強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす

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2nd フェーズ 集

No.39 今日も代表執行役はため息をつく

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廃墟のビル、そこの地下で一人の女性が縛られ、地面に倒れていた。

「私は出来る事はやった!あの人の指示に忠実に!」
その女性は目の前にいるアンドロイドに向かって怒鳴る。

彼女の目の前に立つアンドロイドは酷く損傷している。体の一部が壊れていてその部分からコードや金属などがみえていた。

「全く、君は自分の役割を理解していないな。彼女達とは真反対だ。出来る事をやるなんてものは当たり前だ、問題はその出来る事を正しく、自分の役割を果たすために行えているのかどうかだ」

アンドロイドからは加工された声がする。

「君に期待していたものと君が作り上げた物は全くの別物だ。酷いじゃないか、人の金を散々使った挙句に裏切るなんて」

「裏切る?!ふざけないで!あんな理論実現できるわけがない!」
彼女は叫ぶ。

「あの装置が完成したらそれこそ多くの金が動く!あの人がやろうとしている無茶苦茶な実験につぎ込むよりずっと確実でしょ?私はより現実的な方を選んだだけ!」

「あの透明化装置は!」
「透明化スーツ?違うだろう、あれは使用者を透明にさせる訳ではない」
声は彼女の話を遮る。

「あの装置は周囲に強力な電磁波を放ち、その影響で周囲の観測者の視神経などに働きかける。それにより使用者を視認できないようにするというものだ。生物だけでなくカメラやセンサーにも異常を引き起こす効果がある。ここまでは素晴らしい性能だと思う。しかし問題はこのあとだ」

アンドロイドの目からホログラムが放たれる。

「この装置には致命的な欠陥がある。それが使用者への副作用だ」

声がそう言うとホログラムに人体図が映し出される。

「装置から放たれる強力な電磁波により使用者の肉体は内蔵までボロボロに。みろ、数時間も使用していないのに、もう死にかけの身体になっている。こんなものどうやって売り込むんだ?」

「そ、それはまだ安定化や使用者に影響がでないようにする研究をしないと」
女性が答えた。

「で、その研究が終わるまでただ金を出して待ってくれと?」
「これが完成したら世界中の軍がとびつく!それだけじゃない反政府勢力だって、そうしたらあなたの会社は大儲けよ!」

彼女の話を聞いて声はため息をつく。

「はぁ、分かっていない。金の問題ではない、金は無くしても稼げばいい。しかし信用、これは失っては稼ぐのは困難極まるものなんだ。お前はそれを失った、それもかなり酷くな」

アンドロイドが彼女の首に手をかける。

「や、やめて……!!」

「万物は生まれながらにして役目を背負っている、神ですらその例からもれない。その役目を果たすのが生きる意味だ。人間ではそれを仕事という呼び方をすることもある、君はその仕事を放棄したのだ。果たすべきことから逃げた者に生きている意味なんてない。命を浪費したな」

彼女は足をばたつかせるが次第に動かなくなる。


「さて、聞いていたかね?君も同じだ、自分の役目を全うしたまえよ」

このやり取りをどこか別の場所でみている女性がいた。

そこには様々な機材などが並んでいる、なにかを開発している施設のようだ。

「ええ、分かってる」
女性はそれだけを言って連絡を切断した。

彼女が振り向く、後ろには多くのアンドロイドがいた。

「無能が一人減った、その記念に一杯と行きたいが私にはやるべきことがある。さっさと次の実験準備にかかれ!」

彼女がそういうとアンドロイド達は即座に作業に取り掛かる。

「この研究は成功する以外に道はないの。あいつの為じゃない、金のためじゃない、名誉もどうでもいい。私にはこれしか道がない」

その女性は自身のオフィスと思われる部屋に戻る。

部屋の中には窓のようなものがあった、しかしそこからは外がみえない。
彼女はその窓に取り付けられたスイッチを入れる。

するとその窓に何か映し出された。
3人家族の様子が映っている。

その中に彼女と同一人物とみられる女性が楽しそうに家族と食卓を囲んでいた。

「この世界に私は戻るの、これこそが私の正しい道なんだから」
彼女はそう言って、自身の机の上にある端末を起動させ作業に没頭する。



ウルティメイト社、その代表執行役リリィの部屋でリリィとヒメヅカが話していた。

「はぁーあ、まったくお陰で開発費の回収が面倒になったよ。アイツめー」
リリィはヒメヅカと共にソファに座り、ヒメヅカに寄りかかっていた。

「本当に、どういうつもりなのでしょうか。減らされたとは言え、それでも出資は得られているんですから、そのまま放っておくか軽く関係者を人質にでもすれば済むのに。わざわざあんな物を与えて始末させるなんて」

「いや、サラッと君も凄い事言うね。まあでも彼の事だ、会社の金なんて二の次なんだろう。自身に反旗を翻そうとするものは全て潰しておきたいんだ、そもそもエデンズゲートに彼は殆ど興味ないしね」

二人はそう話す。
ヒメヅカは自分の端末にある情報を映した。

「新兵器の稼働テストも兼ねてなんでしょうが、流石に詰め込み過ぎですね。身体能力向上の外骨格フレーム、その出力を上げ過ぎて機能を使う時は精密な動きは出来ませんしかなり体にも負担があったみたいです」

「極めつけはあの透明化?する装置だ、あんなもの生き物が付けていい代物じゃない。本当、イカレているとしか言いようがないね」

リリィはそういってため息をつく。

彼女は起き上がり、資料をみる。

「エデンズゲートプロジェクト。これが完成すればあの方が描いている未来に近づくのかな……」

そういうと彼女は頭を横にふる。

「いかんいかん、柄にも無い事を考えていたね。私の仕事はこの会社をまわして、金持ちにそれっぽくプレゼンして金を引き出すことだ」

顔を両手でペチペチと叩く。

「はい、次のプレゼンの資料です」
ヒメヅカはそういって端末に映し出した資料をみせる。

「ああ、これね。これも凄いよね。毎回こんな事が出来るんだ―って感心するよ。先のエデンズゲートもそうだけどさ。瞬間移動装置だっけ、仕組みはまあなんとなく分かるけど、実際に出来るの?って感じだよね」

リリィは資料をみる、その資料の一番上にこう書かれていた。

Project VB

「プロジェクトVB?私プロジェクト○○よりも○○プロジェクトの方が言いやすくて好きなんだよね。それにこのVBって言いにくいね、これ考えたの誰?企画名もう少しキャッチーなのにしない?」

「例えば?」
ヒメヅカがそういうとリリィはうーんと首をひねる。

「不老不死プロジェクト!」
「すこし胡散臭過ぎるのでは?」
「じゃあ無敵プロジェクト!パワー!」
リリィは力こぶをみせるポーズを取る。

「流石に誇張表現すぎる気が、普通にヴァイオレットプロジェクトで良いのでは?」
「えー、普通じゃない?パンチが欲しいてかBどっか行っちゃったじゃん」

「パンチって、良いじゃないですか、わかりやすさ重視の普通で。どうせ説明相手の出資者なんてロクに理解できないんですから」

そういうヒメヅカに軽く引くリリィ。

「君って結構言うよね」

彼女はソファから立ち上がる、ヒメヅカも続いて立ち上がる。

「まあ、ヴァイオレットプロジェクトにしますか。キャッチコピーはそうだな、【人類待望の未来をもたらす!新プロジェクト!】いやちょっと漠然とし過ぎか、【我々はまた一つ新たな革命を起こす!】うーん、古臭いけど出資者なんておじさんおばさんだし、気に入りそう」

ヒメヅカに襟を整えて貰いながらリリィはアイデア出しを始めた。

「先ほどよりずっと元気そうな顔ですね」
「そりゃまあ、人を殺すだのなんだの考えている時よりは元気にもなるさ」

最後にジャケットを着せてもらい準備完了。
リリィ達は部屋を後にした。
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