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2nd フェーズ 集
No.59 突然の警報と逃げる看守
しおりを挟むマチェットからテストをクリアしたシャーロットとジーナ。
二人は所長室に案内された。
「二人ともお疲れさまー!!お祝いのご飯だよ!」
ユキチカがクラッカーを鳴らして来た。
テーブルの上にはピザやらケーキなどが並んでいる。
「なんかこういう事がある度にジーナばっかりボロボロになってるよね。本当に大丈夫?」
「まあ、私はこういうのが得意だから。シャロも殺し屋と一緒にいたんでしょ?そっちのがヤバそうじゃない?まあ二人とも無事でよかったね」
シャーロットはジーナの傷の具合を心配して駆け寄る。
「いやー君らならやってくれると思ってたよ!」
そんな二人にヤスシが話しかける。何故か顔の横が腫れてる。
「なんかヤスシさん右頬めっちゃ腫れてません?」
「ああ、これ、ついさっき虫歯が急成長したんだはっはっは!」
シャーロットに聞かれて笑うヤスシ。
「思いっきり殴られたあとじゃないですか」
ジーナが右頬をみてそう言う。
「左頬を差し出してくれても良いんだぞ」
「ははは、残念だったな、おれは週末協会に行くような素晴らしい習慣を持ち合わせてねぇんだ」
左手の骨をポキポキと鳴らすキビに対してそう答えるジーナ。
話していると突然警報が鳴り始めた。
「ん?どうした」
「資料室付近で看守の1人が怪我をして倒れていました!」
部屋に看守の1人が入り報告する。
「資料室?あの周りには囚人いねぇはずだろ?」
「負傷した看守が言うには3人の看守にやられたと」
報告を受けたヤスシは席を立つ。
「なるほど……」
端末に何かを入力する。
「みんな、ここで座って飯でも食って待っててくれ」
ヤスシは部屋の外に出る扉に手をかけた。
「おとうさん、おでかけ?」
「ああ、ちょっとお仕事行って来るわ。ユキチカここ座っててくれ」
ユキチカを自分の席に座らせてヤスシは部屋を出ていく。
施設内を走る3人の看守。
「資料を無事確保。あとはここから脱出するだけだ!」
「ここから別行動で脱出を試みる、邪魔する者は即刻殺すんだ良いな!」
そう言うと3人は別々の方向に走り始める。
「私が一番乗りで脱出してやる。警報がなったから囚人は檻の中へ戻ってるな」
明らかに常人離れしたスピードで走る、看守。
既に囚人たちは部屋に戻ったのか通りは静かで誰もいない。
通路を走っていると突然、物陰から何かが彼女目掛け飛んで来た。
「ッ!!」
彼女は大きく飛び退いてその物体を回避した。
「なんだこれ?岩?」
壁に衝突し砕ける巨大な塊、岩ではなく正確にはコンクリートの塊だ。
「まったく、愛孫がくれた本を楽しんでいたのに。警報の原因はあんたらだね」
そう言って物陰から現れたのは腰を曲げた老婆だった。
「Mrs.ストレングス!」
一方別の通りを進み、広場に出た別の看守。
運動場のようだ。
「こっちの先を進めば船がある筈。それで味方を待つか、まあ皆は陸まで泳げるだろうが念の為……」
走っていると後頭部に衝撃が走る。
「ッぐ!」
衝撃の後に軽い金属音が床から響く。
それを拾い上げる看守、自身の後頭部に当たったのは弾丸だと分かった。
「おや?頭に当たったのに弾かれちゃった」
「貴様は!」
物陰からゆっくりと現れたその者を睨みつける看守。
「どうも、本日二件目のご依頼遂行中の殺し屋でーす」
「ブルズアイ!」
そして逃亡を図るもう一人の看守。
彼女の前には所長のヤスシが立っていた。
「鬼丸ヤスシ!」
「全く悲しいねぇ、身内からこういう事をする奴がいるなんてな。この職場で共に働く仲間だと思ってたのになぁ」
看守帽を外してそう言うヤスシ。
「残りの連中に期待しても無駄だぞ。既に二人送ってる」
「期待なんてするもんか。お前を殺して私はここから脱出するんだ!それに私はラッキーだ」
そう言う相手にヤスシは鋭い視線を送る。
「どういう意味だ?」
「他の所に送ったのはブルズアイだろ?それともう一人はマチェットか?いや、あのばあさんだろ?昔はすごかったって話だが」
そう言って看守は帽子を外し上着のボタンを外す。
「私はラッキーだ!私の足止めが凶悪犯じゃなくてただの所長なんだからな!」
彼女の服を破きチューブのようなものが現れる。
服が完全に破れると黒いチューブが無数の束となった身体が現れる。
チューブの束は筋肉のようにもみえる。
「ひゅー、そんな体してたのか」
「私は他の奴よりも適正があってね、最も戦闘に特化した改造をして貰ったんだ」
チューブは膨らみ、それに比例して彼女の体格もどんどんと大きくなる。
ヤスシを見下ろすほどの大きさになった看守、もうその姿は完全に人のものではない。
「へぇーそう。あ、さっきお前なんて言ったっけ?自分がその……ら、ら」
「ラッキーか?ああ、このままあんたを一思いに捻り潰したら終わりだからな!それにこの刑務所のトップの席を不在にできる、オマケの功績まで貰えるなんてなッ!」
看守はチューブで作った巨大な拳をヤスシに向けて振り下ろした。
「死ねッ!!」
「おいおい、いきなり撃って来たね」
ブルズアイは運動場の椅子やらに隠れながら看守用の小屋の陰に転がり込む。
「それはそっちだろうが!」
「だって私殺し屋だもん。にしても何?その両腕」
相手の両手のひらから銃口が現れ煙を上げていた。
「私は高い射撃能力を改造により得る事が出来た!この両腕に内臓されているライフルでその小屋ごと蜂の巣にしてやる!」
両手のライフルでブルズアイが隠れる柱に射撃を続ける看守。
「高い射撃能力って、腕に銃括りつけたのと一緒じゃん。それだったら私でも出来るよ、銃とガムテープがあれば、そんな大げさな事しなくてもさ」
「お前は弾丸を跳弾させるんだったな!この広い空間である運動場でそれは使えないだろ!物陰はその監視小屋一つだ!」
銃を撃ち続けながら近づく看守。
物陰に隠れながら連絡するブルズアイ。
「もしもーし所長?こいつ標的でいいんだよね?」
「ああ、構わない」
ヤスシにそう言われたブルズアイは連絡を切る。
「さっきは射的相手になってくれって話だったし、使う機会無かったけど」
銃を横に薙ぎ払うようにしながら発砲するブルズアイ。
「なに!横から弾丸が……!!?」
看守は横から飛んで来た弾丸を受ける。
「な、なんだ?跳弾は使われなかった。どうして横から?!」
「世界一の殺し屋なんて呼ばれてんだ、弾道を曲げるぐらい出来ないとね」
そこから更に数発発砲するブルズアイ、弾道を曲げられた弾丸は全て相手に命中するが効いている様子はない。
「でもちょっと威力不足だな。同じ場所に撃ち続ければ問題無いんだろうけど」
物陰から飛び出すブルズアイ。
「来たか!無駄だぞ!私は腕だけでなくこの目も改造している!貴様の動きは手に取るように見えているぞ!」
「そうですか」
ブルズアイは相手目掛け発砲。
「くっ!」
目に飛んで来た弾丸に気付き、目を閉じてしまう看守。
その隙をついてブルズアイは相手を組み伏せた。
「目に何か飛んで来たら目をつぶってしまう。改造しようが条件反射って中々抜けないよね。私もコントロールするのに苦労した、なんども飛んで来た小石を目で受ける訓練をしたよ。こうならないようにね」
ブルズアイはそのまま一回り大きな銃を取り出した。
「これだったら、このご自慢のボディにも綺麗な風穴を開けられる」
「や、やめろ!私を殺したら情報が!いいのか!」
銃口を突きつけられた看守はもがいて逃げようとするが何故か逃げられない。
「なに言ってんの?私は殺し屋であなたは標的、”的”は撃つ為にあるんでしょうが」
低く重たい破裂音が数回響く。
「よし、今回のお仕事も終了っと。という訳でこっちは終わりでーす」
動かなくなった相手をみてから、カメラに向かって手を振るブルズアイ。
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