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しおりを挟むあぁ、全ての苦労が報われる。
「聖十字騎士団、バンザーイ!」
「ホリック=マーベラは我が国の英雄だぁ!」
「きゃー!こっちをお向きになって団長ぉ!」
止まない自身への賞賛に自然と口角があがってしまう。だがそれもしょうがない、今日は俺のための宴なんだから。
我がマリンピア王国が魔王討伐部隊『聖十字騎士団』を立ち上げたのはもう5年前になるだろうか。この地は魔物たちにとって都合が良い土地だったらしくそれまで幾度となく魔物たちの襲撃を受けてきた。
だがその決着がようやくつけられた。私の手で。
諸悪の根源である魔王ロキの心臓を聖なる大剣で貫いたあの感触、忘れたくても忘れられん。
「団長」
隣に立つ男から声を掛けられる。
「皆が団長のお言葉を待っていますよ」
穏やかに話すこいつは副団長のエイ。
どんな時も俺をサポートしてくれて、最も信頼している仲間の一人だ。冷静で、頭の回転が早い。何度エイの判断で命を救われたか分からない。
「ああ」
「そうですよ団長っ!今日の凱旋パレードじゃアンタが主役なんだ!みんなアンタの言葉を心待ちにしてるんだ」
バシバシと力いっぱい俺の背中を叩くのは特攻隊長のモラン。こいつの武力とカリスマ性は文句なしだ、突破口は必ず作ってくれる。
「モラン、馬鹿力で団長の背骨を砕くなよ脳筋」
「あぁっ?!何だとシルフィ」
フンと鼻を鳴らすのは守備隊長のシルフィ。
彼女の高度な魔法壁がなければ今ごろ俺たちには取り返しのつかない傷が出来ていただろう。
エイ、モラン、シルフィ。
圧倒的な実力があり、なおかつ俺を心から慕ってくれている。この3人がいなければ、俺はこうして英雄として名を馳せることは出来なかっただろう。
「お前たち、いい加減にしろ」
「「元はといえばこいつが!!」」
「この凱旋パレードが終われば国王陛下の御前に上がるんだぞ?大人しくしていなければ褒美はなしだ」
「なっ!」
「そ、そんなぁ!」
あからさまにしょげる2人に笑ってしまう。
部下だが俺たちの間にはそれ以上の絆がある。こうしてじゃれあう姿を見るのも俺は好きだった。
「ホリック」
凛とした声が聞こえる。
俺は声の主の方を向きそっと微笑んだ。
「アリス」
そこには白い装束を纏った美しい黒髪の女が優しく俺たちに微笑んでいる。
俺はゆっくりと近づき、か弱い彼女の身体をそっと抱きしめたい。
「すまない。寂しい思いをさせたか?」
「ううん。何だかみんな楽しそうで……私も仲間に入れて欲しかったの。迷惑かな?」
「そんな事ない。君が側にいなくてちょうど寂しく思っていたところだ」
俺はちゅっと彼女の頬にキスを落とす。
「ほ、ホリック!」
「人前で恥ずかしいのか?かわいい」
「だめっ、みんな見てる……」
「なら続きは今夜ベッドの中でだ」
そう囁けば顔を真っ赤にする。
アリスは聖女だ。
この戦争中に休息で立ち寄った森でひっそりと暮らしていた彼女は、不思議な力で疲弊した隊員たちを回復させてくれた。寝る間も惜しんで献身的に世話をする彼女はまさに戦場の天使。そんな身も心も美しいアリスに俺は心を奪われた。そして彼女も……俺を愛してくれた。
「おいおい団長ぉ!見せつけてくれるじゃねぇか」
「イチャつくのは後にして」
「団長……目のやり場に困りますよ」
3人は俺とアリスを見比べながらため息混じりに言う。
「っほ、ホリック!そろそろ離して、ね?」
「……仕方ない」
「みんな国王陛下のところに行くのでしょう?私は他所者だから王宮の外で待ってるね」
気丈に俺たちを送り出そうとするアリスに、俺はピクッと眉を顰めた。
「何故だ?君も一緒にいこう」
「え、でも……」
「アリスも俺たちの仲間だ。君がいなきゃ今ごろ俺たちは勝てていなかったかも知れない。そうだろお前たち」
「「「そうですね」」」
「ならば共に行こう。それに、あのことを国王陛下にお伝えするんだ……アリスも側にいてくれ」
そう言えばアリスの表情が真面目なものに変わる。
「……婚約者さんのこと?」
「ああ」
思い出すのは5年前、戦争に行く直前に見たあの忌々しい女の顔だ。
忘れもしない、飄々としたあいつの笑みを。
だからこそ、その全てを今日清算するのだ。
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