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2nd フェーズ 集
No.60 一番強いから
しおりを挟む突然の警報が鳴り響く
どうやら看守たちが裏切り情報を盗み出したようだ。
その内の1人を殺し屋であるブルズアイが仕留める。
カメラに向かって手を振るブルズアイを見て、ユキチカがモニターの映像を切り替える。
「じゃあ次!」
次の映像にはストレングスが映っていた。
「ってストレングスさん?!」
「あ、あの!ブルズアイ様やヤスシ様は分かるのですがMrs.ストレングス様は?大丈夫なのですか?!」
シャーロットとウルルが驚いた様子で聞く。
「ああ、安心しろ」
そう言って現れたのはショットシェルだ。
「ショットシェル。もう動けるんだ、というか私より全然元気そう」
「カラ・ジーナ、闘技場に案内した時わたしが言ってた事覚えてるか?」
ショットシェルは扉の側に立つ。
「え、ああ、初めてあなたが負けたって……」
「そうだ、当時私が全く歯が立たなかった、いや今でもまったくその背中に追いつけない」
「全く、楽しい読書の時間を邪魔してくれててまぁ」
Mrs.ストレングスは椅子から立ち上がる。
立ち上がり、曲がった背筋を正した彼女は200cmは確実にあるであろう高さになっていた。ケープやぶかぶかな服で隠されていた腕や足は丸太のような太さをしており、彼女が筋骨隆々の肉体を所有している事は一目瞭然だった。
「その相手こそが彼女、伝説の傭兵Mrs.ストレングスだ」
「おー!おばあちゃんが闘いごっこするの久しぶりだ!すごいんだよ!」
「え……」
「なんと……」
「なにこれ、これがさっき満面の笑みで私達にクッキー食べさせてくれた人!?」
絶句するジーナとウルル、シャーロットもかなり驚いている。
「どんなにデカかろうが結局ただの肉の塊、私達の新人類の肉体には敵わない!!」
看守は飛び蹴りを繰り出すと同時に脚から大振りの刃物を展開する。
「なんだい?足にナイフを仕込んでんのかい」
「なに!?」
Mrsストレングスは刃物を右人差し指と親指で止めていた。
もう片方の手で相手の蹴り出した足を掴む。
軋む音と共に刃物が折り曲げられる。
「こんなおもちゃで人殺せると思ってるなんてお笑いだねぇ。人を殺すの武器ってーのはね」
刃物をねじ切り取って捨てるMrs.ストレングス。
空いた右拳を握りしめる。
「や、やめ……!」
足を掴まれている看守は逃げられず、両手を前に突き出し降伏のポーズを取ろうとする。
「こういうのを言うんだよ」
看守の降伏の意思表示も意味をなさず、その腕ごと顔面に拳を叩き込まれた。
拳は相手と共に地面に打ち下ろされる。
激しい揺れと轟音が通路に響く。
「ふん、一発かい。大したことないね新人類様ってのも」
揺れる所長室からその光景を見ていたジーナは口を開けて呆気にとられていた。
「なんて破壊力……」
「な?スゲェだろ?あの人は別格さ」
ユキチカは近くにあるリモコンで別の映像に切り替える。
「つぎー!お父さんの!早くしないと終わっちゃうかも!」
映像には、既に真っ二つにされた無数のチューブの身体の看守が床に転がっていた。
「な、なん……で?」
「お前ツイてねぇよ。お前らにとっておれが1番のハズレくじだ」
落ちた帽子を拾って被りなおすヤスシ。
「なんでここの所長を出来てるか分かるか?」
彼は相手の頭を掴んで持ち上げる。
「一番強えからだよ」
「……ッ!」
相手は怯えて声も出せないようだ。
歯をガタガタ言わせ始める。
「お前なんかより、喧嘩を教えてた頃のユキチカの方がずっと強かったぜ」
ヤスシたちは自分らが相手した看守を連れて所長室に戻った。
「戻ったぞー」
「丁度みんな戻って来たみたいだね」
最初にヤスシ、その後ろからMrs.ストレングスが入って来る。
「ちょっとばあさん早く部屋入ってよ、こいつ重たくて運ぶのシンドイんだ」
「馬鹿だね、運ぶならその重たそうな腕はいらないじゃないか。というかアンタの生きてんのかい?」
Mrs.ストレングスの影に隠れていたがブルズアイも部屋に戻ってきたようだ。
「え?ああ、胸に風穴開けたからな。心臓があるなら死んでるんじゃない?サイボーグ殺すの初めてだからよく分からないけど」
捕まえた看守を床に置く3人。
「ブルズアイのはまあ死んでるとして、こっちとストレングスのは生きてるな」
「ああ、情報を聞き出す為に手加減しておいたよ」
話してると後ろからユキチカが二人に呼び掛ける。
「あ、二人ともまってー」
「ん?どうしたユキチカ?」
ユキチカは何か道具を取り出す。
「情報しゅーしゅーの前にこれしとかないと。シャロ手伝ってー」
「え?あー、そういう事。OK」
シャーロットも呼ばれて準備を始め、二人は道具を手に取る。
それから少しして、ヤスシは看守を叩き起こす。
「ほら、起きろ」
「ッ!くそ、あんたらなんなんだよ!」
「そりゃこっちのセリフだ。お前らなんだ?先にアドバイスしておくが正直に話した方がいい。ストレングス、頼んだ」
Mrs.ストレングスが交代して看守に立つ。
「情報屋の腕の見せ所だね」
「ふふ、そんな事してみろ。お前らも一緒に吹き飛ぶぞ」
余裕そうに振舞う看守、彼女は足が機械だった者だ。
「ああ、自爆装置だろ?そんなもんお前らが気を失ってる間に解除してもらったよ」
「は?」
ストレングスがそう言って後ろにゆびを向ける。
「ジャジャーン」
「お休みの間に取り出しちゃいました」
ユキチカとシャーロットの手には自爆装置と思われる物が。
「な……!?」
「わ、分かった!話すから!」
チューブの身体を持つ看守がそう叫ぶ。
「さっきに比べて随分と話が分かるようになったじゃないか」
ヤスシが後ろでそう言う。
「おい!ダメだ!」
「黙りな、コイツは今私と話してんだよ」
凄まれた機械足の看守はビクッと身体を震わせ俯く。
「まずお前らはどこの所属だ」
「は、ハウンド、警備会社ハウンドだ」
(キリサメって人と同じ……)
ジーナとシャーロットも同じことを考えていた。
先ほど教えて貰った黒い忍者姿の殺し屋が所属している会社。そこからこの者達も来たというのだ。
「へぇ、今時の警備会社はみんなこんな身体に改造されてるのかい?」
Mrs.ストレングスは相手の頭を掴む。
「ふざけた事ぬかしてんじゃないよ、一企業がこんな手の込んだ事出来る訳ないだろう?騙そうとしたら頭を握りつぶすからね」
「ほ、本当なんだって!!」
慌ててウソをついていないと言う看守。
「じゃあこの身体について説明してくれないかい?あんたの会社がしてくれたのか?それとも他に関わってるところがあるのか」
「そうだ!この身体はハウンドに改造してもらったわけじゃない!この身体は!」
「お、おい!」
Mrs.ストレングスの質問に対して答えようとしたその時、チューブの身体を持つ看守は頭を何者かに撃たれてしまう。
「っ!」
皆が振り向くと両腕を改造した看守が倒れた状態のままで腕の銃を構えていた。
「口の軽い連中だ……貴様らは新人類の名をかたるのに相応しくない」
「あれ、まだ生きてたんだ。つーか性格変わってない?」
そう言ってブルズアイが相手の頭部を撃ち抜いた。
「く、くそっ!!」
チューブの身体を持つ看守がチューブの束の中から拳銃を取り出し背中を向けていたヤスシに狙いを定めた。
「おとうさんを撃っちゃダメ!!アサルトアーマー!」
相手が撃つよりも早くユキチカが飛び出し、盾を展開して相手の銃弾を防いだ。
「なに!?」
そのまま盾で相手を縦に斬り裂いた。
「活動の完全停止……確認」
倒れた相手をみてユキチカはそう呟く。
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