強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす

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3rdフェーズ 散

No.63 警備会社にお邪魔しよう

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インファマス刑務所への帰省を終え、9月の半ばになった。

そんなある日、非番のキビとコウノはドライブをしていた。

「先輩、今日の用事ってなんですか?わざわざ非番の日を合わせて」
コウノは運転をしながら話す。
どうやらキビの方から今回のドライブの話を持ちかけたようだ。

「この前話したハウンドって会社覚えてるか?」
キビがそういうとコウノは頷く。

「この前先輩が話してくれた、あのキリサメって殺し屋が所属してる会社ですよね?」
「そうだ、それとインファマス刑務所に忍び込んでたサイボーグ連中の出所」

キビは後ろに置いていた鞄を前に持ってくる。

「そこがどうしたんですか?」
「今日はそこに潜入する」

鞄から何かを取り出すキビ。

「え!潜入ってどうやって……それもしかして化粧品入ってるんですか?!」
「ああ、大昔に就職祝いで貰ったものだ」
キビは化粧品を取り出す。どれも封は切られているが全く減っていない。

「いやいやいや!それいつのですか!」
「え?うーん十年ちょっと、あれこんな色だったっけ?まぁいいか」
化粧品の蓋を開けようとするキビを止めるコウノ。

「ダメです!絶対ダメです!先輩は知らないかもしれませんが、化粧品って腐るんです!私の貸しますから!」
「ええ?そうなのか。ああそこ曲がって」

話をしていると2人は目的地に到着した。

そこは高級スーツを扱っている店だった

「色々と準備するのに時間がかかっちまったがな。よし、一旦ここで服着替えるぞ」
「着替えるって、ここ結構いい値段するスーツ扱ってる店ですよね」

キビが先に車を降りる。

「もう買ってあるから」

店の前に行くと人が扉を開けて出迎えてくる。
珍しい人間が接客している店だ。

「ようこそお越しくださいました。ご予約された品物はこちらにご用意しております」

「お前はそっち」
2人は別々の部屋に入り着替えを済ます。

「行ってらっしゃいませ、良い一日を」
店員に見送られ車に乗り込む2人。

2人はスーツに着替えるだけでなく、化粧もしてもらえたようだ。

「お化粧も一緒にしてもらえて良かったですね」
「ああ、流石いい値段するだけあるな」

エンジンをかけるとコウノはスーツの意味を考え始める。

「なんでこんな高級スーツを?は!もしかして凄い良いレストランでご馳走してくれるんですか!そこで潜入の作戦会議とか!?」
キラキラと目を輝かせるコウノ。

「私がそんな所行きたがると思うか?」
「ですよねー」
コウノはため息をつきながら車を出す。

「ハウンド超大手の警備会社じゃないですか。社内の機密情報見せてくださーいで渡してもらえるとは思えませんが」

「だからちょっと芝居をする。これから私はある企業の社長、新しいビルにオフィスを移すんだがそこのセキュリティに不満があってハウンドに乗り換えようか考えている」

キビはそういってメガネをかける。

「コウノは私の秘書だ、名前はースズキだってよ、ほらこれ」
鞄から1枚のカードを取り出す。

スズキ・イクバと書かれた身分証だ。

「なるほど、とうとう身分を偽るんですね」
「これの準備に時間かかったんだ、因みに私はーっとモモ・トウコ?!もうちょっと当たり障りのない名前無かったのかよ」

自分の身分証をみて文句を言うキビ。

「はぁ、もちろんやりますけど。バレたらどうするんですか?警察の人間が身分詐称で逮捕とかニュースになっちゃいますよ」

「はは!甘いな、ニュースにすらならねぇさ。バレたら全力で逃げる」

笑ってそう答えるキビ。

2人はハウンド本社に到着した。
ゲートで身分証を渡し、予約している事を確認され敷地内に入っていく。

「つまりノープランって事ですか……もう驚きませんが。ここでどんな情報を?」

「何でも良い、なるべく奥にある情報が欲しい。あの殺し屋が所属している会社だからな。何にもないって事はないだろ」

キビとコウノは車を降りる。

ハウンド本社は高層ビルと横に広い建物で構成されており、どちらも黒とグレーで統一されていた。2人はビルの正面入口に向かう。

「お待ちしておりました。モモ様。本日担当させて頂きます、マモルと申します」
正面入口の前には2人を待つ黒スーツの女性がいた。

キビとコウノは彼女に軽く挨拶をし、ビルの中に入る。

「まずはこちらに手荷物を、その後にゲートをお通りください」

荷物を預け、金属探知機のゲートを通る2人。

「流石、設備もしっかりしていますね」
「ええ、弊社は防犯設備の開発と販売も行っておりますので。社内の設備は全て弊社が開発したものです」

説明をきいて興味深そうに頷くキビ。

「うちにも置きたいなこれ」
「ちょっと社長。うちは空港じゃないんですから、この設備はうちには大げさ過ぎますよ」

秘書役のコウノがキビにそういう。

「えー、そうかなぁ。すみません、うちの秘書は手厳しくてね」

そんな社長と秘書の役をしながらも2人は案内役のマモルの後ろについていく。

「この度は移転先のオフィスのセキュリティに関する件でお間違えないですか?」

「そうなんだ、そこのビルのセキュリティを管理している会社がどうも信用ならなくてね。やっぱりこういうのは大企業の方が信用できるだろ?だからハウンドさんにちょっと話を聞いてみようと思ってね。もしよかったらここの設備も見せてもらえるかな?実際にどういったものがどういう風に使われているのか見てみたくてね」

キビは相手の質問に答えると、相手は頷く。

「畏まりました、では少し弊社の見学も」


少し進むと彼女達の進行方向に大人数が列をなしているのが見えた。

「はい、それではこちらに来てくださいねー」

「あれは?」
キビはマモルに向かって話しかける。

「ああ、本日は学生さんが職業体験をする為に来ておりまして」
「へぇーなるほどね……」

(あれ、あの制服って)
学生の服に見覚えがあるキビ。
丁度同じことを考えていたコウノが小声で話しかける。

「先輩あれ」
「ああ、なんてタイミングだ」
その制服はユキチカの学校のものだった。

「どうされました?」
「ああ、いえ、すみません……ちょっとお手洗いを借りてもいいかな」

キビが振り向き尋ねる。

「ええ、ご案内いたします」
「いや、場所さえ教えて貰えれば。話は私の代りに秘書が聞くから進めておいてくれ」

キビはコウノと案内役のマモルを先に行かせて、近くの化粧室に入る。



「はぁー、どうするかな」
洗面台の前に立つキビ。

「キビさん?」
化粧室の一番奥の扉が開く、そこから出て来たのはシャーロットだった。

「シャーロットちゃん」
「なんでこんな所に?」
シャーロットは少し驚いた様子だ。

「情報収集。とりあえず今はモモ社長って事で」
キビがそう答えるとシャーロットはキビの状況を察した。

「あ!じゃあ丁度よかった!これ使ってください」
「何それ?」
シャーロットはポケットから小さい衣服につけるボタンサイズの何かを取り出し、それをキビに渡した。

「ここのネットワークに侵入しようと思ったんですけど、最深部は侵入できないんです。あの【光のシャボン玉】の施設と同じで、ネットワークが分断されてるんです」

「ちょっとまって、なんでこんなのを」
キビに質問されると、ああ、とシャーロットは頷いて答える。

「実はここに職業体験こようってなったのはユキチカが言い始めたんです」
「それはなんとなく予想出来てたけど。でもどうやって、繋がりがないでしょ」
シャーロットは自身の端末を操作して一枚の画像をみせた。

「それが……ユキチカの家を警護している人たちの会社が最近ここと合併したみたいで。この人に頼んだんです」

「なるほど、その人か」

彼女がキビに見せたのはユキチカの家を警備しているケイの画像だった。

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