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しおりを挟む男のロマン、それは何だと思う?
有望な役職に就くこと?違う。
腹いっぱい美味いものを食うこと?違う。
金銀財宝を手に入れること?ハハッ、馬鹿馬鹿しい。
答えは一つ。
美しい女に囲まれて死ぬことだ。
美女がいるといないとではモチベーションが違う。どんなに無能と呼ばれようが、最高級の女を手に入れていればたちまち周りの男たちよりも格が上がる。
羨ましい、妬ましい、私よりも有能であればあるほどそいつらからの視線が堪らなく快感なんだよ。
そう、傀儡の王と呼ばれる、ギルバート=ルスダンにとってはね。
*****
「では、これにて本日の会議を終了致します」
低い女の声と同時に瞑っていた目をぱちりと開けた。おっと、口の端から涎をこぼしていたか。いやこれはまずいまずい。
服の袖でグッと拭えば会議に参加している家臣たちはギロっと睨みつけて来た。何とも腹立たしい目だ、私がお前たちの上司にあたるというのにそんな態度をするなんて。まぁいいか、所詮は下賤な輩たち。王である私には無縁の者たちなんだから。
「陛下」
隣に座る女が声を掛けてきた。
そうだ、家臣たちなどまだ可愛い。私にとってこの女ほど神経に触る人間などいないからな。
「国家の存亡を決める重要な会議です。居眠りをするなど、国王のする事ではありませんよ」
「はぁ……相変わらずうるさい奴だな、サリファ」
私をじっと見つめるこの女こそ、目の上のたんこぶである妻サリファ。年の割には美しい部類だがいかんせん性格が最悪だ。まず夫である私を敬わない。そして口うるさい。可愛げがない。
女としては最低なこの女だが、腹立たしいくらい仕事が出来るせいで家臣たちからの信頼は厚い。全くもって不本意だがな。
「陛下、今一度ご決断の時です。魔導専門の特殊部隊の編成をお認めください」
ゴミを見るような目で見るサリファ。
こいつはいつもそうだ、口調こそ敬語だがいつも目の奥は私を蔑んでいる。
「またその話か、ならんと言っておる。魔導師なんぞ胡散臭いペテンだ」
「子供のようなことを仰らないで下さいませ。他国は既に優秀な魔導師を呼び寄せ国力を上げております、未だに非魔導師をかき集め武力で争おうとしているのは我が国だけでございます」
「貴様っ、我が国を……私の判断を愚弄するのか!」
ガタンとテーブルを叩く。
側に控えていた使用人は怯えるものの、サリファは眉一つ動かさず私を見つめていた。
「私に魔力が備わっていないのを馬鹿にしているのだな?!この性悪めっ!」
テーブルの上の茶をサリファにぶっかける。
「「きゃあ!」」
「……陛下、お気を確かに」
ここまでしてまだ無表情か、薄気味悪い女め。
「この話はこれで終いだ!くだらん!」
「陛下、お待ちを」
「お前のように辛気臭い女と話して気が滅入ってしまった。後宮へ出向いてくる!」
大事な会議だから来るよう言われたから来てやったのに、相変わらずサリファは私をイラつかせる天才のようだ!
制止する家臣たちを振り切り部屋を出た。
魔導師とは、内なる魔力を媒介として術を繰り出す者を指す。各々の特性にあった術、例えば風を巻き起こしたり、火を噴き出したり、一般的には考えられないような力を自在に操る異端児集団。それは努力でどうにかなるものではなく、そもそも魔力を持っているかどうかが基準となる。
私には魔力はない、だがサリファには魔力があった。
よその国から嫁いできたアイツは自国では名の知れた魔導師だったらしい。だからこの国にいきなりやって来て魔導師をもっと増やせだの何だの面倒なことを言ってくる。
アイツの思い通りになんかさせてやらぬ!
何が魔導師だ、そんなものが戦争の役に立つのか?だったら大砲や銃を大量に輸入し最強の武力集団で立ち向かえばいいだけじゃないか!
「くそっ!くそっ!」
サリファに会うといつもこうだ。気分は最悪、もう何もやる気が起きない。
「大人しく私に従い、面倒ごとだけ片付けていればいいものを……!」
長い廊下をずんずん進めば、敷地の奥にある大きな門の前へと辿り着く。花の香りと心地の良い琴の音色がここまで伝わってきた。
(ああ、ここは何度来ても癒されるなぁ)
この門を通れるのは世話をする侍女を除けば私だけ。
そう、ここは私だけの秘密の花園。
ルスダン王国の後宮とも呼ばれるそこには、3人の美しい女たちが住んでいた。
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