いた。称号も微妙に変化しているし、スキルの自然回復が減少傾向があって、最近の回復の遅さを思い出したら心当たりがあるのを思い出した。運が?になっているのも、スキルの少ないところもステータスの表記自体がバグっているようだ。


「ほおほお、なるほどなるほど。はて、称号に勇者召喚に巻き込まれた一般人とありますが、どういうことでしょう?異世界人というのも、一度別の世界で転生して戻ってきたのでしょうか? それですと転生者の称号があるはずですが…見当たりませんね。それと、大想像魔法の使い手にしては、スキルがあまりにも少な過ぎます」
「あー、それね。恐らく隠しスキルの欄に入ってんだと思うんだ」
「はて?隠しスキルとは、どのようなスキルのことを仰っているのでしょうか?私が眠る前はそのようなスキルはございませんでしたが…。 しかし、剣とデコピンに投擲だけは突出して高いようですね」

 隠しスキルの事が分からないと言いながらも、ステータスに剣技のスキルが載ってないはずなのに剣技のことを言って驚いた。

「え?隠しスキルのこと知らないんじゃないのかい?俺には剣技のスキルなんて見えないのに、キミは見えるってのかい?」
「はい。見えてます。正確にはスキル欄のところに(剣技)や(投擲)などのスキルが見えますが、それがあまりにも少な過ぎます。此処には私が眠っていることを知らずに来たのでしょうか?」
「うん。偶然だね。本来なら俺はとっくに死んでいたはずなんだけど、運よく助かって流れでここまで来た感じだからね。あと、なんか不思議な力で導かれてきた感じがあって来たってのもあるね」

 あの罠の階層の落とし穴から落ちた後のことを考えると、想像魔法と焦熱剣によって助けられたこともあるものの、よくここまで来れたなっとしみじみと思った。

「分かりました。ですが、マスターがここに来たのは偶然ではないです。私のいるここには決して偶然では到達できないようになっておりますので、決して偶然ではなく必然でしょう。
ですからマスター、私を解放して下さい」

 彼はそう言うと目を閉じて唇を突き出した。

「解放するのは構わないんだけど、俺にどうしろと?それに本当のマスターでない俺が解放していいのかい?」
「はい。私を解放することができるのが膨大な魔力を所有し、大想像魔法のスキルを持つマスターでありますので、解放されたときに本当のマスターであるかの証明になると思われます。
 私を目覚めさせるだけの膨大な魔力の持ち主なら、今までも数度ありましたが、マスターと呼べる者はいませんでした。解放は接吻で解放されます」
「接吻て…。見た目が男の子のキミにキスはし難いな」

 また口付けかとソルトの時を思い出すも、あの時はガメニがいたから口付けはしなかったものの、見た目子供の彼に口付けしても咎める者は居ないのは分かっているが、俺の道徳心が彼の口付けを拒否している。

「それならば、簡単なスキル使用の許可をお願いいたします。そうすれば見た目を自由自在に変えることができますので」
「うん。じゃあ許可するよ。どんな見た目になるかは、キミに任せる」

 彼のスキル使用の許可をしたあと、身体全体がスライムのようにグニャグニャになってキャバ嬢のような女性に変化した。

「これでよろしいでしょうか?」
「凄いね。見た目だけじゃなく、声まで女性の声になるなんて。でも、いざ口付けしようと思ったら逆に恥ずかしいね」
「では、これでは如何ですか?」

 俺が恥ずかしいと言った途端にまた姿を変え、強面の髭面のおっさんに変化した。

「俺、恥ずかしいとは言ったけど、嫌だなんて言ってないよ。なのに、こんなおっさんに変身しちゃってさあ。流石にこんなのにキスするのとか無理だ」
「申し訳ございません。MPの供給なしでは、これから容姿を変えることが出来ません」
「えー!マジか、額にキスしたんじゃダメかな?ソルトのときはそれで良かったはずだけど…。もしくは俺が身体にMPを送り込むとか」
「額に口付けは後続機だから大丈夫だったのでしょう。私は最初に作られた魔導人形なため、初めは口から口の供給でないと受け入れない仕様となっております」

 見た目も声も厳ついおっさんの彼の唇は髭で半分隠れていて、とてもじゃないがキスなんかしたくないと思ったものの、彼の度重なるお願いによって、意を決して素早く唇に合わせてチュッとしたつもりだったが、唇が触れた瞬間に口の中に舌を入れられてしまって、抵抗して引き剥がそうにも、舌だけで俺の舌を蹂躙して抗うことができない。はたから見たら酷い絵面だろう。

「ふう、MPの供給は滞りなく終わりました。
では次に私の新しい名前をお願い致します」

 彼の舌が俺の口の中から抜けたあと、壁の中からするりと抜け出して今度は名付けのお願いをされてしまった。

「悪い。今はそんな気分じゃないんだ。
本当のおっさんじゃないのは分かっているけど、おっさんに穢された気持ちだから、しばらくの間放っておいて欲しい」
「この容姿では気分が悪くなりましたか。
それでは姿を変えます」

 彼はそう言ったあと、また容姿を変えて幼女に変化して再び口付けをして来た。

「これでどうですか?前の分が上書きされたと推測致しますが」
「うん。もう、俺の許可なくキスするの禁止ね。幼女でも問題あるよ。この場に俺とキミしか居ないから良かったものの、普通の街中とかだったら俺、絶対に警察に捕まっているからね!全裸の男が幼女とディープキスをしてるとか、完全に犯罪だよ!
おっさん同士だとしても、腐女子以外誰も見たがらないから!」

 言いたいことを吐き出したところで、少し落ち着きを取り戻し、その場にどかっと座り込んで名前を考えることにしたものの、碌な名前が思い浮かばない。

「それは申し訳ございません。
以後、許可なく口付けは致しません」
「う、うん。分かればいいんだけど、今名前について全く思い付かないから今度考えるよ。
因みに、ゲイやロリータみたいな名前でも良かったりするかい?ちょこっと頭をよぎったからさ」
「マスターが名付けてくれるのでしたら、どのような名前でも大丈夫です。ただ私には容姿を変えることができますので、男性機にこだわった名前でなくても大丈夫です」

 彼にそう言われて、それもそっかと思いつつも女の子の名前も考えるも、先程と大して変わらない名前しか思い付かず、とりあえずのところ名前については保留ということで、SKRBのNo.0ってことでゼロと仮の名前で呼ぶことに決め、正式な名前については仲間たちと合流できたときにでも一緒に考えてもらうことでゼロに了承してもらった。

「それではマスター、ここにある物で必要な物があればお持ち下さい」
「ここにある物って、ほとんどが崩れてたり壊れてたりしてるよね」

 彼がいるこの部屋に来るまでに見た箱の残骸を思い出すも、めぼしい物は無かったように思えるものの、あの中に価値のある物があったのだろうか。

「マスターのスキル使用の許可により、勝手ですが現在います位置からスキャンしましたところ、この部屋もですが、いくつか前の部屋にも貴重な物が数点あります」
「え?そうなのかい?何があったんだろう。
て、この部屋にも貴重な物があるのか」

 現在いる部屋を見渡すも、ゼロが埋まっていた壁と人間一人収まるだけのカプセルがあるだけで、特に貴重な物があるように見えない。

「マスターには分からないようですので、勝手に私が収納しておきます。私が眠らされていた壁一面の塊はオリハルコンで出来ており、このカプセルについてですが、どのような病気や状態異常の症状でも治療が可能なカプセルなのです。 そして、他の部屋の貴重な物についてですが、アダマンタイトや、MPを半永久的に供給できますが、呪いが掛かる邪神の石などの鉱石が複数あります。残念ながら、以前にあの部屋まで到達したことがある者たちによって、荒らされた形跡がありますので、鉱石類しか残ってないようです」
「へえ、この壁よく小説や漫画に出てくるオリハルコンなんだ。そう言われてみれば、なんとなく普通の壁の材質が違うような気がする。俺にはこれの価値がよく分からないから、前の部屋の貴重品も含めてゼロが持っててくれたら助かるよ」
「了解致しました。既に前の部屋や他の部屋の物は収納致してます。これから、壁とカプセルを収納致します」

 彼はそう言うと、カプセルが消えて数十メートル分の壁一面もごっそりと消えた。

「それではマスター、ここから出ましょう。
 ここから出る方法は存じておりますが、私一人では出来ない仕様となっておりますので、マスターに使用の仕方をお教えしますので、もう一度口付けをお願いします。そのついでにマスターの記憶をスキャンさせて下さい」
「記憶をスキャン?」
「はい。口付けによって、マスターが記憶しています脳にスキャンをかけて記憶を読み取ります。それによって、マスターがやらなければいけないことや、マスターしか分からないであろう道具の説明の省略などが可能になります。脳をスキャンしますが脳や身体には負担ありません」
「うーん、まあそれならいいかな。
いきなりスマホやキャンピングカーを出して、色々聞かれるのも面倒だし」

 俺への口付けの許可が降りたことによって、ゼロはまたも幼女からおっさんに変化し出して舌を出しながら近付いてくる。
 おっさんの髭面のままで身体は子供であるため、なんともバランスがおかしい。

「待て待て待て!なんでまたおっさん顔に戻ってんだよ!流石にまたその顔でキスとか嫌だ!」
「私たちを見ている観察者がこれを望みのようなので、今は我慢して下さい」

 彼は意味の分からないことを言って迫ってくる。 許可したとはいえ、迫り来るおっさんの顔したゼロの唇を避けようと彼の肩を押さえると、彼は手を翳して俺の身体を封じるスキルを使った。
 身動きが出来ないまま、またもおっさん面のゼロによって口の中を蹂躙されてしまった。

 今度の口付けは長く、鼻で呼吸をするも、息が続かなくなってきて意識が遠のいていき、視界が歪み始め、まだ終わらないかと視線があちこちに向いて、とあるモノに気が付いた。それは…。
 小さな小蝿だ。普通の小蝿より更に小さく、普段だったら絶対に気が付かないほどのサイズだ。

「ようやく気が付きましたね。では、この監視者には消えてもらいましょう」

 長い口付けが終わった彼が俺の唇から離れ、小蝿を食べた。

「ふむふむ、マスターは随分と前から監視されていたようですね」
「ハアハアハア、え、あ、そうなのかい?小蝿を食べたから驚いたけど、その小蝿から情報を取っていたんだね。でも、いつから監視されていたんだろう」
「そうですね。マスターがまだ弱かった頃くらいでしょうか」
「それって、この世界にきて最初の方じゃないか!一体いつ、誰がこんなことを…」
「マスターの記憶と虫の記録を読み取り推測しますところ、ヤマトのレインという人物と関係があるようです」
「まさかレイン様が…。俺がまだ想像魔法どころか、ステータスを見ることが出来なかった時期じゃないか!そんな前から監視されていたっていうのか!」
「はい左様でごさいます。私が生まれた場所もヤマトですので、マスターの目的地でもあるヤマトに行けば何か分かるのではないでしょうか」
「そうだね。じゃあ、もの凄~く面倒だけど、来た道を戻って上にあがろうかね」
「その必要はございません。マスターがお使いになっています瞬間転移魔法の要領で、大想像魔法で転移すればよろしいのです。しかし、単純に上にあがるだけでしたら、ここからでも上がれます」

 確かに転移すればいいだけかと思ったものの、ゼロは他に方法があると言い、俺の手を引いてポッカリと空洞になった自身が埋まっていた壁まで移動し、空いたもう片方の手を上に掲げると、部屋全体が光り輝いて移動し床が上にむかってせり上がって天井にぶつかると思って身を屈めるも天井にぶつからず、暗闇の中地面は動いている感覚があるところ、このまま上がり続けているのだろう。

「これってどこまで続いているんだい?
真っ暗の中上がり続けているみたいだけど。
このまま壁とかに押し潰されたりはしないよね?」
「マスター、大丈夫でごさいますよ。
私が眠る前にはありませんでした安全地帯が、この先の到達地点にありますので、このまま動かないで下さい」

 暗闇の中に聴こえる彼の言葉に頷き、しばらく沈黙のまま数分経った頃、足元から感じていた動きは止まった。

「マスター、手を上に掲げて開けと念じて下さい」

 彼にそう言われて手を伸ばして掲げると、手の先に硬い物が触れて開けと念じたら、触れた所が音もなく開いて眩しい光が目に入った。
 しばらく暗闇だったからか、急に明るいところに出ると目を開けられなくなるものだ。
 しばらく目を慣れさせるのに少々時間が掛かったものの、辺りを見渡したら、俺の仲間たちとキャンピングカーを出して休憩した場所だった。

 そして、俺が立っている所はあの寝ぼけていたときに見た光る地面の所その場所だ。
 あの時は夢だと思い込んでいたが、やはり光る意味がある場で、夢ではなかったのだ。

「マスター、これから最短ルートを検索し、マスターのレベル上げを考慮しつつ、この先々をスキャンしますので、少々お待ち下さい」

 ゼロは地面に手を付いて身動き一つしなくなったところで、俺は先に食事を摂ろうと適当に想像魔法で干し肉を想像して出したら、想像した物より巨大な肉の塊が出てきてしまった。
 適当に想像したから悪かったのか、流石にこれだけの物は食べ切れないため、手に持っていた焦熱剣で切り取って食べている間にゼロのスキャンが終わったようで、彼の示す方向に向かって歩き始めた。


 



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