《完》わたしの刺繍が必要?無能は要らないって追い出したのは貴方達でしょう?

桐生桜月姫

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70 羨ましいプロポーズ

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▫︎◇▫︎

 護衛たる衛兵達は、アイーシャが泣き出した途端に焦った。自分達の主人がデリカシーのかけらもないことを口走ったのではないかと大いに焦った。だが、すぐにそれは杞憂であったと分かった。
 アイーシャについて、衛兵達はエカテリーナから聞いていた。“精霊の愛し子”であり、そのせいで魔力がなく、魔力至上主義たる隣国で不当な扱いを受けていたこと。その一環で元婚約者たる、隣国の王太子に婚約破棄されたこと。大まかなことは聞いていた。だから、彼女の叫んだ悲痛な『捨てないで!!』と言う言葉は心にぐさっときた。どんなに大人びて見えても、彼女はまだ16歳の少女であると認識させられた。

「「!!」」

 サイラスがアイーシャに抱きついた途端に、2人の周りにありえないほどの“精霊の祝福”が降り注いだ。きらきらとした7色の複雑な光に包まれた麗しの貴人達は、この世のものとは思えないほどに、とてもとても美しかった。
 今ここで結ばれた貴人の2人は精霊に愛されている。代償として魔力を払っているくらいに深く精霊に愛されている。
 衛兵達はこれは、精霊達の喜びの証ではないかと思った。何故なら、精霊に愛されし2人が結ばれたことに対する祝福と喜びのように見えたからだ。

「羨ましいですね」
「そうだな。こんなふうに幸せな未来を迎えたいな」

 目を細めた2人の衛兵は、自分達の未来へと思いを馳せた。いつか自分も………、そんなことを夢見るような夢のようなプロポーズだった。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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