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4th フェーズ 奪
No.90 ゲームの世界へ
しおりを挟むイヴの秘密基地を出発し、その足でアンジェラ達の元にやってきた。
「ウルルちゃん!いらっしゃい!」
「お久しぶりですアンジェラ様」
アンジェラが笑顔で出迎える。
「やあみんな!よく来てくれたね、ハヴァさんから話は聞いている。中に入って」
プライスも顔を出す。
「すみません急に連絡して、押しかけてきてしまって」
「良いんだよ、みんなは私達の恩人だ。さ、早く中に入って」
「ゲームだよね、準備してたよ」
プライスとアンジェラが家に迎え入れた。
「そういえば”げぇむ”ってなんだ?確か試合って意味だよな?」
「豪華なおもちゃとでも思っておけばいい」
キビがシドーにそう答えた。
「なんか彼変わった?あんな風だっけ?」
「ま、まあ色々あったんです。装置の説明をお願いできますか?」
シドーをみて違和感を覚えたプライスの質問に対してウルルははぐらかした。ここで全てを説明すると色々と混乱を招いてしまうからだ。
「OKウルルちゃん。これは私が作ったVRマシン。完全没入型だよ!今は既存のゲーム内に入り込むことぐらいしか出来ないけどね。私が外からナビゲートする」
アンジェラたちが案内した先にはゴーグルのような形状をした装置がいくつも置かれていた。
「それじゃあ早速始めましょうかね。今回は私もナビゲート側でいくね、もう誘拐じみた事されたりドンパチはごめんだし」
アンジェラとプライスは席につく。
「まて、誘拐って」
「よ、よーし!行きましょう!」
キビに問い詰められる前にゴーグルを装着するジーナ。
「それじゃあ素敵なヴァーチャルの旅にいってらっしゃい!」
「うああああッ!!」
装置が起動し、彼女らは電子の世界へと旅立った。
気づけば皆は墓地に立っていた。
「で、ここにいる訳か。どこ?墓地?」
「無事到着!スタート地点だね」
「墓地がスタートってどういうゲーム?」
ジーナが周囲を見渡している。随分と薄暗いスタート地点だ。
「ここがもう”げぇむ”ってのか?さっきまで部屋にいたのに」
シドーはまだ状況をのみこめていないようだ。
「とりあえず先に行った方が良いんじゃないか?」
説明よりもまずは進むことが優先という事でキビは歩き始める。
「ん?なんだこれ、先に進みたいのに走れない!」
「なんか宙に出てる……何これ、三角形が4つ、あとWASD?」
キビやジーナが宙に浮いてる文字に目を向ける。
「そっかチュートリアル!忘れてたまずは前後左右に動いてみてね」
「前、後ろ、左に右と」
「オッケーそれじゃあ次は視点を動かして周囲を見渡してみて」
「周囲を見渡す」
皆は同じように動く。
「それじゃあ目の前の障害物をジャンプで乗り越えて、その次はしゃがんで」
「なぁ、なんでこの倒木を超えるんだ。普通に横の段差を昇ってからいけるだろ」
シドーが道の横を指さす。
「残念、見えない壁があるから行けないよ」
「見えない壁ってなんだよ」
「そういうのがあるの、行きますよ」
シャーロットはゲームに馴染みがあるからか、特に疑問に思うこともなく進む。
「その先に敵がいるから倒して」
道の奥からモンスターが現れた。
「なんだカカシの化け物だ」
「その墓地に巣くうスケアリースケアクロウだね」
複数のモンスターを木の棒で殴り倒す一行。
「よし、倒したぞ」
「OK、走れるようになったから先に進んで」
走り始めると間もなく異変に気づく、全く走れないのだ、走り出してすぐに息切れしてしまう。
「ぜぇ、ぜぇ、なんで……こんな疲れるんだ」
「そうか、はぁ、はぁ、これって……」
息を切らすジーナとシャーロット。
「あーごめんなさい、ゲームの設定で初期はスタミナが全然無いんだった。もう少しだけ我慢して、進めたら初心者特典で色々と貰えるから。まずは村に向かって。その道を進んだらあるから」
アンジェラに言われた通り、みんなはスタミナ切れしないようにダッシュと歩きを交互に行い進んで行く。
「なあ……ふと思ったんだけど。なんで墓場に案山子なんだ?農作物守るもんだろ」
道中にいる敵を倒しながらシドーが質問する。
「うーん、多分怖い印象があるから?レアキャラでピエロも出るよ経験値10倍バフがつくんだ」
「”れあきゃら”?”ぴえろ”?」
「シドーさんの頭がパンクするからそれ程に。ほら村が見えて来たぞ」
首を傾げるシドーの横を通り過ぎ、キビが先に進む。
「おー、RPG作品の初期村って感じだ」
シャーロットが言う通り、森の中にある牧歌的な村だ。
「そこにいる村長にまずは話しかけて」
村の入り口に体の周囲が光っているお爺さんが立っていた。光っているのはプレイヤーに分かり易いようにするためだろう。
「おーよくきたの~旅のお方……」
「あ、スキップしちゃうよ」
会話をスキップされる村長。
「良いのか?」
「ゲームではよくある事なんです、ゲーマーは短気なので」
シドーにそう説明するシャーロット。
「近くの洞窟にいる盗賊団を倒して。そうすれば自由に移動できるようになるよ」
「はいよー」
シドーたちは洞窟に向かい、そこにいる盗賊たちを一方的に討伐した。
「よし、全員やったぞ」
「死にゲーなんだこれ。なんかやたらトラップが多かった」
来た道を振り返ってそういうシャーロット。天井から突き出した槍、横の壁から現れた丸ノコ、落とし穴とどれも中々に殺意高めのトラップたちだ。
「そこちょっと難易度高すぎるって評判あんまりよくなくて。それでも結構パッチが入って緩和されたほうなの」
「おめでとう!これで自由にワールドを探索出来るよ!」
とりあえず洞窟の外にでる。
「ハヴァさんから座標が送られてたから、今からマップに表示するね」
アンジェラはハヴァから得た情報をみていく。
「場所は……おっと」
「どうかされましたアンジェラ様?」
ウルルが尋ねるとアンジェラはふぅとため息をつく。
「厄介な場所に隠されてるね。迷宮197……1番嫌われてるダンジョンだ」
「嫌われてる?あ、もしかしたら聞いたことあるかも」
シャーロットはどうやらアンジェラの言った迷宮とやらに関して話を聞いた事があるようだ。
「このゲームは他のオンラインゲームに比べると高難易度なの。ボスとかステージは初見殺しみたいなギミックを持ってたりね。1度クリアするとその達成感がやみつきになるんだけど、時折バランスを間違えて批評が目立つこともあるの」
「その中で1番嫌われてるのがそのダンジョン」
「つまり1番難しいってこと?」
ジーナが聞く。
「そうじゃないのジーナさん、ただ難しいならコアゲーマーが喜ぶんだけど、理不尽なの。私もそのダンジョンをクリアするのに大分と時間かかったよ」
「流石はアンジェラ様!クリア経験者がいるなら……」
ウルルがそう言うとアンジェラは首を振った。
「違うのウルルちゃん、そのダンジョンが嫌われてる1番の理由はね……」
「攻略法が入るたびに変わるの」
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