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4th フェーズ 奪
No.101 訓練開始
しおりを挟む「ほらちゃんと避けな!」
「早いな本当に!」
ショットシェルの攻撃を回避していくジーナ。
「ジーナ、お前の黒鉄という技は素晴らしい」
「え?なに急に、でもありがとう」
ジーナは褒められてちょっと嬉しそうにする。
「だが前動作が長すぎる」
「しょうがないじゃん!あれは打つ瞬間に全身を固める必要があるし、打つ角度も大事だし」
そう言うとショットシェルは首を振る。
「だからそれを呼吸するように行うんだ」
「ええ!?」
ジーナが驚いているとキビが闘技場に入って来た。
「ショットシェル、代わりな」
「キビさん」
ショットシェルはキビと交代し外にでる。
「今度の戦いはどれだけ相手がいるか分からない。だから一人一人に時間はかけられない。瞬時に相手を無力化する必要があるんだ」
銃をくるくる回してそう話すキビ。
「銃もあるが、こいつはあくまで近づけない相手ようだ。使えるのに回数制限もあるし、だから……」
ゆっくりとジーナに近づくキビ、ジーナは警戒して構える。
危険だと感じたジーナ、間合いに入った所で彼女は突きを放った。
「うわ!」
しかしジーナは手を取られ、そのまま組み伏せられてしまう。
「素手で無力化するが1番効率良いんだよね」
(一瞬で抑えられた!?この組まれ方だと関節外しても逃げられない!)
ジーナを開放するキビ。
「一撃必殺、それぐらいの気持ちでやらないと。殺されるぞ」
「ッ!」
キビの鋭い視線で背筋が伸びるジーナ。
「う~厳しい」
ショットシェルはニヤリと笑ってそう言った。
「はっ!」
「遅い!」
ジーナはフェイントをかけて突きを打ち込もうとするが、逆に反撃を受けて後退する。
「っ!」
「言っておくけど私はオニツノよりも強いぞ」
シャツの袖をまくり構えるキビ。
「上等……ですよ!」
その時、シャーロットはブルズアイに銃を突き付けていた。ブルズアイに無理やりそうさせられている。
「おい!なにしてんだあんた!」
「なにって覚悟を聞いてるんだよ。この前は自分の身を危険に晒す覚悟を問うた。けど今度は全く別。戦場にでた兵士も敵を殺すことに躊躇するやつはいるもんだからね」
ブルズアイはシャーロットをみながらそう言う。
「その辺は詳しいだろ?軍人の先輩」
「殺しだったらおれが!」
シドーがそう言うと、ブルズアイは真剣な顔をする。
「そんな話なのかい?あんたがずっとこの子達の周りについて行って、目の前に現れた相手が人間かどうか確かめて、人間だった場合はあんたが引き金をひくと?そんな余裕があの大戦にはあったのかい?」
「……!」
「少なくとも私が経験した戦場じゃそんな余裕なかったよ。殺した相手が武装した少女兵だったって後で気づくこともあったよ」
ブルズアイは話を続けた。
「相手は大半の兵士をアンドロイドで構成しているだろう。でも改造人間、サイボーグもいるかもしれないし、強化外骨格を装備した人間もいるかもしれない……そんなのが入り乱れる場所に乗り込むんだよ」
彼女はため息をつく。
「私は正直言って君たちを行かせるのは反対だよ。いつもは仕事に関して意見なんて言わないんだけどね。でも……これは別だ、君たちは世界最大の組織と戦争をしに行くんだ。戦争なんてクソゲーは馬鹿な大人にやらせておけば良いのさ」
ここでブルズアイはシドーに目を向けた。
「シドーさんはどう思う?」
「あんたと同じ意見さ」
シドーも当然、子どもが戦いの場に出るのは反対だ。
「ありがとう……。2人の言いたいことは分かるよ、でもそんな戦いにユキチカは向かうんだよね。だったら私も行く、大切な友達を守るために」
シャーロットの言葉を聞いてブルズアイは再びシドーの方をみる。
「だってよ、どうするね先輩」
「はあ、分かった。でもおれは人殺しの方法は教えねぇぞ、戦場で生き残る方法しか教えないからな」
大きなため息をついてシドーがそう言った。
「十分ですよ」
ブルズアイは笑う。
「シャーロットちゃんは弾道計算はできるね、一応こんな感じだけど」
弾道計算の式をシャーロットに見せるブルズアイ。
「うん、できるよ」
「流石だね」
そう言ってブルズアイはシドーの方をみる。
「それじゃあ先輩の授業から始めようか、場所をうつそう」
彼女はそう言ってシャーロットとシドーを射撃訓練場の隣にある部屋に案内する。
二人が案内されたのは障害物が多く配置された部屋だった。
「ここはさっきのシューティングレンジと違って的当て以外も出来る場所。はいこれ、ペイント弾だから当たってもちょっと痛いだけだよ。それとヘルメットとゴーグルね」
ブルズアイは二人に説明し銃と装備を渡す。
「ならまずは戦場で生き抜く方法"その2"、弾に当たるな」
銃を確認しながらシドーが話す。
「ん?"その1"は?」
ブルズアイが質問する。
「戦場に出るなだ」
「なるほど」
シドーの返答に頷くブルズアイ。
「まずは弾を一発も受けず、おれに弾を当ててみろ」
「分かりました!」
「それじゃあよーい、スタート!」
ブルズアイの号令と共にシャーロットは近くの壁に飛び込む。
「そうだ、まずは壁とかを利用する。ただずっといるんじゃダメだぞ、場所がバレてたらそこに手投げ弾でも投げ込まれておしまいだからな」
シドーは相手が障害物の間を移動するタイミングで何発か発砲する。
(今ので3発、弾は弾倉に7発入ってるから)
シャーロットは冷静に銃の弾倉を確認し、相手の残り弾数を把握していた。
「素早く、相手の隙をみて場所を移すんだ」
(今ので7発目!)
シャーロットは相手が全弾撃ちきった事を確信して障害物から身を乗り出す。
「相手が再装填するのを狙うか、良い手だ」
そう話すシドーは障害物に隠れず中央に立っていた。
(隠れてない?!でも!)
シャーロットは7発全てを撃ち込んだ。
「ッ!?」
彼女は再び驚いた。シドーは弾丸全てを最小限の動きで回避し、再装填を済ませたのだ。そして一発彼女の肩に目掛け発砲した。
「ヒューッさすが」
口笛を鳴らすブルズアイ。
「痛ッ……めちゃいたいじゃん、ていうか弾全部避けられた……」
撃たれた肩を押させるシャーロット。
「シャーロット!だいじょうぶ?」
「う、うんありがとう、チザキさん」
すぐに駆け寄って来たチザキを落ち着かせるシャーロット。
「残念、定石過ぎて予測できちまった。さあ、もう一回だ」
撃たれた際にシャーロットが落とした銃を拾い挙げシドーはそう言った。
「あ、1つ言い忘れてた。そのペイント結構落とすの大変だからね」
「だってさ、頑張ってよけようね」
「はい……」
シドーから銃を受け取るシャーロット。
「はあー」
「ふぅ、ようやく顔のペイント取れたよ」
その日の訓練を終えてシャーロットとジーナは風呂に入っていた。
大浴場に二人だけ、囚人たちはこの後に入るらしい。
「ありがとう、はぁー疲れた」
「覚悟はしてたつもりだけど、容赦ないよね」
湯が疲れきった身体に染みわたるのを感じながら二人は話す。
「……」
「どうしたのシャロ?」
黙っていたシャーロットに話しかけるジーナ。
「あのさ、ブルズアイさんが言ってたんだけどね……」
シャーロットは俯く。
「私達、人を殺す事になるかもしれない」
「……うん、怖いよね」
ブルズアイに言われた話をするシャーロット。
「ジーナも怖いんだ、よかった私だけかと思った」
「そりゃそうだよ。でもさ、別に決まったわけじゃないじゃん。いつでもどんな時も選択肢はあるよ、私達ならいい選択ができる」
「そうかな」
「私はそう信じてるよ」
シャーロットは隣に座るジーナに少しだけ体を預けた。ジーナもシャーロットに頭を乗せるように首を傾けた。
「それにもしそうなってもちゃんと面会に来るから!」
「ちょっと!なんで私だけ捕まってるの!薄情ものー!」
「はは!」
二人が笑っていると天井から何かが飛び込んでくる。
「シャーロット!」
チザキ・アキナだった。
「うわ!チザキさん?!」
「天井にずっといたの?!」
「お風呂はいる!いっしょに!」
チザキは二人に抱き着く。
「その前に身体洗わないと」
「だね、手伝うよチザキさん」
ジーナとシャーロットはチザキと一緒に大浴場を満喫し、その日の疲れを癒した。
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