強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす

文字の大きさ
71 / 135
3rdフェーズ 散

No.71 デウス・エクス・マキナ

しおりを挟む

アンジェラが幼い頃、彼女はずっと母親と共に研究室にいた。

「お母さん何してるの?」

「うーん?この前描いた設計図じゃ上手く行かなかったから、新しいのを描いてるのよー」

母親は常に何かに向かっていた、作業台か、モニターか。

そんな忙しそうな母親だったが、アンジェラと話す時は可能な限り彼女の方をみて話すようにしてくれていた。

「失敗しちゃったの?だいじょーぶ?」
「だいじょーぶ!失敗はね、お母さんに新しい事を教えてくれるのよ、だからぜーんぜん、むしろヤッター!ってなるの」

アンジェラに向かって明るい笑顔を浮かべながら話す母親。

「失敗なのに?」
「そうよ、人はね失敗から学ぶ事が出来るの」

人は失敗から学ぶ事が出来る、これは母親の好きな言葉であった。



「プライスさん!」
「……ッ!!」
倒れたプライスを呼ぶジーナの声で、アンジェラの意識が現在に戻って来た。

「ああ!!な、なんで!?」
動揺するアンジェラ。

プライスは肩から出血していた。

「アンジェラちゃん、銃を使った事は?」
「え……?な、無いけど」

「貸してもらえるかな?」
シャーロットは動揺するアンジェラに近づいて銃を貸してもらう。

「弾はよし、安全装置よし。ジーナ!」
「分かった、私はコイツで、シャロは2人と一緒に先に進んで!」
ジーナは近くにあった金属製の手すりをへし折り、即席の武器を作った。

「じゃあその前に」
銃を構えるシャーロット。

(見た感じ相手は最新型のウルルに武装を施したタイプ。武装は全て後付のもの、基本スペックは変わらないのなら)
シャーロットが数回連続で発砲、アンドロイドの脚関節を撃ち抜いた。

「よし!ジーナ、そのアンドロイド達は武器をくっつけただけで他のアンドロイドと耐久性は変わらないよ!」

「オッケーシャロ!」
ジーナはそう言って倒れたアンドロイドの頭部を破壊した。


「アンジェラちゃん、ここで一番安全な所は?」
「え、えっと……こっち!」

アンジェラが指さす方向にシャーロットはプライスと共に進む。

「プライスさん大丈夫ですか?!」
「撃たれるって痛いってよりは熱いんだね。でも自分で歩けるから大丈夫かな」

先に進むとそこは仮想現実装置とウルルがいる部屋だった。

「ウルル!」
「シャロ様!?先程の音は一体?」

シャーロットは銃を机に置き、プライスを近くの椅子に座らせる。

「後で説明するから!」
ウルルの拘束具を外そうとするシャーロット。

「だめ……ッ!ウルルちゃんは……行かせないッ!」
「ちょっと今それしちゃうの?」

アンジェラに背後から銃を突き付けられるシャーロット。

「アンジェラちゃん、もうやめようよ、君のお母さんもこんな事望んでいない。ここはひとまず」

「指図しないで!そうやって母親づらして!そういう所がムカつくのよ!本当の親でもない癖に!あんたなんかここで、ここで、そのまま……!」

震えた声を上げながら、アンジェラは銃をプライスに向ける。

「待ちなさいッ!」
「ウルル……?」

ウルルが怒鳴った。

「今なんと言おうとしたのですか?心に思ってなくとも、そんな言葉を使ってはいけません。ましてやこれだけ無償の愛を向けてくれるような方に!」

「ウルルちゃんも黙ってて!あなたに何が分かるの!?」

アンジェラはウルルの方を振り向く。

「その方のアンジェラさんを思う気持ちは見れば分かります。肩に怪我を負いながらも、その対処よりもアンジェラさんを優先している事から明らかです。そんな方、世界を探してもめったに会えない、本当に大事な存在なんですよ!」

「そ、そんな、そんな事言われたって……」

自身の考えが整理できないのか、アンジェラは言葉に詰まる。


するとその部屋に全力疾走するジーナが飛び込んで来た。

「ジーナ!?」
「はあ、はあ、お取り込み中だった?ごめん。でもちょっと面倒な事になってね」

そう言って振り向くジーナ。

「うわヤバ!みんな伏せて!」

皆が伏せた直後、扉を破壊して何かが侵入してきた。

「ターゲット確認、他敵性存在を多数確認、いずれも排除します」

侵入して来たのは3m程はありそうなアンドロイドだった。

「何あれ!?」
「少し遅れてやってきた敵の大将だよ」

「プライスさん、アンジェラさん!早くこちらに!」
ウルルが二人を連れて物陰に向かう。

「さーて、どうしますかこれは」
「あの装甲、アンジェラちゃんの銃も通用しないね」

ジーナとシャーロットがアンドロイドを見上げる。

「敵性存在の排除を開始します、レーザー砲発射準備」

アンドロイドが両腕を地面に突き刺し、胴体部分を展開する。

「ああもう!」
「流石に無理かも!」

ジーナ達も攻撃するものの全くビクともしない。



「あーあー!とりゃ!」
もうダメかと思われたその時、ユキチカが現れた。

彼は現れると同時にアンドロイドを蹴り飛ばした。

「みんなだいじょーぶ?」

「ふう、遅いよ大将」
「本当にね、流石に今のはギリギリだった」

「ごめーん」

ジーナとシャーロットに謝るユキチカ。

「発射準備中断されました、敵性存在は未だあり、再度発射準備を行った後に一斉排除します」

蹴り飛ばされたアンドロイドが起き上がる。

「まだ動くのね、シャロ、ユキチカ!どうする?」
「中枢の位置は身体の中心にあるんだけど装甲が頑丈過ぎて!」

「うーん、じゃあレーザーでビューン!でもエネルギーが足りないな」

3人の話が次の手を考えている。

「エネルギー……、アンジェラさん!発電機はもう稼働してますか?」
「してるけど、どうして?」

アンジェラの返答を聞いてウルルは頷く。

「ユキチカ様!」
「オッケー!」

ユキチカがウルルの元に来る。

「これ設備と接続させて、シャロ、ジーナ、ぼく目に使ってるエネルギーも使っちゃうから代わりに狙って」

そういってユキチカは体からコードを出してウルルに渡す。

「了解!」
シャーロットとジーナもユキチカの元に行く。

「あの時よりエネルギーは少ないからー」
ユキチカは両腕を変形させる。

シャーロットとジーナが変形し砲身となった腕をウルルが寝かされていた台に設置。
狙いを定めて二人で固定する。

「よし!狙ったよ!」
「そんじゃよろしく!」

シャーロットとジーナから合図を貰ったユキチカは施設のエネルギーを一点に集中させる。

「発射ー!」
集中させたエネルギーをレーザーとして放った。

アンドロイドの中心をレーザーが貫く、これによりアンドロイドのは機能を停止した。

「ふぃー、けふっ」
口から煙を吐くユキチカ。

「なんとか、なったね……」
ここでプライスが倒れてしまう。

「プライスさん!」
皆が彼女に駆け寄った。

「ああ……!死んじゃだめ!お母さん!」

「やった、初めてお母さんって呼んでもらえた……へへへ」
プライスが笑う。

「今救急車を手配しました、大丈夫です必ず助けます」
「ウルルちゃん……」
アンジェラがウルルをみると、ウルルも彼女の顔を見る。

「大切な友達のお母さまですから、絶対に助けます。私たち従者アンドロイドにはご主人様が怪我をされた際に応急処置が出来る機能が備わっています」

ウルルの腕が展開し、手当てに必要な道具が出て来る。

「当然私はそのあたりも改造されているので、では始めます」



「助かったよ。医者はなんとも無いって、まさかあの場で縫合までしちゃうなんてね。君のご主人様が麻酔を持ち合わせていたのにも驚いたけど」

病院のベッドで横になっているプライスがそう言う。

「良かったねー」
ユキチカがアンジェラにそう言う。

「う、うん」
「アンジェラさん、ほら」
ウルルがそっとアンジェラの背中を押す。

「その、守ってくれてありがとう、プライス……おか、お母さん」
「おいで」
ベッドの上をポンポンと叩くプライス。

アンジェラがベッドの上に座るとプライスが端末を取り出した。

「日誌は研究の事ばかりだったでしょ?彼女って昔からそうでね、公私混合させないためにプライベートな日記も作ってたの」

画面にびっしりと文字が書いてあった。

「そこにはアンジェラちゃんの事しか書いてなかったよ」
「……!」

アンジェラはその画面を見て、目を見開く。

「そこまで貴女を愛した彼女の代わりになれるのか、自信が無かった。きっと私も無意識に距離を作ってたんだろうね。だから家から出る時も別々だった。別荘もね、貴女が喜ぶと思って買ったつもりだったけど。もしかしたら自信が無いのを物で埋めようとしてたのかも」

そう言ってプライスはアンジェラの肩に手を置く。

「ごめんね、こんな情けない私が母代わりで」
謝るプライスをアンジェラは強く抱きしめた。

「ううん、ありがとう……」
「こちらこそありがとう。もっと早く、出来ればこんな危険なことになる前に話せば良かった。でもしょうがない、人間は失敗から学ぶことが出来るからね」

プライスはアンジェラに腕を回し抱きしめた。

「でも銃を持ってたのは関心しないぞー」
「えー、それはもう怒らないって言ってたじゃん」

二人は抱きしめあいながら笑う。

「一件落着!」
「だね」
「はぁ、今回も中々刺激的だった」
ユキチカ、ジーナそしてシャーロットが二人を見てそう言った。

「……これがデウス・エクス・マキナというものでしょうか」
ウルルはユキチカを見てそう呟いた。

「?」
ユキチカは首を傾げた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界で農業を -異世界編-

半道海豚
SF
地球温暖化が進んだ近未来のお話しです。世界は食糧難に陥っていますが、日本はどうにか食糧の確保に成功しています。しかし、その裏で、食糧マフィアが暗躍。誰もが食費の高騰に悩み、危機に陥っています。 そんな世界で自給自足で乗り越えようとした男性がいました。彼は農地を作るため、祖先が残した管理されていない荒れた山に戻ります。そして、異世界への通路を発見するのです。異常気象の元世界ではなく、気候が安定した異世界での農業に活路を見出そうとしますが、異世界は理不尽な封建制社会でした。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...