強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす

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4th フェーズ 奪

No.78 知恵をもたらす果実

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 ユキチカを取り戻す為にウルティメイト社の施設に侵入したキビ達。
相手の妨害をかいくぐり、キビは施設の奥に向かって走っていた。

「ユキチカァァァァッ!!」

 すると突然、彼女の前方にヒメヅカが現れた。 
「さっき後ろにいただろ!なんで前にいんだよ!」

「あなたの愛には共感できますが、これも仕事なので」
銃をキビに向けるヒメヅカ。

「ちょっと待ったぁぁ!」
後ろから、オニツノが尻から体当たりした。

「ッ……!この!」
ヒメヅカは発砲した、オニツノに向かって。
動きに一切の躊躇も無かった。

「どわァッ!」
オニツノは転がりなんとかこれを回避。

「なんでやねん!」
起き上がりオニツノが怒鳴る。

「当たり前でしょ、邪魔者は排除せよという話だったので」
涼しい顔でそう話すヒメヅカ。

「なんやとぉッ!?キビはんと喧嘩する前にお前をドツキまわしたろかッ!」
「なんですか?私がいなければ、先回りすら出来なかった癖に」

睨み合う二人。

「はぁ……何やってんだ」
調子が狂うと言わんばかりにキビはため息をつく。

「キビはんはワシと喧嘩するんや、邪魔せんとくれや。坊っちゃんの所にでも行っとくんやな」
「あーもう!まさにそうしようとしたのに!今からしたら、あたかも貴女に命令された風になるじゃないですか!貴女がユキチカさんの所に行きなさい!」
「なんやそのしょーもないプライド!そんなもんはカラッと揚げて食ってまえ!」

額を突き合わせ言い合う二人。

その横を通り過ぎていくキビ。

「あっ!」
「しまった!」

「そこでずっとイチャついてろ!」
オニツノとヒメヅカが気付いた時にはキビはかなり先に進んでいた。

「悪い冗談やでキビはん!ワシはあんたとジーナちゃん一筋や!」
「どこが一筋ですか!貴女が素直に私の命令を聞いてれば!」
「たらればは後や!追いかけるで!」
「っぐ!だからなんで貴女が先行するんですかッ!」

キビの後ろを追いかけるオニツノとヒメヅカ。



「ユキチカ!」
先に進みユキチカを見つけるキビ。

そこにはユキチカの他にヴァ―リ・ジョーンズとコウノもいた。

「あ!カオルちゃん!」
「……!」
後ろから呼び止められたユキチカは振り向く。
コウノは動きを止めるだけですぐに振り向きはしなかった。

「てめぇが親玉か!誘拐の現行犯逮捕だ!両手を上げてこっちを向け!」
キビは背中を向けているヴァ―リ・ジョーンズに銃を向ける。

「警察か、余計な事はしないようにと釘を刺しておいたはずだが」
「余計な動きをするんじゃないぞ」
ヴァ―リ・ジョーンズはゆっくりと振り向く。

「撃つ気かな?それはやめておいた方が良いんじゃないか?」
「この期に及んで泣きつこうってか?」

「違う違う、こういう事だ」
そう言ってヴァ―リは仮面を外して見せる。

「なんで……その顔は」
現れたのはユキチカと全く同じ顔だった。



「キビ・カオル、インファマス刑務所にも出入りできる数少ない者の1人である君なら分かるだろ?これがどういう意味か」

「ユキチカの身体……」

「ご名答、私のこの肉体こそが彼が探してた本当の身体だ」

 ヴァ―リは自身の顔を見て動揺するキビをみて面白がっているのかニヤついている。ユキチカの顔で浮かべた冷酷な笑み、その顔には全く似合わないものだ。

「噓をつくな!混乱させる為のハッタリだろ!整形とかそういうので……」

「じゃあ撃ってみるといい、ちゃんと血が出る。なんなら見せてやろうか」
ヴァ―リはナイフを取り出して自分の掌に傷をつける。

「ほら、ちゃんと赤い血だ。君と同じ」
「……ッ!」

 隙を見せたキビ、ヴァ―リはこれを見逃さなかった。彼は懐から銃を取り出し彼女の右腕を撃った。握っていた銃を落としてしまうキビ。

「やはりこの肉体は不便だ、まだ血が止まらない。こんなに浅い傷だというのに。生物の肉体なんぞそんなもの。制約が多すぎる、人間はいずれこの肉の塊を捨てて新しい身体を手に入れるべきなんだ」

「さぁユキチカくん、尋問の時間だ、エデンの果実はどこにある。教えてくれないとあの刑事さんは死んでしまうぞ」

銃をキビに向けたまま話すヴァ―リ。

「先に行っておくが嘘はつかないでくれよ。ついでにあまり私を待たせ過ぎない方がいい。彼女を殺してもまだ2人いる、君とってはあのアンドロイドも大事な存在だったな、それなら追加でもう1人の計3人だ」

「……わかった」
ユキチカは指を動かす。
それは図形を空中に描いているように見える。

「ユキチカ様!」
「いた!ユキチカ!」

 その時ウルルとシャーロットが現れた。
後ろからはアルファとシータが追いかけてきていた。

 ユキチカの手が止まる、すると突然ウルルの動きが止まり、頭部が開き始めた。開いた隙間から翡翠色の光が溢れる、それは何よりも美しく周囲を照らす。

 ウルルの頭部が完全に展開し、現れたのは翡翠色の立方体。
立方体はゆっくりと、まるで優雅に泳ぎ進む魚のように、落下した。

「一体あれは?データにあるアンドロイドにはあのような物は」
シータが立方体に視線を向ける。

「ああ、あれこそ!それだ!それを取れ!【エデンの果実】だ!」
ここに来てヴァ―リが初めて感情的な面を見せる。
焦った様子で彼はアルファとシータに命令する。

ウルルとシャーロットに対峙していた二人は戦闘態勢を解除。即座に落下するその光輝くエデンの果実に向かって駆け出す。

先にシータが飛び込みそれを受け止めた。

「こ、これは……?!」
エデンの果実の光が一層強まる。
するとシータは突然倒れ、苦しみ始める。

「え、何?どうしたの?ねえウルル、あれなんなの?!ウルルってば!」
シャーロットがウルルに呼びかける。

「しっかりして!ウルル!」

 虚空を見詰めるウルルの体を大きくゆするシャーロット。するとウルルがシャーロットに顔を向ける。しかしまだその目は焦点が合っていない。

「シ、シャロ……様?」
徐々に意識を取り戻してきた様子のウルル。

「良かった、大丈夫?それとあれは何?」
シャーロットが振り向く。アルファがシータに駆け寄り、抱きかかえている。

「シータ!」
コウノも二人の元に駆け寄る。

「ベータ!シータが!」
「アルファ、あなた……!」

 コウノに話すアルファは涙を流していた。再開してから初めて見せる彼女の姿にコウノは一瞬驚くもすぐに視線をシータに向ける。シータは苦しそうにうめき声を上げている。

「頭が……!情報が……があああああッ!!」

「何をしている!はやくそれをこっちに渡すんだ!シータ!!」
ヴァ―リは苦しむシータを気にも留めずに【エデンの果実】を求めた。

 ウルルが3人に近づく。アルファはシータの状態にひどく動揺しているようで後ろから接近されている事に全くきづかない。コウノだけが近づくウルルに目を向けていた。

「失礼します」

 ウルルはシータが持っていたエデンの果実を手に取る。すると苦しんでいたシータの声が止まった。糸が切れたかのようにだらんとアルファとコウノによりかかる。

「すー、すー」
涙を静かに流しながらシータは眠っていた。

「これが私の頭部内に?」
ウルルの掌の上で淡い光を放つエデンの果実を眺めるウルル。

初めて目の当たりにするその美しい物体に目を奪われる。
なんとも温かい光だとウルルは感じた。


「ウルル危ないッ!!!」
シャーロットが叫ぶ。

ウルルが振り向くとそこにはヴァ―リが。

「それを寄こせッ!!」
ヴァ―リはウルルに手を伸ばす。

すぐにウルルは跳び下がり距離を取った。

「え……ユキチカ様……?」
「な、なんでユキチカと同じ顔?」
ウルルとシャーロットはヴァ―リの顔を見て固まる。

「ふん、その反応ももう見飽きたな」
ヴァ―リはユキチカと全く同じ顔でそう言った。

「なるほど、触れるだけで膨大な情報が流れ込んで来るのか。並大抵の処理能力ではその情報量に脳が追い付けないという事だな。シータ程の頭脳を持ってしてもあの様子とは。それにアンドロイドの貴様」

ヴァ―リはウルルに近づく。

「君は明らかに他のアンドロイドと違う。いくら技術の粋を集結させたわが社のアンドロイドと言えど、君ほど人間的な感情を持つなんて事はありえん。恐らくはその【エデンの実】によってもたらされた知性なのだろう」

「アンドロイドである私に知性……?」

「それだよ、今まさに君は驚きという感情を見せている。しかもそのことに違和感や異常性を見出すことすらしない。それはもはや人間と同じだ」

動揺するウルルを見てヴァ―リは話を続けた。

「既に君の知性は人間だ。その違いと言えば体が細胞分裂によって構築されたか、工場の機械で製造されたかの違いくらいのものだ。しかしわざわざ感情なんぞ手に入れてしまうとは……理解に苦しむね」

彼は笑い始める。

「まあいい、君たちの役目は終わった、ここで死んでくれ」

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