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2nd フェーズ 集
No.47 暗闇の中の死闘
しおりを挟む暗闇と共に襲い掛かる暗殺者キリサメ。
彼女の攻撃を防ぎながら先に進もうとするが、これでは埒が明かない、そう考えたジーナはある策をうった。
ジーナも暗闇に潜み、背後から攻撃を仕掛けたのだ。
背後取る事には成功した、しかし仕掛けた攻撃を躱されてしまうジーナ。
ジーナの攻撃を回避したキリサメは、その間際にジーナの左肩にナイフを投げさしていた。
(装置を止めた、自分から、想定外、しかし問題ない)
「グッ!!なんで……?背後は取れたのにッ!」
刺された肩を抑えるジーナ。
「ジーナ!早く装置を!」
「ごめん、作戦上手く行かなかった。仕切り直して……」
シャーロットの所に戻り装置を付ける為、歩き出そうとするジーナ。
「あれ……」
何故か思うように体が前に出ない。
背後に体が傾く。
違和感をの原因を探すジーナ。
彼女の視線は肩に刺さっているナイフに向かった。
「さっきのナイフ……これって?!」
暗闇で見えなかったが、今なら装置が放つ光で分かる。
ナイフの柄、その末端部分にワイヤーが繋がっていたのだ。
ワイヤーはピンッと張って暗闇に伸びていた。
「こっち、に、こい」
不気味な音声が流れるとワイヤーは一気に引っ張られる。
転倒してしまうジーナ。
みるみるうちに、シャーロットの元から離れていく。
「ジーナッッ!!ダメ!」
シャーロットがジーナを助けようと、盾の中から飛び出そうとする。
「私は大丈夫だから!シャロはそのまま続けて!!」
ジーナを追って暗闇に跳び込もうとするシャーロットを止めるジーナ。
この事を言い残し、ジーナは暗闇へと引きずり込まれて行った。
「……ッ!分かった、なんとかしてみせるよ!」
シャーロットは泣きそうになりながらも、再び破壊された装置と端末と向き合う。
「はやく、急がないと!」
暗闇に引きずり込まれたジーナ。
「いった、引っ張られるのと一緒にナイフ抜かれたちゃったな」
よくは見えないが左肩から出血している。
周囲に何があるのか、まったく見えない。
(さて、ああは言ったもののどうやるか。あれこのサングラス、ボタンついてる)
ジーナはポケットに入っていたサングラスにふれる。
ボタンを押すと
「暗視モード」
とグラスのレンズに表示がされた。
(そんな機能あったんだ)
とりあえずかけてみる。
しかしそれでも視界の状況はあまり変わらなかった。
(え、そんなに変わらないじゃん、映画だと結構ハッキリみえる感じだったのに。うわっシャロの方めっちゃ明るい!というより眩しくてみてらんない!)
「まず、は、ひとり」
すると不気味な音声が暗闇に響く。
ジーナは何かを感じ取り、咄嗟に身をかがめる。
彼女の頭の上を風切り音と共にナイフが通過した。
(あぶな!今のよく避けれたな、今めっちゃ研ぎ澄まされてるのかも)
自分の感の良さに驚きつつもジーナは一つ気になる事があった。
(あれ、でも相手はどうやってこんな正確に私を狙えてるんだろう。暗視ゴーグル的なの使ってる?いや、それだと装置の光が背後にあるこの状況の私は眩しすぎて観てられない筈。さっきなんて装置が目の前だったから、なおさら使えないはず。じゃあ温度?サーモグラフィーとかって奴かな)
ジーナは側にある物陰に一旦、身を隠した。
(いや、それだと説明がつかないのが一つある。さっき背後を取ったとき、攻撃するまで相手はこっちに気付いてなかった。もし体温で認識してるなら私が暗闇に紛れたのはすぐにバレてた筈)
この暗闇が、この孤独が、今まさにジーナの思考と感覚を研ぎ澄ませ、磨き上げていく。その感覚を確かに覚えながら彼女は思考を巡らせる。
(演技でわざと気付かないふりをしてた?いやそれだったら暗闇に紛れた時に、一人になった私に仕掛ければ済む話。わざわざ一回こちらに攻撃させるような事はしないはず。って事は……)
彼女は一つの仮説に行きつく。
(まずは準備しないと)
ジーナはシャーロットの方に走り始めた。
「おとなしく、しろ」
再び不気味な音声が暗闇に響く。
(また来る!でも今度はッ!)
ジーナは動かずに構える。
ナイフが飛来し、彼女の腹部を捕らえる。
しかし、構えていたジーナはナイフが腹部に完全に刺さりきる前に、これを掴んだ。
「掴んだッ!よし、やっぱりワイヤーがついてる!」
ワイヤーを掴むジーナ。
「ッ!」
「忍者の一本釣りだッ!!」
ワイヤーを思いっきり引っ張るジーナ。
キリサメは引き寄せられる。
しかし彼女は咄嗟に自分の腕の装甲とナイフを繋ぐワイヤーを切断。
「あら、ダメかー」
そう言って切断されたワイヤーを手繰り寄せるジーナ。
彼女のポケットにいれていた端末が軽く振動した。
(来た、相手の事もだいたい分かったし、あとは行動あるのみだね)
再び空間が静まり帰る。
(カラ・ジーナ。近接戦闘に長けている、暴走したチザキアキナに使用した【黒鉄】、キリサメこの技食らえない。でもこの技、そう簡単にだせない)
キリサメは暗闇の中でジーナの記録を思い出していた。
すると突然、キリサメは走りだす。
その直後に静寂を打ち破る銃の発砲音が響き渡り、火花が散った。
(銃?さっきの警官二人の、持ってた?)
音の方へキリサメはナイフを投げた。
「しまった」
キリサメはそう呟いた。
「みぃつけた」
ジーナが彼女の耳元で、厳密にはヘルメットに口が付きそうな位置で囁く。
「ッ!!?」
キリサメはすぐに刀に手を伸ばそうとするが、右腕が上がらない。
彼女の手には手錠がかけられていた。
「これも借りたんだ、もう逃がさないよ」
ジーナは自分の左手とキリサメの右手を手錠で繋げたのだ。
「散々やられた借りを返すよ!!」
右拳を引いて相手に打ち込もうとするジーナ。
(キリサメに近づく、自殺行為)
そんなジーナの足を払って転倒させるキリサメ。
「おっ!?なんてね!」
倒れる勢いを逆に利用してキリサメの側頭部にジーナは蹴りを入れた。
弧を描いて打ち込まれた蹴りでよろめくキリサメ。
しかし、キリサメは止まらずナイフで斬りかかる。
「あっぶな!何本もってんのそのナイフ!」
ジーナはその攻撃をギリギリの所で躱す。
そして振りきった相手の腕を掴んで捻り、相手を投げた。
「こうやって近づいてみると意外と小柄なんだね」
キリサメは地面に押さえつけられた状態から脱しようと動こうとする。
「動かないで。こんな暗闇でもここまで近づいてたら、ましてや相手の身体に触れてれば、何かしようとすればすぐ分かる。動いたらこの腕を折る、関節を逆に曲げるだけだからあっという間だよ。もっと痛い折り方も知ってるけど、それはあなた次第だよ、いいね?」
ジーナは相手に警告した。
キリサメは左腕を抑えられ、右手は手錠に繋がっている。
もうどうにもできない状況だ。
そう思った、しかし、このキリサメは違った。
渇いた音がキリサメの手から発せられる。
「まさかッ!」
キリサメは右手の関節を外し、手錠からその手を抜き出した。
抜き出した手を元に戻し刀を掴んだ。
更に極められている左腕の関節も外す。
「やっば!」
拘束から逃れたキリサメは刀で斬りつける。
ジーナは咄嗟に飛び下がり回避した。
キリサメはそのまま高く跳び上がり、再び暗闇に姿を消すつもりだ。
腹部にかすめたのか横に赤い線が走り、流血するジーナ。
「でも……間に合った」
跳び上がったキリサメに顔を向けたまま彼女はそう言った。
するとガシャン!という音と共に暗闇の中を何かが飛びぬけていく。
(なんの音?)
キリサメはジーナの方に顔を向けたまま、音に意識を向けた。
しかしその直後、彼女は身体の自由を奪われてしまう。
(ッ!?捕縛用ネット?)
宙に飛んだキリサメを網が捕らえ、拘束したのだ。
拘束されたキリサメは落下する。
「ナイス!シャロとコロちゃん!!」
「コロちゃんがここのセキュリティにアクセスできるポイントに到着。とりあえず侵入者拘束用のトラップの権限を奪えた!ふぅ、なんとか間に合ったみたいだね」
落下してきたキリサメ目掛けジーナが駆け出す。
「いわゆる、こまった?」
落下してきたキリサメにジーナが拳を叩き込んだ。
「黒鉄ッ!!!」
強烈な一撃が胴体に命中。
キリサメの装備が砕け、彼女は飛ばされ壁に激突した。
それと同時に部屋に明かりがつく。
ジーナ達は暗闇から抜け出した。
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