80 / 135
4th フェーズ 奪
No.80 追放
しおりを挟む「お姉ちゃんたちをいじめるなッ!!」
ヴァーリの背後からユキチカが現れ、握りしめた拳を放った。
「グッ!?」
殴り飛ばされたヴァ―リは火炎放射を止め、倒れた。
「妙だ、なぜ殴られるまで君の存在を忘れていたんだ?最も注意すべき相手だと言うのに。いくら私が浮足立っているとは言え、考えにくい」
ヴァ―リは頭を振って立ち上がる。
「そこの刑事も完全に忘れていた。君が何かしたのか?」
「お姉ちゃん達いじめちゃダメッ!」
ユキチカがヴァ―リに怒り、彼に向かって走り出す。
「ありがとうユキチカ」
炎に足止めを食らっていたイヴもヴァ―リ目掛け走り出す。
「君ら二人を同時に相手取るのは面倒だ。しかし、ここでなら話は別」
二人を交互に見てヴァ―リは言う。
「フィールド展開ッ!!」
彼の周囲に防壁が展開される。
ユキチカとイヴがその壁に衝突する寸前で手を前に突き出す。
「「ブラスト!」」
両者の手から衝撃波が放たれる。
二人は防壁をその衝撃波で粉砕し、ヴァ―リに接近。
「なにッ!だが」
ヴァーリはすぐに二人に向けてアーマーに装備されている銃を発砲。
二人は銃弾を腕で防ぐ。
(やはりそうか、イヴ……)
「来いッ!我が兵隊ども!」
ヴァーリがそういうと地面からアンドロイドが複数体現れる。
「当たり前のように、戦闘用に改造されてるね」
イヴが相手の武装をみてそう言った。
「あ、それカオルちゃんに見つかったら怒られるよ。ぼくもやったけど」
ユキチカは相手の攻撃をかいくぐりながらそう話す。
「とりあえず殺傷能力のある銃器の搭載させただけ、相変わらずセンスが無いね」
イヴも余裕そうだ。
相手は銃火器に戦闘用の装甲を搭載していたが、どれもユキチカとイヴには効果は無かった。銃弾は避けられるか防がれ、装甲すら彼らの対アンドロイド用の装備の前では無意味だった。
(装甲内部に直接電撃を与えているのか。想定よりも時間を稼げんな)
「すご……」
「さすがの私もあそこまでの戦闘性能は持ち合わせていません」
シャーロットとウルルは、ただこの光景を見ることしか出来なかった。
「どのみちそいつらでどうこう出来るなど思ってない。行けッ!」
彼の号令と共にアンドロイド達はユキチカ達に飛びつく。
「こんなのでも多少の役には立つだろ」
ヴァ―リが手首に装着されていた端末を操作する。
ユキチカとイヴにしがみついたアンドロイドが”ピーッ”と警告音を発した。
「これは……よくないね」
「ぼかーん?」
直後アンドロイドは自爆。ユキチカとイヴは爆発の衝撃で崩落してきた天井や壁の残骸の下敷きになってしまう。
「足止め程度にはなるか。やはり脆い所から崩すべきだな」
ヴァ―リは再び端末を操作した。
他のアンドロイドも同様に甲高い音を上げる、次の標的はシャーロットとウルルに設定されたようだ。
「申し訳ありません、シャロ様。あの爆発に耐えうる装甲は」
「分かってる!一旦引いて態勢を立て直そう!あの爆発程度じゃユキチカとイヴさんなら大丈夫!」
シャーロットとウルルは退く事に。
「えらく判断が早いな。だが逃げられるかな?」
ヴァ―リの言う通り反対側からもアンドロイド達が迫って来ており、到底逃げられるような状況ではない。
「ちょっとこれはヤバいかも!」
「シャロ様は私の後ろに!」
挟まれた二人は壁際で立ち止まる。
「うおりゃァァァァ!!」
アンドロイド達がすぐそこまで迫ったその時、ジーナが壊れた壁の一部でアンドロイド達を押しのけて現れた。
「ジーナ!!」
「ジーナ様!!」
「二人とも大丈夫?!うわ、ウルル怪我してるじゃん!」
ジーナは二人に駆け寄る。
「ええ、損傷はしたもののご心配には及びません」
「ジーナこそあのキリサメと戦ったんでしょ?大丈夫?」
「あー、大丈夫、ん?向こうのデカいメカがヴァ―リ?」
二人の状態を確認して慈七はヴァ―リの方に目を向けてそう言った。
「あれはアーマーで中身がヴァ―リ・ジョーンズ。イヴさんとプライスさんが言ってたウルティメイトの本当のトップ、仮面の男。それに加えてユキチカの身体を持ってる人だよ」
「え!ユキチカの身体を?どういうこと!?」
「説明はきっとイヴ様からして頂けるでしょう。とにかくあのアンドロイドから逃げましょう」
「あ!そうだ今のうちにウルル、ちょっといい?」
シャーロットはそう言って何かを準備し始める。
「続々と来るな。まあいい」
ヴァ―リがそう言うと瓦礫を押しのけてイヴとユキチカが出て来た。
二人とも所々の皮膚が無くなっており、その下に金属のようなものや発光する部品が見えている。
「皮1枚程度か。やはりここは……」
ヴァ―リが端末を操作する事によって周囲にいた全てのアンドロイドが自爆態勢へと入る。
「君ら二人はなんとかなるかもしれんが。他の生身の人間はどうなるかな?」
大惨事を期待していたヴァ―リ、しかし警告音が止まり何故か爆発は起きない。アンドロイド達は一斉に地面に倒れた。
「なにが起きた?」
ヴァ―リは周囲を見回すがもう起動しているアンドロイドはいない。
離れた所でシャーロットが喜びの声を上げた。
「やった!ウルルを介してこの施設にいるアンドロイドのシステム乗っ取ったよ!」
「あの子達を過小評価してたみたいね。ヴァ―リ」
イヴはそう言った。
「まさかこの短時間、今後の改良リストに加えておこう。この場は……そうだな」
ヴァ―リは一番近くにいたアンドロイドの頭を掴む。
「直接起爆させるしかないようだな」
彼が掴んだアンドロイドが再び警告音を発する。そのアンドロイドをヴァ―リはウルル達目掛け投げようとする。
「みんな逃げてッ!」
イヴが振り向きそう叫んだ、その時だ。
「させないッ!!」
ユキチカがヴァ―リに体当たりし、押し出した。壁を破壊しながら、ユキチカはその場から彼を遠ざけていく。
「なるべく仲間から遠ざけようと言うのか?健気だなッ!!」
ヴァ―リはアンドロイドを爆発させる。ユキチカは爆発の直撃を受けるものの一切力を緩める事無くヴァ―リを掴んでいた。
二人は大きな扉を破壊した。
縦に広がった空間があらわれる。
(貨物用エレベーター、もうこんな所まで)
二人は空中に飛び出した。空中に放り出されたヴァーリをユキチカは両足で挟み込む。マウントポジションへ持っていき、両掌をヴァーリに突きつける。
「先の衝撃波かッ!無駄なことだ。先の爆発で君は薄皮1枚程度とはいえダメージを負った。だが私のアーマーは無傷!通用せんよ」
「10倍なら?」
ユキチカの両腕が機械仕掛けの大筒に変形した。
「脅しが通じるとでも?そんな事をすればこの体だって無事ではすまんぞ」
するとユキチカがうーんと唸る。
「こういう時なんて言うんだっけ、えーっとお父さんが言ってた……そうだ!」
「お前が幸運かどうか試してみるか!」
ユキチカの腕の光が強くなる。
「待て!自分の体がどうなってもいいのかッ!」
「バニッシュメントッッ!!!」
ユキチカは一切の躊躇なく両腕に圧縮したエネルギーを衝撃波として放つ。衝撃波は貨物エレベーターの周囲の壁やエレベーター用のケーブルや照明、全てを破壊する。
「ガ……アッ…!!」
ヴァ―リのアーマーは砕け散り、そのまま下にあるエレベーターへと激突。
「あれ、これじゃなかったけ?」
そんな事を言いながらユキチカも降りて行った。
0
あなたにおすすめの小説
異世界で農業を -異世界編-
半道海豚
SF
地球温暖化が進んだ近未来のお話しです。世界は食糧難に陥っていますが、日本はどうにか食糧の確保に成功しています。しかし、その裏で、食糧マフィアが暗躍。誰もが食費の高騰に悩み、危機に陥っています。
そんな世界で自給自足で乗り越えようとした男性がいました。彼は農地を作るため、祖先が残した管理されていない荒れた山に戻ります。そして、異世界への通路を発見するのです。異常気象の元世界ではなく、気候が安定した異世界での農業に活路を見出そうとしますが、異世界は理不尽な封建制社会でした。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
蒼穹の裏方
Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し
未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる