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5th フェーズ 決
No.114 ぶつかる刃
しおりを挟む「これは?」
「もしアーマーが壊された時用の装備だ」
マチェットがシドーの質問に応える。
「だったら銃とかでいいだろ?なんで日本刀」
「あんた元日本兵なんだろ?みんな刀ぐらい使えるだろ」
彼女の話を聞いて笑うシドー。
「それは偏見が過ぎるな。こんな立派なアーマーだ、必要ねえだろうけど。まあお守り代わりにでもしとくか」
「お前それって……まあいいか」
マチェットは何かを言いかけるが止める。
「これも"ふらぐ"ってやつか」
シドーは刀を構える。
「サムライ魂をみせてくれ!」
「だからおれはただの元日本兵なだけだっ!どこまでも時代錯誤な奴め!」
ガンマの剣を避けるシドー。
(こいつの目、戦場に魂を落として来たやつらとは違う。連中の目はもっとがらんどうだ。こいつはただ飢えてる、殺しに)
シドーをみるガンマの目は歪んでいるように見えた。
「随分と楽しそうだな」
「至極当然!兵士は戦いの為に存在する!我々は最前線で敵を!殺す為にいるんじゃないか!」
ガンマの斬撃を刀で弾くシドー。
「うわぁ出た。やっぱりその類か。時折いるんだよなお前みたい危険な奴が、狂っちまったのか生来のものか」
「プッ、ハハハ!狂う?日本兵はジョーク好きなんだな、知らなかったよ。これこそが人の根だよ」
ガンマは高らかに笑い、外骨格のアームで攻撃を仕掛ける。
「口はよく回る癖に話にならねぇな。こんな奴に先生が殺されたとはなっ!」
シドーはそのアームを斬り落とした。
彼の中にある怒りの炎はその熱を増すばかりだ。
「いいぞ日本兵!貴様の殺気は本物だ!先程の女兵士も悪くなかったが貴様は最上だ!」
「褒められても嬉しくねぇよ!」
ガンマは剣で再び斬りかかる。
「さあ存分に殺し合いをしよう!」
「狂人が!存分にはゴメンだし、殺し合いもゴメンだ、一方的にテメェを斬る!」
二人の刃がぶつかる。
「狂人?貴様のその一人だろうが!」
ガンマの獣のような咆哮が響く。
一方その頃キリサメは、リリィそしてヒメヅカと共に通路を進んでいた。
「はあ、はあ、乗り物とか無いのかな。せめて自転車とかさ、脇腹が痛くなってきたよ」
脇腹を抑えるリリィ。
「ほら、急いで」
「そうですよリリィさん」
キリサメとヒメヅカが彼女を押す。
「はあ、手厳しいね。あーそれと面倒なのが来たね。思ったより遅かったね」
そう言ってリリィは前を指差す、その先の曲がり角からヴァーリが現れた。
「君達は何をしているのかね?」
「おや、ヴァーリさんですか。どうもー」
リリィがヴァーリに手を振る。
「妙だな、君らには監視以外に……」
「猛毒を体内に分泌する装置ですよね」
首をかしげるヴァーリにそういうリリィ。
「取り出すのは無理でしたが、毒で相殺することはできましたよ」
ヒメヅカの話を聞き、ヴァーリはキリサメに目を向ける。
「毒で相殺、キリサメか……。だがその対処は一時しのぎだ。その装置は持続的に毒を分泌する、最後まで相殺し続けることができるか?」
彼の言葉に手を叩くリリィ。
「御名答、そんな事が出来るほど私たちの身体は頑丈じゃないですから」
そういってリリィはニヤリと笑って見せる。
「でもあなたの計画を荒らすことぐらいはできますよ。それだけできたら上等ですよね」
「まったく、この世は裏切りばかりだ」
ヴァーリは額に手を当てた。
「リリィさん!」
「任せたよ!」
リリィは振り向き走り出す。
「君達を拾ってやった恩を忘れたのか?」
「ふん、恩着せがましい人は嫌われますよ。私を救ったのはリリィさん、そしてリリィさんを救ったのはイヴ様です」
ヒメヅカとキリサメは構える。
「何を企んでいるか知らんが。全て無駄だ」
ヴァーリの背後から大勢のアンドロイド達が現れる。
「残念だ、審判を受けるよりも前に死を迎えるとは。全くもって理解が出来ない、なぜそこまでして足掻く?」
「あなたの言う進化という話、分かることは分かります。ただ、アナタに付いていくのが無理という話なだけです」
ヒメヅカは銃をヴァーリに向ける。
「キリサメもそうか?」
「私も戦う」
キリサメも武器を構えた。
「全く、どいつもこいつもイヴ、イヴと……。やはり天才は人々に光を見せ惹きつけるのだろうな、過剰な程に」
静かに悪態をつくヴァ―リに対しヒメヅカは冷静な笑みを浮かべる。
「人が避けて行ってしょうがない今のアナタとは全然違いますね」
それを聞いてヴァ―リは不敵に笑う。
「何を分かりきった事を。だが人徳などというものもこの先の世界では必要ない。きわめて平等な世界だ」
ヴァ―リの命令を合図にアンドロイド達が一斉に襲い掛かる。
通路には銃声や刃の音が響く。
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