73 / 135
3rdフェーズ 散
No.73 決定的な証拠
しおりを挟む人気のない港の倉庫にトラックが何台も止まっていた。
「では現時刻をもって商品の受け渡しを終了とする」
「良いビジネスができました」
何やら取引が行われていたようだ。
(おいおい、怪しすぎるだろこの取引)
その現場を物陰から監視するキビ。
「で、早速次の取引ですが」
「ああ、責任者も同行します。なにせ規模が違うので」
(ビンゴ!ようやくだ、もう少しで明確な証拠を提示できますよ、本部長)
その会話を録音するキビ。
話は数週間前にさかのぼる。
キビは警察本部の本部長室に来ていた。
「わざわざ私なんて呼び出してなんでしょうか本部長?」
「あなたの仕事に関するお話です。今後は明確な証拠もなく誰かをつけ狙うような捜査は許しません」
そう言われため息をつくキビ。
「証拠を掴むために捜査するんでしょうが。それに誰かじゃなくてある企業の話なんじゃないですか?」
「もうこの話はこれまでです、これはあなたの為でもあるんですよ。これ以上、上に目をつけられるような行動は……」
「あなたより上って、もう数えるぐらいしかいないですけど」
本部長がそう言うキビ。
「あなたは非常に危うい状況にいるのですよ!男性を捜査に協力させ、あの場所にだって行くのは決して良い事では無いのです」
「でもその許可してくれたの本部長じゃないですか」
「そ、そうですけど。とにかく最近のあなたは一層心配になります」
キビは渋々頷く。
「はぁ、分かりましたよ。それでは失礼します」
とりあえず敬礼をして部屋を出るキビ。
「先輩どうします?」
「今回は流石に本気だな。よっぽどの圧力をかけられたんだろう」
本部の外にいたコウノの元に戻るキビ。
コウノは車の中で待機していた。
「とりあえずお前はいつも通り仕事しろ、私もそうする」
「本当ですか?」
キビが車に乗り込むとコウノはエンジンをかける。
「ああ、勤務時間内はな」
「やっぱり」
そしてそれから数週間がたち、キビは目の下にくまを蓄えた状態でコウノにあう。
いつもより多めのコーヒーを飲む。
「明らかに寝不足ですよ先輩。カフェインの取り過ぎはダメですよ」
「ちょいと最近は夜更かし気味でな、でもお陰でようやく掴めそうだ。シャーロットちゃんが調べてくれたリストあっただろ。最近取引があった会社を一通りチェックしてな」
「全部ですか?」
そう言うコウノに対し首を振るキビ。
「いや、流石にまだ全部は終わってないが。ちょっとこれ聞いてみろ」
コウノはイヤホンを受け取る。
再生されたのは取引の音声だった。
「これって!」
コウノが顔を上げる。
「今夜だ、お前も準備しろ。上には見回りとか言っとけ」
「分かりました」
二人は一通り装備を整え、夜を待った。
「当然、今回はユキチカ達は呼ばない」
「まあそれが当たり前ですよね」
「ここを抑えることが出来れば、ウルティメイト社、あるいはハウンドを追い込める。連中が何を企んでいるのか暴いてやる」
「そうですね」
キビはコウノに車を止めさせる。
まだ目的の港にある倉庫までは距離がある。
「ここからは徒歩で行くぞ」
「はい」
二人は装備を確認した後、車から降りて目的地に向かった。
倉庫のそばには車やトラックが複数台止まっており、なにやら運び込んでいる。
「早く運んでください」
「そちらの代表者の姿が見えませんが、彼女はどこですか?」
取引をしている片方がそう言うと、車から一人の女性が降りてきた。
「どうも、初めまして」
ヒメヅカだ。
(ヒメヅカ!本当に代表が出張って来たな)
見張っていたキビの元にコウノが近寄る
「先輩、確認とれました。積み荷は武装を施されたアンドロイドです」
「それじゃあ確定だな。よし、行くぞ!」
銃とライトを構えてキビとコウノが飛び出す。
「お前ら動くな!警察だ!」
ヒメヅカがキビの顔を見る。
「おや?見覚えがある顔ですね」
「どうも、代表さん。この前渡せなかった名刺の代りに手錠を持って来たぞ」
銃を向けながら挨拶するキビ。
「なんや、キビはんやないか」
「オニツノ、お前もいたのか」
ヒメヅカの後ろにオニツノもいた。
「お前らが今まさに取引している物は違法なものだ」
「なんのことでしょうか」
肩をすくめるヒメヅカ。
「しらばっくれる気か?改造したアンドロイドなんてバッチリ違法だろうが。おい、そこの金髪のお前、お前もこっちに向け」
キビがそう呼びかけると背を向けていた女性が振り向く。
その女性は顔に大きな火傷の跡があった。
「彼女はどこですか?」
先ほど聞こえてきた声と全く一緒の声を首に着けていた装置から出す。
「もしかして、キリサメ?!そうか、ハウンドだからなお前も」
するとキリサメがキビ目掛け突撃してくる。
「このッ!」
キビが銃を向ける。
「とう!」
彼女が発砲するよりも早く、何者かが現れキリサメを蹴り飛ばした。
「ユキチカ!!なんでお前ここに!!?」
現れたのはユキチカだった。
「キビさん!大丈夫ですか!」
キビ達が入った倉庫の入り口からジーナとシャーロット、そしてウルルも現れた。
「ジーナちゃんにシャーロットちゃんそれにウルルちゃんも?!」
突然の登場に驚くキビ。
「おーー!ジーナちゃんやー!!」
「え!?オニツノ!」
オニツノは嬉しそうにジーナに手を振る。
「なんで皆、どうして?」
「コウノさんから連絡があって、それで急いで来たんです」
それを聞いたキビはコウノの方に振り向く。
「ッ……コウノ、お前……!!」
その直後、キビは地面に倒れてしまう。
見ると足に何かが刺さっていた。
どうやらコウノの銃から放たれたもののようだ。
「……」
「え……コウノさん?」
「コウノさん何して……」
ジーナとシャーロットも倒れる。
「はぁ?」
オニツノが顔を歪ませる。
「これは麻酔、コウノ様一体どうして!」
ウルルは皆に駆け寄り刺さっていた針を抜く。
彼女は腕から電気が迸る剣を展開させ、コウノに向かって構えた。
「No.13U223577にベータ権限発動、停止コードを実行せよ」
コウノがそう言うとウルルはその場で固まってしまった。
「通常の停止コードでは止まらないでしょう、この機能は流石に貴方のご主人様も知らなかったみたいですね。良かったです、あなたをここで破壊する事にならなくて」
「コウノ様……?」
そう言ってウルルの機能は完全に停止してしまう。
「おいおい、どういう事や。お前キビはんの部下ちゃうんかい」
「コウノ?」
コウノはユキチカに銃を向ける。
「ユキチカくん、大人しく外に止めてある車に乗ってください。もし従わない場合は……」
「わかった!」
そう言ってユキチカはすぐに車に向かった。
「はっや、もうシートベルトもしてるわ。聞き分けの良いやつやなぁ」
「ではこのアンドロイド達は元の場所へ、それと皆さんも車に乗ってください。お連れしたいところがありますので」
運転席にコウノ、助手席にヒメヅカ、そして後部座席にユキチカとオニツノ、そしてキリサメが座る。
コウノは車を発進させた。
「……せやからなんでワシが後ろやねん!!狭いわ!」
「しょうがないでしょう。ユキチカくんは肉弾戦が得意みたいなので、暴れた際に取り押さえる必要があるんですよ。私だと殺してしまう可能性がありますから」
ヒメヅカが怒るオニツノにそう答える。
「へ、にしても友達が麻酔で倒れたっちゅーのにお菓子食っとるわ」
ユキチカはコウノから貰ったお菓子を食べていた。
「うん?食べる?キリサメも食べる?」
「ん、ええのか?ほな一個もらうわ」
「……」
キリサメとオニツノはユキチカからお菓子を受け取り食べた。
「みんな寝てるだけ。あの麻酔の量だとあと60分で起きる。今日の気温は風邪ひかない、大丈夫」
「ふーん、さよか。ワシらどこに連れてかれんねやろなー」
ユキチカたちを乗せた車は倉庫を離れ真夜中の道を進んだ。
0
あなたにおすすめの小説
異世界で農業を -異世界編-
半道海豚
SF
地球温暖化が進んだ近未来のお話しです。世界は食糧難に陥っていますが、日本はどうにか食糧の確保に成功しています。しかし、その裏で、食糧マフィアが暗躍。誰もが食費の高騰に悩み、危機に陥っています。
そんな世界で自給自足で乗り越えようとした男性がいました。彼は農地を作るため、祖先が残した管理されていない荒れた山に戻ります。そして、異世界への通路を発見するのです。異常気象の元世界ではなく、気候が安定した異世界での農業に活路を見出そうとしますが、異世界は理不尽な封建制社会でした。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
蒼穹の裏方
Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し
未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる