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3rdフェーズ 散
No.72 閉幕後のお菓子
しおりを挟むジーナ達はウルルと彼女を誘拐したアンジェラがいると思われる古い施設に向かった。そこではアンジェラがひそかに仮想現実装置の研究を行っていた。
彼女にウルルを解放するように要求した矢先、アンドロイドの集団が襲撃をしかけてきた。
途中参戦したユキチカの助けもあって、この襲撃を乗り越えたジーナ達。
「まさか新型を破壊するとは。まだ持っていたんだなレーザー兵器……やはり侮れない。まあ、No.13U223577が無事だったから良しとするか。欲を言えばあの娘が抜き出したデータでもあれば良かったのだが」
破壊された大型アンドロイドを映像越しに見てそう言う仮面の男。
(にしても……やはりあのアンドロイドには何かがある)
手を叩く仮面の男。
「面白いものも観れたことだし、ここは一旦閉幕とするか。アンドロイド達の回収を忘れるな、後片付けはちゃんとするんだ」
部下達にそう告げて仮面の男は部屋を出ていく。
一方、プライスがいる病院。
「ジーナさん、ちょっと良いかな」
病院にいるプライスがジーナを呼ぶ。
「君が聞きたがっていたハウンドの情報、まだ君に話していない事があるんだ」
「この前は話の途中で色々おきましたからね。そっち行きますよ」
ジーナがベッドで横になるプライスの側に行く。
「ハウンドが兵器の実験に使われているって言ったよね。その兵器って言うのは何も銃火器とか戦車とかじゃない。もっと厄介な物だ」
「もっと厄介って、今回のアンドロイドみたいな?」
頷くプライス。
「そうだ、兵器転用したアンドロイド、そして人間そのものを兵器のように改造している。表向きは事故や病気などで失った身体機能を取り戻す医療事業だが、その中でも戦闘経験がある者など適合者を見つけて人間兵器に改造しているんだ」
「なんでそんな事を」
「具体的な目的は分からない。だが売る相手なら想像がつく、この国は平和だが世界規模でみたら紛争なんて珍しいものじゃないからね。世界中の戦場を連中の兵器が支配する事になれば、一体どの勢力が連中に歯向かえるって言うんだろうね」
そう言ってため息をつくプライス。
「前も話したようにウルティメイトは金には困っていない。だから単なる商売の為にやっているとは思えない。だから目的は不明なんだ、そこが連中の恐ろしい所でもある。企業は基本営利目的、利益を追求する団体のようなものだ。だが連中にはそういう意図が見えない、表向きはそう言っている部分もあるがどうも真意だとは思えなくてね。あれだけの大企業なのに目指している方向が予測できない」
「目的が不明な巨大な存在……確かに不気味ですね」
「それともう一つ、ウルティメイトについて知っておいた方が良い事がある」
そう話すプライスの声はより一層真剣なものになる。
「今回の襲撃の件、君はヒメヅカやリリィの仕業だと思ってるだろう」
「違うんですか?」
「あくまでも個人的な意見だがね、私も彼女らには何度も会っているし共に仕事をした事もある。勿論そこで見せてくれたのが彼女達の全てではないだろうが、彼女らはこのような手段に出るとは思えない。ヒメヅカはちょっと怖い時あるけど、それでもあんな兵器を投入するなんてしない。ましてや今回の狙いはアンジェラだった、子ども相手に……」
プライスは病室の外でシャーロット、ユキチカ、そしてウルルと話すアンジェラを見詰める。
「それじゃあ一体誰が?ウルティメイトじゃないとでも?」
「いや、ウルティメイトさ。つまりこうだ、連中も一枚岩じゃない。リリィもヒメヅカも警戒しておいて損はないだろうが、本当に危険なのは別にいる」
「その人は」
一度深く息を吸うプライス。
そして口を開ける。
「仮面の男」
「仮面の男?」
ジーナが聞き返す。
「ごめんね、本当にそうとしか言えないんだ。直接会ったことは1度だけでね、体格は君の友達ぐらいの大きさで。だから最初彼を見たときは驚いたよ、ああ、でも全然違う。仮面の男は口調は丁寧だが隠しきれない冷酷さがある、話しているだけで背筋が冷えるような奴だ。それに引き換え彼は良いね、常に明るくて朗らかだ」
「その仮面の男が今回の襲撃を仕掛けたと」
「もしかして今までに手荒な連中を相手にしたことがあるんじゃない?随分と慣れてる感じだったからさ。だとしたら奴の関与を疑った方が良いよ、あの男は手段を選ぶような奴じゃない。役目がどうとか話すのが口癖で、他者なんて駒に過ぎないと考えているような奴だ」
そう言われて頷くジーナ。
「確かに、今までなんどかその、ウルティメイト絡みで色々ありましたね」
「やっぱりね。これ以上あの会社に関わるなら、仮面の男には気をつけるんだ。願わくば、奴に一切かかわる事なく君らが過ごせることを願っているけどね。もっと本音を言えば学生の君たちがもう危険な事はしないでくれると安心できるんだけど……」
ジーナが肩をすくめる。
「だよね、この一日で君たちがどういう人たちなのかよく分かった気がする。まぁ何かあったら私の所に来るか連絡して。きっと君のお友達なら傍受されない通信手段作ってくれるでしょ」
「ありがとうございます」
連絡先を書いたメモを受け取りお礼を言うジーナ。
一方その頃ウルル、シャーロット、そしてユキチカはアンジェラと話していた。
「そう言えばアンジェラさん、私がアンドロイドだと確信した理由は聞かせて貰いましたが、そもそもなんで私がアンドロイドなんじゃないかと思ったんですか?」
「ああ、確かに、入会者を片っ端からアンドロイドかどうか探ってるの?」
ウルルとシャーロットがアンジェラに質問した。
ユキチカは自動販売機のお菓子を選んでいる。
「ううん、違うわ。実はね、ネットで知り合った友達にあなたの事を教えて貰ったの。まるで人間みたいに振舞うアンドロイドがいるって」
「その友達って?」
シャーロットにそう聞かれてアンジェラは自分の端末を取り出してあるものを起動させる。
どうやらゲームのようだ。
「ハヴァって人、会った事は無いけど。ゲームで知り合ったの」
「ああ、これ知ってる。オンラインゲーム、私はあまりこういうのやった事ないけど流行ってるよね」
「そうなの、装置の研究の息抜きにね。学校の友達が話してて」
アンジェラの話を聞いて驚くシャーロット。
「え、学校に友達いるの?!」
「ちょっと何その反応!こう見えてもちゃんと学校は行ってるんだから!」
シャーロットはうつむく。
「わ、私よりちゃんとしてる……」
「でも今のシャロ様にも私達がいますし、学校にも通えてるじゃないですか!」
ウルルが必死で励まそうとする。
「そ、そうだね」
震えた声でシャーロットはそう言った。
「お菓子買って来たよー!添加物クイズしよ!」
ユキチカが大量のお菓子を抱きかかえ現れる。
自販機のものを買い占めたのだろうか。
「今更蒸し返すのもあれだけど、本当に良かったの、お母さんの大事な装置壊しちゃって。あの時レーザー撃つ為に大量のエネルギーを扱ったからその影響でさ」
「んっ!」
シャーロットの言葉でお菓子を運ぶユキチカの手が止まる。
「もういいの……本当はね、知ってたんだ。あの中にお母さんはいないって。研究の中で何度もあの装置内のデータを見た、だからお母さんがあの中にいないのはすぐに分かった。それでももしかしたら私が知らない方法で、観測できないデータとして中にいるかもって。そう自分に言い聞かせてここまで来たの」
「アンジェラさん……」
「でも今日限りでその盲信もおしまい!私宗教なんてーってバカにしてる所あったけど、結局私も自分が生み出した妄想を信仰してたんだね。それに気づいて今はすごいスッキリした気分。ようやく今に目を向けられたの」
そう言ってアンジェラはプライスをみる。
「はぁー少しの間お別れだね。みんなはもう私の友達なんだからいつでも遊びに来てね、勿論入会なんてしなくていいよ」
アンジェラは3人に話しかける。
「特にウルルちゃん……ありがとうね」
「助けになったようで何よりです」
ウルルの側に寄るアンジェラ。
「でも本当にウルルちゃんって素敵。可愛い顔、でもどこか母性もあるような……」
「え?あ、あのアンジェラさん?!」
ウルルの手を取り顔をゆっくりと撫でるアンジェラは、お互いの鼻が触れる程顔を近づける。
その時の彼女はとろけるような目をしていたと後にウルルは語った。
「おやおや、何やらこっちは盛り上がっていることで」
「あ、ジーナ。お菓子食べる?」
「うん、ってどんだけ買ってんの。晩ごはん食べれなくなるよ」
ユキチカからお菓子を貰い、ウルルとアンジェラのやり取りをみるジーナ。
「ちょ、ちょっとみなさん!なんで鑑賞モードなんですか!」
アンジェラに絡みつかれながらウルルが3人に助けを求める。
「うーん、お熱い二人のスキンシップを邪魔するのもなーってね」
「お菓子まだ残ってるし」
「ごゆっくり~」
ジーナ、シャーロット、ユキチカはそう言って手を振って返した。
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