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5th フェーズ 決
No.118 整備施設で
しおりを挟む「存外しぶといな」
ヴァーリはため息をつく、目の前には傷を負ったヒメヅカとキリサメが立っていた。
「もうわかっただろ?君達の行動は無意味なんだ」
睨みつけてくる彼女たちに語りかけるヴァーリ。
「時間稼ぎをした所で、もう運命は変えられない。全ては起こるべくして起こるのだ」
「まったくベラベラと随分と楽しそうに話すじゃないですか」
ヴァーリの演説に辟易した様子で返すヒメヅカ。
「そうか?調子がいいからかもな」
彼はそういって笑って見せた。
すると警報が鳴り出す。
「警告、警告、整備施設に侵入者あり」
「ふむ、良かったな君達の役目は全うされたぞ。さあ、役目を終えた君たちが生きている場所はここには無い」
ヴァーリは腕を変形させ、二人にトドメを刺そうとした。しかし、その攻撃はなされなかった。
突如、壁が破壊された。瓦礫から逃れるためにヴァーリは攻撃を中断し、後ろに下がったのだ。
「まったく次から次へと。この施設はあとで大規模修繕が必要だな」
「ユキチカにそっくりな外見。あんたがヴァーリだね?」
崩壊した壁から現れたのは、Ms.ストレングスだ。
「ストレングス、元傭兵の情報屋か」
ヴァーリは即座に攻撃を仕掛けようと構える。
「ウチの子たちによくも酷いことしてくれたね!」
彼よりも早くMs.ストレングスは拳を繰り出した。彼女の腕に装備された装置から強力な衝撃波が放たれる。
「っ!」
ヴァーリは衝撃波によって後ろに飛ばされた。
「ほら、2人共下がりな!巻き込まれないように!」
Ms.ストレングスがキリサメとヒメヅカにそう伝える。
「ヒメヅカ」
「なんですか?!あのでっかいおばあさん。ストレングスって情報だと確か小柄の情報屋のはず……」
2人は言われたとおりにその場から走り去る。
2人が逃げる中、ヴァーリはMs.ストレングスの装備を観察していた。
(あの腕の装置から衝撃波を飛ばしているのか……これほどの破壊力、常人ならまずその反動に耐えられないはず)
「貴様も身体を改造しているのか?有機体のパーツでも使っているのか?スキャンには腕の装置以外にそれらしい痕跡がない」
ヴァーリに質問され鼻で笑うMs.ストレングス。
「改造?ヒョロヒョロな坊やらしい意見だ。そうさね、毎日サンドバック代わりに鉄柱を殴って肉体を改造してるよ」
自身の鍛え上げられた筋肉を披露するようにポーズし、拳にキスするMs.ストレングス。
「その高価な身体、叩き潰してやるよ!」
Ms.ストレングスが襲いかかる。
(いかんな、これを喰らい続ける訳には)
ヴァーリは即座に退避を始めた。
「こら逃げんな!」
「当然だ、君に対処する以上に重要な事が沢山あるのでね」
これより少し時間は戻り、ウルルとリリィは通路を進んでいた。
「イヴ様をこの島に迎え入れるってどうやってするんですか?」
「あの緒方の肉体そのものは失われたが。意識はまだデジタルの世界にある。私達はアンドロイドを特定のネットワークに繋げればいい」
リリィは説明した。
「その設定をするためにここの整備施設に行く必要があるのですね」
「そういう事。ネットワークの指定先は私が覚えているから」
二人は目的地に到着するが、そこで足が止まった。
「さあ、ここだって……うわぁ」
「重要拠点ですから、警備はいますよね」
大勢の敵が待ち構えていた。
「やるしかないか」
リリィが銃の残弾を確認し構える。
「考えがあります」
「ん?どんな考え?」
ウルルはリリィの背中に手を当てた。
「こうします」
「あ!ちょっと!」
リリィをそっと押し出すウルル。
「やぁ、どうもってうわー!」
アンドロイドの前に歩いて出たリリィ、とりあえず手を振って挨拶したものの普通に銃口を向けられる。
走って相手の銃撃をかいくぐり、撃ち返しながら物陰に逃げこむ。
「ビリっと行きます!」
ウルルは通電性の良いネットを放ちそこに電気を流した。
「流石、アレだけのアンドロイドを対処するとは」
「思いっきり私を囮にしたね!」
「信頼した上での行動です」
「ホントかな」
倒れたアンドロイド達の様子を確認しながらウルルがそう言い返す。
「さあ、どうしたら良いですか?」
「ウルルちゃんは起動してないアンドロイドを見つけて、私はネットワークに接続する準備する」
リリィに言われた通りに行動するウルル。
ウルルはアンドロイドを用意し、リリィが指示する通りにセッティングする。
「これで、どうでしょうか?」
リリィが設定を終えると、ウルルが用意したアンドロイドが動き始めた。
「……うーん!はぁ!」
アンドロイドは目を開き伸びをした。
「久しぶり、2人とも。ちゃんと協力してるようでなにより!」
セッティングされた場所から軽やかに飛び出すアンドロイド。
「貴女様は!」
「どうもリリィ」
アンドロイドはリリィにハグをした。
「ああ!なんて……喜びがあふれる!」
リリィが歓喜のあまり涙を流す。
「ウルルちゃんもおつかれさま」
「イヴ様……!またお会いできてうれしいです」
ウルルにも挨拶をする、間違いない、そこにいるのはイヴだった。
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